ネスレ日本、土浦発の貨物鉄道新ルート始動 物流危機に備え東北向けボトルコーヒー輸送を安定化

定期貨物鉄道輸送新ルートの運用を開始、茨城県・土浦駅を起点に東北方面へ
定期貨物鉄道輸送新ルートの運用を開始、茨城県・土浦駅を起点に東北方面へ

提供:ネスレ日本株式会社

ネスレ日本は、日本貨物鉄道ならびにグループ会社の全国通運(あわせて「JR貨物グループ」)と連携し、土浦駅(茨城県土浦市)を起点に東北方面へ「ネスカフェ ボトルコーヒー」を運ぶ定期貨物鉄道輸送の新ルートを4月20日から開始した。ネスレ日本の霞ヶ浦工場(茨城県稲敷市)で製造した製品を土浦駅までトラックで運び、そこから貨物鉄道に載せて東北へ送る。輸送頻度は週5回、1日当たりの輸送量は最大40トン。繁忙期の4~8月は東青森駅まで約680kmの長距離帯、通常期の9~3月は仙台貨物ターミナル駅(宮城県仙台市)まで約330kmの中距離帯を貨物鉄道で結ぶ。

今回の新ルートは、ネスレ日本が2023年9月にJR貨物グループと締結した「持続可能な物流構築へのパートナーシップ」に基づく3か年計画の中で進められた。2024年に島田工場から関西向けの中距離帯(500km以下)の貨物輸送を開始し、2025年にはその便数を増やした。そして今回、霞ヶ浦工場から東北向けのルートを加え、取り組みを広げている。ネスレ日本は公式サイトでも、物流分野でのモーダルシフトを2009年から推進してきたとしており、今回の新ルートもそうした継続的な物流施策の延長線上にある。

<ドライバー不足に備え、東北向け輸送を強化>

(左から)日本貨物鉄道の福岡氏、ネスレ日本の伊澤部長、坂口プロジェクトマネジャー
(左から)日本貨物鉄道の福岡氏、ネスレ日本の伊澤部長、坂口プロジェクトマネジャー

4月21日に土浦駅で開かれた説明会では、ネスレ日本サプライ・チェーン・マネジメント本部物流部の伊澤雄太部長が、同社の物流の考え方について、環境への対応も大切だが、まず製品を確実に届けるための物流体制の強化が重要だという考えを示した。背景には、ドライバー不足への対応、CO2削減などの環境対応、長距離輸送の安定化などがあるが、このような取り組みを進めるうえで、ネスレ日本が最も大きな要因に挙げるのはドライバー不足だ。従来のトラック輸送だけでは、今後は安定供給が難しくなるとの危機感が根底にある。

その課題が色濃く表れていたのが、東北、とりわけ青森方面だった。青森向けはもともとトラック確保が難しい地域で、ネスレ日本は今回、繁忙期には東青森駅まで貨物鉄道輸送で持ち込み、通常期は仙台を拠点に青森方面へ配送する体制を取る。ボトルコーヒーは夏場と冬場で販売量に大きな差があり、同部のプロジェクトマネジャーの坂口治夫氏によると、繁忙期には1日5~6台分のトラック輸送が必要になる一方、冬場は1~2台程度にとどまるという。青森側には繁忙期対応の在庫拠点も確保しており、貨物鉄道輸送に加えてトラック輸送も併用することで、災害や輸送障害が発生した際も供給を維持しやすい体制を整える。全面的な鉄道移行ではなく、鉄道とトラックを組み合わせて安定供給を図る設計が特徴だ。

<年間約7500台分のトラック輸送削減を見込む>

今回の新ルートを含む一連の取り組みにより、ネスレ日本は既存の取り組みとあわせ、年間約7500台分のトラック輸送削減と、年間約1300トンのCO2排出量削減を見込む。環境負荷低減の効果は大きいが、同社は安定供給に向けた物流体制強化の一環として位置付けている。モーダルシフトは環境対応の象徴として語られやすいが、ネスレ日本の事例では、物流危機のなかで製品を届け切るための現実的な手段としての意味合いが強い。貨物鉄道輸送はトラック輸送に比べCO2排出量が少なく、安定供給と環境負荷低減を両立しやすい点も後押ししている。

土浦駅を起点に東北方面へ「ネスカフェ ボトルコーヒー」を運ぶ定期貨物鉄道輸送の新ルートを開始
土浦駅を起点に東北方面へ「ネスカフェ ボトルコーヒー」を運ぶ定期貨物鉄道輸送の新ルートを開始

輸送対象となる「ネスカフェ ボトルコーヒー」は、501ml以上のペットボトルコーヒーカテゴリーで12年連続売上No.1の主力ブランドで、2026年は年間約3億本規模の販売を見込む。ネスレ日本では、ドライバー不足への対応に加え、こうした需要拡大に対応する観点からも物流体制の強化を進めている。説明会では、ボトルコーヒーを対象とした理由について、出荷量が多い重量商材で輸送効率改善の効果が大きいことに加え、12フィートコンテナに積みやすく、運用面でも扱いやすいことを挙げた。主力製品の需要増に対応するうえで、物流の安定化は販売戦略とも直結している。

ネスレ日本の物流施策は、外部からの評価にもつながっている。2024年度には物流関連で5件の表彰を受け、物流環境大賞「低炭素物流推進賞」や省エネ大賞輸送部門「経済産業大臣賞」などを受賞した。物流課題への対応と環境負荷低減を両立する取り組みとして評価されている。

<中距離帯の貨物鉄道活用にも広がり>

今回の取り組みは、ネスレ日本1社の話にとどまらない広がりも見せる。日本貨物鉄道 鉄道ロジスティクス本部営業部の福岡大輔氏は、中距離帯はこれまで貨物鉄道が十分に力を発揮しにくいと見られていたが、ネスレ日本の取り組みがきっかけとなり、中距離帯の貨物鉄道輸送について企業からの問い合わせが増えていると説明した。茨城~東北方面の輸送では、貨物鉄道コンテナだけでなく、グループ会社である全国通運利用運送事業者の車両も含めて安定的に輸送力を確保することに力を入れたという。長距離だけでなく中距離帯でも貨物鉄道活用が進めば、食品業界全体の物流の選択肢は広がることになる。

ボトルコーヒーの東北方面への安定供給に向け定期貨物鉄道を活用
ボトルコーヒーの東北方面への安定供給に向け定期貨物鉄道を活用

ネスレ日本は、自社製品を確実に、継続的に届けるため、輸送手段を柔軟に組み合わせながら、物流体制の強化を進めていく考えだ。今回の土浦発新ルートは、物流危機が深まるなかで、食品メーカーが安定供給と環境対応の両立を図る取り組みとして位置付けられる。

【ネスレ日本と伊藤園、共同輸送・ラウンド輸送を開始 物流課題に企業間連携で対応】

共同輸送を開始した「さらさらとける お~いお茶 抹茶入り緑茶」と「ネスカフェ ボトルコーヒー」
共同輸送を開始した「さらさらとける お~いお茶 抹茶入り緑茶」と「ネスカフェ ボトルコーヒー」

ネスレ日本は、貨物鉄道輸送の拡大に加え、企業間連携による物流効率化にも取り組んでいる。ネスレ日本と伊藤園は4月から、静岡~千葉間での共同輸送と、静岡~関西間でのラウンド輸送を開始した。物流人材の不足や輸送効率化への対応が求められるなか、両社の荷物の特性を生かし、トラックの積載効率向上と輸送台数の削減につなげる。

静岡~千葉における共同輸送
静岡~千葉における共同輸送

静岡~千葉間の共同輸送では、ネスレ日本の飲料製品と伊藤園のリーフ製品を同じトラックに積み合わせる。ネスレ日本の飲料製品は重量があり、トラックの積載重量の制約から荷台の上部に空きスペースが生じやすい。一方、伊藤園のリーフ製品は比較的軽量で、上部スペースに積載しやすい特徴がある。両社はこの違いを生かし、空きスペースを有効活用することで、静岡~千葉間の共同輸送ではトラック台数を従来比23%削減できる見込みだ。

静岡~関西におけるラウンド輸送
静岡~関西におけるラウンド輸送

静岡~関西間では、ラウンド輸送を実施する。往路でネスレ日本の飲料製品を運び、復路で伊藤園の茶製品に使用する原料茶葉を輸送する。従来は片道の輸送後に空車回送が発生する場合があったが、復路にも貨物を積むことで車両を効率的に活用する。静岡~関西間のラウンド輸送では、トラック台数を従来比50%削減できる見込みとしている。

両社が物流面で連携するのは今回が初めてとなる。伊藤園とネスレ日本は、それぞれ主力製品を全国に供給する食品・飲料メーカーであり、安定した物流体制の確保は事業継続のうえで重要な課題となっている。今回の取り組みは、競争領域とは異なる物流分野で企業同士が協力し、輸送効率化と環境負荷低減を図るものだ。

両社の取り組みは、荷物の重さや輸送区間の違いを生かし、空車や積載余地を減らすものだ。物流人材の不足が続くなか、企業の枠を越えた輸送効率化は、食品・飲料メーカーにとって重要な選択肢になりつつある。