【食品ロス削減×子どもの貧困解消】ライフ・東急ストア、食品マッチングプラットフォーム「ステナス」実証実験を開始――2027年度に全国展開を目指す
ライフコーポレーション(東京都品川区)と東急ストア(東京都目黒区)は、食品マッチングプラットフォーム「ステナス」の実証実験を10月6日から11月30日の期間に実施している。ネッスー(世田谷区、木戸優起代表)、一般社団法人サスティナブルフードチェーン協議会(千代田区、小林富雄代表)と協働し、食品ロス削減と子どもの貧困解消の両立を図る。
「ステナス」は、まだ食べられるがスーパーで販売できなくなった生鮮・日配食品などを、マッチングプラットフォームを活用して、ひとり親世帯、奨学金受給学生、こども食堂等の団体などを含む消費者へ、リアルタイムにマッチングを行う仕組みだ。利用者は、通常より安価に商品を購入して、店舗に設置した無人の専用冷蔵庫で購入した商品を受け取ることができる。会員登録をすると誰でも利用可能で、一般会員は店頭価格の6~7.5割引き、支援対象者はそこから半額で利用可能となっている。
サスティナブルフードチェーン協議会理事、専修大学渡辺達朗教授によると、日本における食品ロス量は、2000年から2030年までに事業系547万t、家庭系433万tの食品ロス量を半減させるという目標があるという。事業系においては2025年(23年度実績)が達成ペースで進んでいるが、削減目標を60%減に引き上げられており、家庭系は233万tで⽬標未達成という状況だ。
2023年度の小売業の⾷品ロス量は48万tで、事業系の21%を占める。小売業の⾷品ロス量は年々減少傾向にあるというが、賞味期限が⽐較的短い加工食品やパン・乳製品等の日配品、惣菜類、野菜・⿂などの生鮮⾷品は活用が難しい。
一方で、「子どもの貧困」も社会課題になっている。
厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、2021年時点で、子どもの約9人に1人、ひとり親世帯では約2人に1人が相対的貧困状態(おおむね世帯年収300万円以下)にあることがわかっている。認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンの「ひとり親家庭の生声白書」(2024年)によると、学校給食がない休日には、ひとり親世帯の子どもの3人に1人が1日2食以下で過ごしているというデータがある。
この二つの課題を解決するため、ネッスーは食品マッチングプラットフォーム「ステナス」を提供する。
このシステムにより、リアルタイムでのマッチングを可能にし、当日中に店頭で受け取る形とすることで、残り期限が1日程度と短い食品も扱える。

受け取り場所は生活導線にある小売店のため、利用しやすく、一般会員も含むさまざまな利用者がいることで、支援対象者の人も心理的に使いやすい。店舗側でも、小売店からの商品情報連携を、通常の廃棄商品登録の運用と同様の設計とすることで、運用負荷は最小限になっている。
実証実験は、ライフの「竹ノ塚店」(東京都足立区)、「西蒲田店」(大田区)、「千歳烏山店」(世田谷区)、東急ストアの「中目黒本店」(目黒区)の東京都内の4店舗で行われている。賞味・消費期限が当日中のものや外装が破損した商品を対象とする。
初期成果は、開始から約1週間で、利用登録者数は151人、そのうち支援対象者枠の登録者は36%を占めている。 のべ注文者数は65人で、約半数が支援対象者枠のユーザーだった。
商品マッチング率は36%と改善の余地があることがわかった。実証実験を踏まえ、2025年度中にサービスの正式リリースを予定しており、2026年度には首都圏および一部地方都市への拡大、2027年度には全国展開を目指している。
ライフコーポレーションサステナビリティ推進部の谷口氏は、「生鮮食品を取り扱えるので、普段買えない野菜を買えたなど前向きな意見が多く聞かれた。店舗によって設置場所が異なるため、入口付近ではなく、地下駐車場設置店は認知度を上げていく必要がある」と説明した。







