農林水産物・食品の2023年輸出実績が11年連続過去最高、伸びは鈍化傾向に/農林水産省

農林水産物輸出 グラフ
農林水産物輸出 グラフ

農林水産省は1月30日、2023年の農林水産物・食品の輸出実績を公表した。輸出実績(少額貨物含む)は2013年以降、11年連続で過去最高を更新する前年比407億円増(2.9%増)の1兆4547億円となった。

農林水産物輸出 米の輸出
農林水産物輸出 米の輸出

上半期は前年同期比9.6%増で推移した。アフターコロナ下で世界的に人々が外出して飲食する機会が増え、円安も追い風となったという。だが、下半期は2.9%減と低調な流れとなった。例えばホタテは年間で222億円減(24.4%減)など、ALPS処理水問題に伴う中国の水産物規制(8月24日~)が大きく影響し、近年と比べると全体の伸び率は鈍化した。

なお、「2025年2兆円/2030年5兆円」目標に関し、農水省は上半期段階の会見(2023年8月3日)の際に、「3年間(2023~2025年)で年12.25%(5860億円)以上の増加が必要となる」と説明していた。一方、この日の会見では記者からの質問に答える形で「今回は(目標達成の試算を)特にしていない」と話し、「ここから2兆円を目指して、引き続き頑張っていきたい」とするにとどめた。

品目別の輸出額では、緑茶が健康志向の高まりを背景に欧米向けで伸び年間で291億8600万円(33.3%増)、ビールは韓国向けが大きく増加し179億567万円(66.6%増)となっている。

米関連では、商業用米94億1100万円(27.5%増)、パックご飯など10億1000万円(27.9%増)、米菓60億9800万円(10.8%増)の3品目が、いずれも過去最高を更新した。商業用米は加州産米の高騰に伴う価格優位性の高まりから、北米向けが牽引。

その反面、輸出額を減らしたのが13.5%減の日本酒410億8200万円だ。日本酒は2022年まで13年連続で前年を上回り、過去最高額を更新し続けたが、2023年は数量・金額ともに減少した。中国による海産物禁輸措置によって現地(高級)日本食レストランでの需要が減少したほか、中国の景気後退、アメリカでのインフレなどが影響した。

日本酒造組合中央会の小西新右衛門副会長は2023年末に開催された記者会見で、「2023年を振り返ってみると数量・金額ともに前年を下回り苦戦している。組合員からの聞き取りでは、大きなボリュームのアメリカ、中国、香港が不振で、景気の低迷や消費マインドの減衰、前年の物流混乱による過剰在庫、新型コロナウイルスによる料飲店での人手不足などを要因として挙げている。また、特に中国は大きく減少しているが、福島第一原発の処理水の放出に加え、中国国内の景気も影響してるものと思われる。その一方アメリカでは金額は数量ほどの落ち込みはない。海外戦略委員会でもアメリカは堅調な動きをするのではないかと見ている」とコメントしていた。