【書評】「コーヒーの授業」 基礎から未来までを一冊に凝縮、家庭での一杯を格上げする方法が随所に、UCCコーヒーアカデミー監修

「コーヒーの授業 ~豆選び、淹れ方、飲み方から健康にいい話まで~」
「コーヒーの授業 ~豆選び、淹れ方、飲み方から健康にいい話まで~」

イーストプレスは6月24日、UCCコーヒーアカデミー監修の入門書『コーヒーの授業』を刊行した。同書は、初級・中級・上級のクイズから始まるユニークな構成で、自分の知識を試しながら読み進められる入門書だ。

冒頭では「コーヒーをよりよく楽しむために必要な知識や抽出方法、健康や環境まで、あらゆる角度から最新事情を紹介します」とうたっており、その言葉どおり基礎から未来までを体系的に学べる内容となっている。

本書は、どの章からでも気になるページからでも読める自由度の高さが魅力。第2章ではハンドドリップの基本手順を写真付きで丁寧に解説し、蒸らし時間や湯の注ぎ方の回数、抽出後の豆の状態など、家庭で再現できる細やかなポイントを紹介する。サイフォンやフレンチプレスなど、器具別の淹れ方も網羅しており、名前だけ知っていた道具の使い方が一度で理解できる。

保存方法の解説も実践的だ。おいしさを損なう大敵は「酸素・水分・高温・紫外線」の4つとし、使用頻度の高い豆は袋のままキャニスターに入れて冷蔵室へ、あまり使わない豆は一杯分ずつ小分けにしてチャック付きポリ袋で冷凍保存するのがおすすめと説く。油が浮いて光って見える豆は焙煎度合いによるもので、必ずしも鮮度とは関係ないという指摘も興味深い。

第4章には、カフェの定番からバリスタ考案のオリジナルまで約40種のアレンジメニューを収録。アップルパイ風りんごバターシナモンコーヒーやアイリッシュコーヒーなど、家庭でも挑戦できるレシピが並ぶ。コーヒーの濃度に合わせたスイーツのペアリング提案もユニークで、アメリカンやストレートにはフルーツケーキやゼリー、エスプレッソやカフェモカにはようかん、チョコレート、カヌレなどを薦めている。

特筆すべきは第6章。カフェインの性質や毎日のコーヒー習慣で期待できる健康効果を解説し、将来コーヒーが飲めなくなる可能性について、気候変動や小規模農家の課題を背景に提示。さらに、サステナブルな調達やカーボンニュートラルを目指す企業の取り組みを紹介し、コーヒーを未来へつなぐための視点を提供する。

長年コーヒーを取材してきた記者の立場から見ても、保存・抽出・アレンジ・健康・環境までを一冊で体系的に整理した本は珍しい。初心者や家庭でコーヒーを楽しむ人はもちろん、知識を整理したい業界関係者にも有益で、「コーヒーを知るための決定版」といえる。

コーヒーは現在、原料価格の高騰が進み、店頭価格が上昇している。おいしく作って、背景を思い浮かべることで、一杯の価値を高めることが今こそ求められている。本書は、一杯をよりおいしく、そして意味あるものに変えてくれるだろう。

家庭の一杯を格上げし、コーヒーを深く知りたい人に強く薦めたい。

【書籍情報】
タイトル=コーヒーの授業 ~豆選び、淹れ方、飲み方から健康にいい話まで~
監修=UCCコーヒーアカデミー
出版社=イースト・プレス
発売日=2025年6月24日
ページ数=208ページ
価格=1,848円(税込)
販売場所=全国の書店・Amazon

媒体情報

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食品・食料に関する事件、事故が発生するたびに、消費者の食品及び食品業界に対する安心・安全への関心が高っています。また、日本の人口減少が現実のものとなる一方、食品企業や食料制度のグローバル化は急ピッチで進んでいます。さらに環境問題は食料の生産、流通、加工、消費に密接に関連していくことでしょう。食品産業新聞ではこうした日々変化する食品業界の動きや、業界が直面する問題をタイムリーに取り上げ、詳細に報道するとともに、解説、提言を行っております。

創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
体裁:
ブランケット版 8~16ページ
主な読者:
食品メーカー、食品卸、食品量販店(スーパー、コンビニエンスストアなど)、商社、外食、行政機関など
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