「生茶」が大刷新、コモディティ化が進む緑茶飲料でパッケージを改革、目指したのは生活になじむデザイン/キリンビバレッジ

キリンビバレッジ「生茶」ブランド
キリンビバレッジ「生茶」ブランド

キリンビバレッジは4月9日、「生茶」ブランドを大きく刷新する。容器・パッケージ・中味を全てリニューアルし、ペットボトル緑茶の新しい価値を提案することで差別化を図る。緑茶飲料は、飲料メーカー各社が展開しているカテゴリーの一つで、コモディティ化(付加価値の低い一般化した商品)が進んでいる。今回の刷新で緑茶飲料市場を活性化するねらいだ。

最大の特長はパッケージにある。従来の深い緑のラベルから、白を基調としたラベルへ変更することにより、他人と違う物を持っている“自己表現の媒体”としての価値を提供する。おいしさは当たり前のものとして、手に取って持ち歩きたくなる現代的で上品なパッケージに大きく変えた。

中味は、凍結・凝縮によってあまみを増幅させる「凍結あまみ製法」を新たに導入したほか、小容量ペットボトル商品では、かぶせ茶を細かく粉砕した微粉砕茶葉を現行品の約3倍使用し、深い味わいに仕上げている。 

今回の新「生茶」を開発したキリンビバレッジの田代美帆ブランドマネージャーに、開発背景を聞いた。

キリンビバレッジ 田代美帆ブランドマネージャー
キリンビバレッジ 田代美帆ブランドマネージャー

==新「生茶」の一番の変更点は。

パッケージです。生活に馴染む、お客様が生活に取り入れたくなるような緑茶を目指しました。飲んでいて満たされる。持っていても満たされる。そんな緑茶になりたいと思いました。緑茶飲料の売り場で、“どれでもいいや”ではなく、“生茶がほしい”と思っていただけるようなリニューアルをしました。

==開発の意図を教えてください。

緑茶飲料のカテゴリーは、かなり厳しい状況が続いています。売上金額の推移や新しいお客様の流入という意味では、下がってきている状況です。清涼飲料の中でも非常に大きなカテゴリーであすので、緑茶飲料がコモディティ化し、魅力が下がってしまうと、清涼飲料全体の魅力にも影響が出てくると思っています。

これは、流通企業の展開するプライベートブランド(PB)商品も含めて、商品がコモディティ化していることで、お客様の緑茶カテゴリーへの期待が下がっているというのが現状です。なぜ緑茶カテゴリーがコモディティ化したかというと、おそらくおいしさという切り口で、各社がずっと差別化を進めてきたため、おいしいのが当たり前の状況になってきたことが挙げられます。そのため、おいしさだけではない、新しい価値の提案が必要だと考えています。

現在、清涼飲料にかかわらず、他の消費財においても、どの商品も機能が良くなっています。それにより機能がそれほど変わらなくなってくるとコモディティ化につながります。機能だけの差別化に着目してしまうと、どうしてもお客様にとって大きなニュースにならず、提案も機能の細分化になってしまいます。

では、どのようにしていくかを緑茶飲料で考えると、今後はモノの差別化になってくると思います。世の中がどのように変わってきているのかをみると、消費財でもデザインとして、モノとしての価値が非常に重要になってきています。なぜかというと、個性や自分らしさが重視される時代になってきているからです。たとえば、文房具やパソコンのマウスでも、あらゆるものが自己表現の手段になります。

そう考えた時に、実は緑茶はそのようなモノとしての価値を高めることに取り組めていなかったのではないかと思います。ペットボトルの緑茶飲料に関しては、おいしさは大切ですが、それだけではなくモノとしての価値をしっかり作っていく必要があると考えました。

ペットボトルの緑茶飲料は、飲まれ方として、多くのお客様が朝買って一日中持ち歩く方が多いです。そのため、自分の生活に馴染むパッケージデザインと味が、意外にすごく大事かもしれないと思います。

私はこれまでずっとビールの開発を担当していましたが、ビールは夜に一人で飲まれるケースが多いです。しかし、緑茶飲料は一日中持って歩くものなのでニーズが異なります。持ち歩いたり、デスクに置きたくなるようなものは何だろうということが、今回のパッケージデザインを考えるスタートになりました。

これまでの概念を一度外して、モノとしての価値、生活に馴染むような緑茶というものに着目し、お客様がこれだったら持ち歩きたいと思うような、お客様にとっての“ソウルドリンク”になる緑茶飲料の開発を目指しました。

日本に根差した緑茶飲料が時代に合わせてアップデートして、飲み継がれていくことはとても大切だと考えています。いまの時代の緑茶を提案するとしたら、こういうことなのではないかと信じ、今回の「生茶」を開発しました。

==パッケージがこれまでの緑茶飲料と全く異なるものになりました

スタートラインでは、「緑茶」という認識を一回外して、生活に馴染むパッケージはどういうものかを考えました。ロゴも主張が激しいと生活に馴染まないので大きさを変え、余白も大きくしています。ただ、お茶であることを伝えるために、緑の雫のマークを入れてわかるようにしました。そのバランスに関してはかなり話し合いを行いました。どういった佇まいがお客様に受け入れられるか、選びたくなるかを考え、ここにたどり着くまでに百種類以上のデザインを検討してきました。ただ、これだというものを早い段階から見つけることができました。

==生茶は、環境配慮した容器を採用し、ここ数年は環境のフラッグシップ商品として展開されてきました。

生活者に馴染むお茶として、環境に配慮していることは当たり前の責任だと思っています。今回も環境に配慮したパッケージを採用していますが、そこをあまり前面に打ち出していません。お客様から“次も絶対買いたい”と思ってもらえる商品を作ることが持続的な成長につながると考えています。

生茶というブランドを、もう一回再活性したい。お客様は生茶が欲しいと思ってくださることをやっぱり追求した結果がここにあると思っています。そういう商品になっていけるといいと思います。

==中味の変更点についても教えてもらえますか。

パッケージも大切ですが、やはり中味がおいしいというのは大前提ですので、おいしさの向上にも取り組んでいます。今回採り入れた新しい技術は、「凍結あまみ製法」です。凍結・凝縮によって新茶のようなあまみを増幅させています。苦渋みを抑えて、あまみが際立つお茶になりました。また、かぶせ茶マイクロ粉砕により、まるごと粉砕した茶葉を現行品の約3倍(※)使用しています。

※対象商品…280mlPET/300mlPET/525mlPET/555mlPET/600mlPET

==2023年9月に発売した「生茶 リッチ」は発売1か月で年間販売目標を達成するなど好調でした。今後のブランドの方向性は。

コモディティ化している緑茶飲料市場においては、新しい提案をしなければどんどんニュースがなくなっていきます。昨秋は新商品の「生茶リッチ」を提案したところ、すごく手応えを感じました。緑茶飲料市場の活性化にも寄与したと考えています。「生茶」は、変わり続けるブランドになり、緑茶飲料のカテゴリーに向けて提案を続けるブランドになれたらと思います。「生茶」が持つモノ作りの技術や洗練されたイメージなどを通じ、緑茶飲料市場の活性化に貢献していきたいです。

私たち「生茶」チームは、チームスローガンを、ずっと「生茶か生茶以外か」としていました。そのくらいのことをしないと、コモディティ化が進むカテゴリーは食い止められません。そこで「生茶」は、売り場で二度見しちゃうくらいの取り組みをしたいと考えました。それが結果的にお客様にとって大きなニュースになり、喜んでもらえたらと考えています。

==最後に。

実は私、お茶屋の娘でして、高校生まで家業を継ぐつもりでした。結局はビール会社に入社しましたが、チャンスがあれば、お茶を担当したいと思っていました。それは、日本で茶葉の生産量や消費量は減ってきていますが、緑茶の飲料はこれからも必要とされるだろうと思ったためです。

緑茶を飲むとほっとするという人は多いと思います。ほっと一息できるというのは、他のカテゴリーにはない強みです。無糖でありながら、ほっと一息できるというのは、やはり日本人にとってなくてはならない飲料なのだろうと思います。

緑茶の飲まれ方は、いまはペットボトルの容器に変わってきましたが、日本にとって大切な飲料の文化です。時代のニーズに合わせてアップデートしながら、新しい価値をこれからも「生茶」ブランドから提案していきます。

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創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
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ブランケット版 8~16ページ
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