「外でもきれいな分別」実現へ“現場”で可視化、ペットボトルの資源循環に向けた清涼飲料業界の動き

渋谷で“崩壊リサイクルボックス”体験、羽田で循環のジオラマ展示、人気ユニットの動画配信も
ペットボトルを再び新しいペットボトルに戻す“水平リサイクル(ボトルtoボトル)”の定着に向け、リサイクルの日(10月20日)を前に可視化・体験・周知の三方向から行動を後押しする動きが広がっている。
日本のペットボトル回収率は92.5%、リサイクル率は85.0%で、世界でも非常に高水準となっている。さらに、ボトルtoボトル比率も前年を4.6ポイント上回る33.7%まで伸長している(数値はいずれも2023年度、PETボトルリサイクル推進協議会調べ)。清涼飲料業界はペットボトルの「外でもきれいな分別」を浸透させることで、水平リサイクル率のさらなる引き上げを目指している。
渋谷:日本コカ・コーラ「崩壊リサイクルボックスをなくそう展」を開催

日本コカ・コーラは10月17~19日、東京・渋谷の道玄坂広場で「崩壊リサイクルボックスをなくそう展」を開催している。飲み残しや異物混入で回収機能を失った状態を“崩壊”と名付け、実物展示と映像により、ひとつのポイ捨てが“崩壊リサイクルボックス”につながることを紹介する内容だ。

街歩きの実態を基に、現象を「要塞型/口開き型/触角型/お供え型/隠れ崩壊」の5タイプに命名し、“なぜダメか”を来場者が直感的に理解できるようにした。

日本コカ・コーラ サステナビリティ推進部の田口美穂さんは次のように話す。「ボトルtoボトルを進める柱は二つ。リサイクルしやすい容器設計と、自治体・小売・消費者と連携した“確実な回収”です。全国に約80万台の自販機と同規模のリサイクルボックスを持つ立場として、誤投入の実態を伝え、ともに解決していく責任があると考えています」。

会場の展示とアンケートは日本語・英語を併記。来場目標は1日600人以上としている。
羽田空港:全清飲「羽田deリサイクル」“外での分別”を現場で学ぶ

全国清涼飲料連合会(全清飲)は10月17~19日、羽田空港第2ターミナル5階で「羽田deリサイクル ペットボトルは、ボトルからボトルへ~(Close the loop!〈循環させよう〉)」を実施している。「ボトルtoボトル」の取り組みに関するポスターや、ペットボトル資源循環の流れを紹介するジオラマのほか、クイズ・飲料配布(数量限定)で外出先での“きれいな分別”を促すねらい。

10月17日の説明会で全清飲の森本真治専務理事は次のように述べた。「ペットボトルのリサイクルには、自宅以外の外出先での分別排出が重要です。多くの人が集まる羽田空港ではペットボトルだけの回収を行い、“ボトルtoボトル”を進めています。このような先進的な取り組みがさらに飛躍していくことを期待しています」。
データで見る“外で崩れる”分別の構造
また、全清飲は10月15日に「清涼飲料水容器のリサイクルに関する消費者意識調査2025」を発表した。同調査は、全国の15歳~69歳の男女のうち、外出先でペットボトル飲料を使用する人を対象に行い、1037名の有効サンプルを集計したもの。調査結果は、家ではできているペットボトルの分別が、外で崩れていることを示している。
調査によると、飲み終わったペットボトルの「キャップ・ラベル」をどちらとも外している人は、自宅では81.4%いるものの、外出先では、屋内(オフィスや学校)で39.4%、屋外(街中や公園)で30.3%にとどまった。
そして、自販機横のボックスはリサイクルボックスであることを「知っている」人は71.8%、「知らなかった」人は28.2%。また、リサイクルボックスに清涼飲料水の空容器以外を「入れたことがある」人は21.1%で、その理由として「ほかに入れる場所がなかった」と答えた人が53.4%にものぼった。
テロ対策などにより、2000年頃からごみ箱が減少している状況もリサイクルボックスへの“誤投入”が起きやすい要因と考えられる。
さらに、リサイクルボックスに中身を飲み残したまま飲料容器を「入れたことがある」人は11.1%だった。飲み残しが入っているペットボトルは、リサイクルにとって「異物」だと「知っていた」人が62.6%、リサイクルに回らないことやリサイクル施設を傷める可能性があることを「知っていた」人は55.3%となった。
サントリー:動画+渋谷の街頭広告掲出で「外でもはずす・はがす」を広く呼びかけ

サントリーは、10月20日の「リサイクルの日」に向けて、稲垣吾郎さん・草彅剛さん・香取慎吾さんを起用した動画「はずして、はがして、外でも戻してくれたあなたに、ありがとう」を公開している。「#素晴らしい過去になろう」シリーズの第3弾として制作され、街中でペットボトルの分別に協力する人々に感謝を伝える内容だ。

周知を広げるため、渋谷センター街での大型広告(10月16~29日)に加え、渋谷エリアで特別ラッピングカー(10月16日~11月15日)を展開している。サントリーは今年9月に100%リサイクルペットボトルが累計200億本に到達したことを公表。2030年までにすべての飲料用ペットボトルをリサイクル素材、または植物由来素材などに切り替える方針を打ち出している。ペットボトルから再び新しいペットボトルを作る水平リサイクルの推進に向け、“外でもきれいな分別”の定着を目指して活動している。
“外でも分別”実現へ情報発信と連携を強化
“家ではできるのに、外で崩れる”。このギャップを埋めるため、清涼飲料業界は、「飲み切る」「キャップやラベルを外す」「飲料容器リサイクルボックスなどへ戻す」の大切さを生活者に知らせるとともに、リサイクルボックスの適切な配置や投入口形状の工夫などに取り組んでいる。ごみ箱との棲み分けを、自治体や施設と連携して進めていくことも今後のカギになりそうだ。
渋谷での“崩壊した”リサイクルボックスの可視化、羽田空港での“ボトルtoボトル”の体験、人気ユニットによる動画配信など、ペットボトルのリサイクルに関する情報発信が強化された今年の「リサイクルの日」に向けた取り組み。“外でもきれい”を生活者の習慣にしてもらうことが、資源循環実現へのカギになるため、清涼飲料業界を挙げた取り組みが続いている。