揺れる給食業界 コスト増・人手不足にどう立ち向かう?対応策を共有
日本給食サービス協会は2月18日、給食業界が直面する課題と取組みについて東京ビッグサイトでセミナーを開催した。協会の会員4社は、学校・保育園、社員食堂あるいは病院や福祉施設など、多岐にわたる給食現場で食事を調理、提供している。会場が満員になる120名以上の参加者に対して、コストアップや人手不足、多様な顧客ニーズなどの課題について対応策を伝えた。
〈食品仕入れを一本化して価格変動を抑制〉
北海道札幌市に本社を置くエムズフードは、食材の高騰・価格の安定化の取り組みを発表した。
食品仕入れを関連会社の卸に一本化することで、本来かかる運送コストを削減。市場に大きく左右されることがないため、頻繁な価格変動を抑えることができる点を説明した。
環境不順や災害などで食材価格が上がる際には、その食品卸が同社に一カ月以上前に伝えるという。
同社の青田俊さんは「例えば、メーカーさんから 油が4月から100円上がるという報告を、食品卸を通じて受けた場合、当社は、4-5月分の商品量をあらかじめ抑えることで、世間よりも1~2カ月値上げ幅に猶予を持たせることができ、値上げの上昇を緩和することができる」と説明した。

〈スキマバイト活用や本社所属のフリー社員の拡充で人手不足に対応〉
東京都中央区に本社を置くレクトンは、人材不足の問題を解決する方策をいくつか紹介した。
早朝出勤は調理スタッフの体力的な負担が大きいので、病院や福祉施設給食では、前日に調理、冷却、保存を行い、当日は再加熱のみにする調理方式を新たに採用した。そうすることで、現場負担を軽減するとともに、朝の負担が減った分、メインである昼・夕食の食事づくりに集中できる環境を作り出した。
また従来は、調理員が調理だけでなく洗浄も担当していたため作業効率が悪かったが、スキマバイトを活用することで洗浄専門スタッフをスポットで採用し、分業化を行い、提供スピードと質を向上した。
同社では、学校や病院、保育園、福祉施設と様々な場所で食事を提供しているが、各現場でギリギリの人数で運営していると、たった一人の欠勤で現場が崩壊するリスクがあることから、本社所属のフリー社員を拡充した。

同社の木南雄太さんは「特定の事業所には所属せず、エリアや業態をカバーする遊軍部隊だ」と話す。
「急な欠員が出たら即日カバーに入り、何があっても本社が助けてくれるという安心感が現場の離職防止につながっている。複数の現場を行き来するフリー社員が孤立してしまいがちな現場責任者と意見を交わすことで、現場責任者の孤立感をなくし、働く意欲の向上にもつなげる」と効果を語る。
「人がいないからサービスが低下しましたという言い訳をゼロにするための私たちの先行投資だ」と話す。
〈社員食堂の多様化するニーズには給食会社の企画力と実行力〉
愛知県名古屋市に本社を置くEVERYFOODは、社員食堂に対する顧客の多様化するニーズへの対応について説明した。同社の悦若菜さんは、食事に対する基本姿勢として「お客様のニーズに応え続ける会社を目指し、お客様の味を徹底して追求することが、当社の最大の特徴だ」と話す。
社員食堂と一口にいっても、健康配慮重視なオフィスもあれば、満足感重視な商業施設のカフェテリアやスピード重視の工場食堂と、多岐にわたるという。「お客様によって、年齢層や男女比、地域性などのニーズが違うことから、それぞれの社員食堂の味を追求する」とこだわりを語る。例えば、カレーでは、辛さのレベルや具材、ルゥのとろみなど、お客様のお好みに合わせて対応しているという。
企業の社員食堂担当者から「ヘルシーメニューはあまり選ばれない」と聞けば、ヘルシーさを前面に出さないで健康づくりを身近に感じてもらえるようなメニューを設計し訴求する。お客様の要望をヒアリングしながら、ヴィ―ガンの方も食べられる植物性食品を使用したラーメンや有名外食店とのコラボメニュー、ボリューム満点のメガ盛りイベントなどを提供したことを説明した。

悦さんは社員食堂について「単なる食事提供の場から、企業で働く人の健康と社会全体の環境を支える重要な拠点へ変化している」と指摘する。「健康経営を推進する企業にとっては、社員食堂は大人の食育の場であり、栄養や食の知識を深める機会を提供する場であり、SDGsイベントを食堂で開催することで、1人1人の社員が社会に貢献していることを実感できる場でもある」と役割を説明する。「つまり、社員食堂は、企業の理念や方針を形にするプラットフォームへと進化しており、それを支えるのが給食会社の企画力と実行力だ」と話した。
〈見た目が通常の食事と変わらない介護食を自社開発〉
大阪府大阪市に本社を置く名阪食品は、福祉施設における食事サービスの課題解消の取り組みを発表した。2013年当時、食べる力・飲み込む力が低下した方に向けた介護食は、通常の食事と見た目が変わらないものがほとんど流通していなかった。そこで、同社は自社で設備投資を行い、新しい介護食「そふまる」を開発した。食材に酵素を浸透させることで、形を維持したままやわらかくする技術を採用。温度と浸漬時間を管理することで、見た目が通常の食事とほとんど変わらず、やわらかくて飲み込みやすい介護食を作り出した。

また、「お正月におもちを提供したい」という施設の要望に応えて、「ソフトもち」も開発。もち米粉を使用し、おもちの風味を残しながら、べたつぎを軽減できるよう開発。粘り気やべたつぎが少なく、お箸で簡単に切ることができる安全な「ソフトもち」に仕上げた。同社の上田稚子さんは、「『そふまる』はお客様の要望を直接聞きながら商品開発をしており、ニーズに合わせて作ることができるのが当社の強みだ」と話した。







