日常に溶け込む紅茶を――1952年創業の「ムジカティー」品質主義の買い付けで 3代にわたり紅茶文化を発信

1952年に大阪市北区堂島で創業したムジカティーは、紅茶の販売、卸、喫茶運営などを行っている。52年の創業当時は音楽喫茶だった。1969年、2代目となる堀江敏樹さん(愛称・Tさん)が紅茶専門店としてリニューアルオープンした。2013年に居住地である兵庫県芦屋市に移転オープン、現在に至る。
3代目の堀江勇真代表取締役は、2代目であるTさんの意思を継ぎ、紅茶のおいしさを広めるため尽力している。芦屋市内には直売所のほか、2019年に喫茶「Tea Saloon MUSICA」を、23年には神戸阪急に「MUSICA TEA神戸阪急店」を開業した。

商社を通して紅茶の輸入を開始し76年、セイロン紅茶であるウバ、ヌワラエリア紅茶の販売を始めた。日本の喫茶文化をけん引しながら、スリランカ、インドを中心に、その後ケニア、バングラデシュの紅茶なども取り扱いを開始し、現在も取り扱い産地をさらに拡大している。創業の地で作った「堂島ブレックファスト」のほか、芦屋市へ思いを込めた「芦屋プラウド」、神戸阪急店の開業を記念した「神戸ブレンド」などオリジナルブレンドの紅茶を販売している。「一番人気の『堂島ブレックファスト』は、2代目である父が『日常に溶け込み、毎日ガブガブ飲めて、高品質かつ手に取りやすい価格のお茶を』という思いで開発したものだ」と話す。

昨年はインドネシアに視察に行き仕入れを行うなど、新たな産地へ今後も出向く。「今年はルワンダに行きおいしい紅茶を見つけたが、今年の分はすでに仕入れができなかったため、来年に持ち越しになってしまった。昨年はインドネシアのほか、ウバの出来が良く、とてもおいしいお茶を販売できた。その一方で今年は昨年よりもいいものができていないため、販売を見送った。お茶は農作物であるため出来がいい年、悪い年がある。お客さまの期待と信頼は裏切れない」と、話す言葉の端々から、セレクトと買い付けにおけるお客との信頼関係の強さが垣間見える。
茶葉入りで淹れるおいしさ、ポットでの味の変化など紅茶の楽しみ方を広く知ってもらうため、母校である調理師学校で講師をするほか、飲食店に茶葉を卸す際には淹れ方のレクチャーも行う。「家庭で飲む場合は湯の温度も気にせず、好きなように淹れたらいい。もっと手軽に日常的に紅茶を楽しんでもらいたい」と話す姿に、どんな淹れ方でもおいしく飲める「堂島ブレックファスト」を開発したTさんの面影がよぎった。
