ローソン 食べきりサイズの商品など好調、スーパーとは異なる商品展開を【コンビニ冷食の今#1】
ローソンにおける冷凍食品の販売は、冷凍フルーツの支持の広がりなどで堅調な推移を見せる。最近では冷凍おにぎりの取り組みを拡大したほか、冷凍調理パンの販売にも力を注ぎ、新しい売り場づくりも進めている。
商品本部で冷凍食品を担当する、今川征治氏と白鳥瑞穂氏、冷凍おにぎりと冷凍調理パンを手掛ける西川大樹氏の3人に、それぞれ聞いた。

――冷凍食品市場の動向は
(今川)コンビニの冷凍食品にとっての転換期は、やはりコロナ禍だった。家庭で食事を済ませる際に冷凍食品を活用される家庭が増え、その中でスーパーだけでなくコンビニにも注目が集まった。
ただ、当時と比べると昨今はやや停滞傾向にあるため、今は次のステップに向けた準備期間だと思っている。スーパーの場合は大容量商品などの支持が厚い。我々コンビニは使いやすい食べきりサイズの商品や、フライパンを使わずに喫食できる餃子やスイーツなど、スーパーとは異なる冷凍食品を展開し、支持を広げられればと思う。
――1~9月までの販売状況
(今川)今夏に投入したバータイプの冷凍フルーツ(マンゴーやスイカ、チョコバナナなど)がSNSを通じて支持され、前年並みを維持できている。また、フルーツはアイスクリームよりも健康的なイメージがあったことも伸長要因だった。
その他、米飯では、食べきりサイズと大容量の商品が支持された。冷凍麺は、お湯を沸かす必要のない汁なし麺が好調だった。他にも、料理研究家のリュウジさんが取り上げてくださった「ホルモン鍋」も順調に推移した。焼餃子や焼ビーフン、チャプチェも好調に推移している。
(白鳥)汁なし麺は調理の手間が少なく、値ごろな点でも支持を広げている。米飯も、食べきりサイズの商品は1個200円ほどかつ使い勝手も良い。大容量商品もコスパの良さから順調だ。このあたりの商品の支持は売上にも寄与している。
〈冷凍おにぎりと冷凍調理パンの全国展開を開始 〉
――冷凍おにぎりの取り組みを開始した。動向は
(西川)この取り組みは 2022年に構想し、23年に実験的に販売した。今年ようやく全国的な展開を実施できた。
現在冷凍おにぎりは、中食ベンダーと同じ設備を揃えた冷凍食品工場で製造しており、常温で提供しているものと味は変わらない。冷凍食品は賞味期限が長く、配送頻度も抑えられるため、確定生産が可能だ。原材料の廃棄ロスは極限まで減らせるほか、賞味期限がチルド商品よりも長いため、店舗での食品ロスも大きく減らせる。
また、物流面では、2024年に物流問題が発生したタイミングで店舗への商品配送の便数を1日3便から2便に変更しており、これをもう少し減らすための手段の一つとして、冷凍食品の活用に着目したことも理由の一つだ。
今回は冷凍食品工場で製造しているが、元々は中食ベンダーで冷凍商品を製造することを構想していた。中食ベンダーの工場では、商品の一部を、不足が出ないよう見込み製造を行う必要があった。その際の余剰人員を活用して冷凍商品を製造できれば、生産性の向上などにつながると考えている。
今後の課題は、冷凍おにぎりの認知度をいかに高めるかだ。餃子や炒飯、たこ焼きなどと比べると、冷凍おにぎりの認知はまだまだ低い。
コンビニに来るお客様は、まず常温・チルド売場にあるおにぎりや弁当、調理パン、調理麺などを見に行く。そこで目的の商品がなければ冷凍食品を見る、という流れになるため、誘引がなかなか難しい。そのため、常温・チルド売場で冷凍でもおにぎりを販売していることを伝えるポップを掲載している。

――商品の特徴は。
(西川)白米を冷凍すると、米から水分が抜けてロウのように硬くボソボソした食感になる「白蝋(はくろう)化」という現象がどうしても起きてしまう。そのため、製造後は時間を空けずに急速凍結しているほか、店舗や物流でも温度管理を徹底し、品質を落とさないよう取り組んでいる。
――今後の展開は。
(西川)現在は常温と同じ商品を展開しているが、今後は冷凍ならではの商品も必要になるだろう。サイズをいまより少しアップしてコスパを感じられる商品なども検討しており、来年には発売できるよう取り組みたい。
――冷凍調理パンも展開している。取り扱いを始めた理由と販売状況は。
(西川)冷凍おにぎりと同じで、ベンダーの生産性向上に繋がる取り組みの一つでもある。常温とチルドの棚を見ると、サンドイッチやハンバーガーはそろっているが、マフィンはなかなか置いていない。また、様々なパンを試す中で、マフィンは冷凍と解凍の適性があったほか、レンジで温めることでトロっととけるチーズを使えるため、より美味しく仕上げることができた。10店舗でのテスト販売時は想定以上の動向だったため、今年7月から本格展開を開始した。まだベンダーの生産キャパシティが足りていないため、まずは展開できるところから取り組んでいる。
課題としては、冷凍おにぎりと同じで、認知度が低いことだ。25年度末までに4,000店舗での導入を目指している。来年に向けて、コスパを感じられる新商品の投入も検討している。
〈季節性やトレンドなど踏まえた提案を〉
――ローソンの冷凍食品の認知向上につなげるべく取り組んでいることは。
(白鳥)アプリで商品を試すことのできるクーポンを、ポイントに応じで交換している。アプリを利用される方は来店頻度が高いため、こうした方に冷凍食品売場に来てもらうべくこうした販促に取り組んでいる。
利用頻度の少ないお客様に向けては、SNSのX(旧Twitter)でキャンペーンを、米飯や焼餃子などの商品を対象に行っている。
この両軸で訴求することで、試しに購入してみようと思ってくださる方はいる。こうした取り組みを着実に積み重ねて認知向上につなげたい。
――今課題と感じていることと、今後の取り組みは。
(白鳥)美味しさやバラエティ性、コスパの良さ、食品ロスへの貢献といった冷凍食品ならではの良さは、追求すると終わりがない。お客様のニーズにしっかり応えた商品を送り出したい。そのために製造面や物流面、店舗での陳列などは課題だと感じており、そこの対策を進めていく。
(今川)コンビニは移り変わりの早い売り場だと思う。冷凍食品も一緒で、季節性がある商品や今のトレンド、売れ続けている商品など、新しい商品の投入なども進めながら、メインの商品にしっかりと力を注ぎたい。
特に注力したいのは、今の主力である米飯と調理麺、フルーツだ。単品ではなく、複数の商品をしっかりと売場で並べて、季節性やトレンドにあったものと、定番商品の両面で提案できればと思う。
〈冷食日報2025年11月11日付〉







