ダイショーから“インフラ調味料”が誕生 「味・塩こしょう」に続く柱に 開発のヒントは「ロウ」
ダイショーは今春、オイルベースの調味料「つけ旨オイル」を発売した。肉や魚に漬け込んで下味をつけたり、他の調味料と組み合わせて味付けをアレンジしたりと汎用性が高いことが特徴だ。国内の調味料市場が成熟する中、同社はつけ旨オイルを“インフラ調味料”に位置づけ、新たな需要の創出を図る。
◆下味冷凍や作り置きにも対応
2026年3月に発売したつけ旨オイルは、調理時に油をひく手間を省き、味付けまでできる調味料だ。料理の基本となる「醤油」と「塩」の2つの味で、肉や魚料理からサラダ、チャーハンまで具材次第でさまざまなアレンジが楽しめる設計とした。オイルが素材をコートするため、解凍や調理時のドリップを防ぎ、肉質を柔らかく保つ効果もある。ワンタッチキャップで使いやすく、開封後も常温保存できる。

◆30代の共働き世帯へヒアリング
下味冷凍から料理の味付けまで使えるこの万能調味料は、20代~40代の若手・中堅社員を中心とする社内のブランディングプロジェクトから生まれた。松本俊一社長の「次代のダイショーを担うメンバーで新たなチャレンジを」という思いのもと商品開発、営業、生産、管理など社内の異なる部署に所属するメンバーが集い、味・塩こしょうや鍋スープに続く基幹商品をめざして開発に着手。メインターゲットの30代共働き世帯へ複数回にわたりヒアリングを実施すると、限られた時間の中で、家族の好みや健康に配慮しながらの献立づくりに負担を感じる人が多いことが分かった。そこで、1本あれば時短調理につながる“インフラ調味料”の構想が浮かんだという。

◆開発のヒントは “ロウ”
そのアイディアを具現化するため、業務用の主力商品として展開しているオイルソースの技術を応用することにした。オイルソースとつけ旨オイルの開発を手がけた根岸宏樹取締役商品本部長兼調達部担当は「最大の壁は、油の中の成分の分散と粘性の確保だった」と明かす。
「水と油」のたとえにもあるように、液体の粘度を高める水溶性の増粘剤と油を混ぜ合わせて一体化させるのは難しい。増粘剤と油が二層に分離してしまうからだ。「作りたいものがあるのに、そこから前に進めない。これからどうするか、と行き詰っていた時、ロウソクのロウを見てひらめいた」と根岸氏。熱で溶け、冷えると固まる性質を調味料にも応用できないか――。
こうした機能を持つ食用原料を全国から探し出し、ようやく1社、理想的な原料を扱うメーカーに辿り着いた。この原料の導入により、油の中に塩や香辛料を均一に浮遊させることに成功し、念願だったオイルソースを製品化することができた。従来の調味料に比べて素材の経時変化が少なく、ロスの削減にもつながることから、2013年の発売以来、スーパーの中食や味付け肉用途を中心に引き合いが増え、現在では業務用のオイルソースとしてシェアを大きく伸ばしている。

◆業務用のノウハウを家庭用に生かす
しかしながら業務用で培ったこの技術を家庭用製品のつけ旨オイルへ応用するハードルは高かった。一般的なドレッシングや調味料とは異なり、容器に詰める際、常に撹拌(かくはん)し続け、最初から最後まで油・塩・香辛料を均一の状態で充填する必要があるためだ。「既存の製造設備ではどうにもならず、つけ旨オイル専用の機械を導入した。当社のノウハウを注ぎ込み、約2年かけてなんとか完成させることができた」(根岸氏)。結果として、これまでの苦労は他社の追随を許さない参入障壁にもなっている。

今後の展開について、根岸氏は「私たちの目標はつけ旨オイルを第二の『味・塩こしょう』に育てること。若い世代に日常的にダイショーの調味料を使っていただき、彼らが親世代になったときにも選ばれ続ける、ライフサイクルに組み込まれたブランドにしていきたい」と話す。つけ旨オイルの初年度売上目標は1品あたり1億円。将来的にはフレーバーの追加を検討しており、5年後にシリーズ計10億円到達をめざす考えだ。







