紅茶飲料“納得の甘さ”で広がる選択肢、香りも多様で気分に合わせて選ぶスタイルに

各社の紅茶飲料
各社の紅茶飲料

紅茶飲料の提案が多様化している。果汁のすっきりした甘さ、香りの余韻、温かさによる癒やしが支持される背景にあるとみられる。紅茶も他の茶系飲料と同じく無糖タイプが増加傾向にある。ただ、香りやアレンジが紅茶本来の魅力でもあることから、“納得できる甘さ”であれば甘くても支持され、売り上げを伸ばしている。緑茶や烏龍茶とは異なり、紅茶は自由な楽しみ方が生活者から受け入れられているようだ。

キリンビバレッジの「午後の紅茶 FRUITS & ICE TEA」シリーズ(500mlPET、9月23日発売)は、発売初日に1000万本、発売11日で2000万本を突破し、年間販売予定数量の9割に到達した。ラインアップは、「オレンジとグレープフルーツ」「白ぶどうとレモン」の2品を展開している。

紅茶に果汁を加える従来型ではなく、果汁を主役に紅茶で仕立てるという設計が新しい。果汁7%のフルーツ感とスリランカ産ウバ茶葉によるすっきりした後味が特徴で、ジュースや炭酸を好む層にも受け入れられている。あわせてキリンは11月18日から冬季限定のホット商品の投入も予定し、季節ニーズの取り込みを図る。11月18日から冬季限定で「キリン 午後の紅茶 アールグレイミルクティー」(400mlPET)を発売している。

一方、コカ・コーラシステムは、「紅茶花伝 ロイヤルミルクティー」(440mlPET他)を10月20日に刷新。手摘みセイロン茶葉100%を従来同様に用い、抽出温度を高める設計で紅茶の香りと味わいを際立たせた。

同社の分析では香りの持続性が従来品より高まったといい、紅茶の「余韻」を感じやすい味づくりを進めた。パッケージは紅茶のラインを加えるなど意匠を見直し、紅茶らしさを視覚的にも伝える設計とした。

また、昨秋に登場した「紅茶花伝 クラフティー グレープミックスティー」と「紅茶花伝 メープルティーラテ」(各440mlPET)を同日に再発売した。

サントリー食品インターナショナルは、今春から展開した「クラフトボス 世界のTEA」シリーズで紅茶の枠を超えた提案を進めている。紅茶と烏龍茶、桃やマンゴーなどを組み合わせたアレンジティーが好評で、提案の幅を広げている。

9月9日にはシリーズ初のホット商品である「クラフトボス 濃厚ミルクティー」と「同特製アップルティー」を発売し、10月21日には「同甘桃ティーラテ(ホット)」を発売。中国の“体を温めるミルクティー”文化に着想を得た商品で、オフィスや移動時の“温かい1本”を提案する。同社は狙いを、「肌寒い時期に気分を軽やかに上げる」こととしている。

紅茶の多様化の背景には、無糖茶飲料が定着する一方で、用途や気分に合わせて飲み分ける生活者の意識がある。たとえば、のどを潤す場面は無糖飲料、気分を上げたい・癒やしたいときは甘さや香り、温かさを求める傾向がある。物価上昇の中でも「せっかく買うなら納得できるおいしさを」という心理が、紅茶飲料の支持を後押ししている。

紅茶飲料市場は、他の茶系飲料のように無糖タイプだけでなく、“納得の甘さ”“香り”“温かさ”という多様な価値軸で人々に捉えられている。特に、ビジネスシーンにおいては、甘さを打ち出した飲料のパッケージは休憩の印象があるため敬遠されがちだと言われる。

だが、“紅茶”のカテゴリーはもともと嗜好性の高いイメージがあり、パッケージデザインも果汁飲料などに比べて落ち着いた色合いが多い。カテゴリーのイメージが嗜好に寄っている分、甘さがあっても仕事中に選びやすいことも支持されている要因だ。

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