マルハニチロ「弁当品からの脱却へ生産再編、麺類は来年8月群馬工場で焼そば新ライン」/綿引建司市販用冷凍食品部長インタビュー

マルハニチロ・綿引建司市販用冷凍食品部長
――上期の家庭用冷食事業を振り返って

家庭用冷凍食品ユニットの業績は、売上高は前年比4%増(10億円増)267億円、営業利益2億円増11億円と増収増益だった。

カテゴリー別では、弁当品4%増、米飯3%増、麺類1%増、惣菜16%増、グラタン20%増と伸長した一方、ピザ3%減、凍菜1%減となった。総じてみれば、市場は昨年伸長の裏年にもかかわらず緊急事態宣言が続く中で堅調に推移した。当社にとっては、前年は休校があった学校が再開したことで構成比の高い弁当品が好調だったほか、惣菜、グラタンが大きく伸長した。一方、ピザは昨年大幅増の裏年だったこと、凍菜は枝豆の不調があり前年に届かなかった。

単品で見ると「WILDish」シリーズの米飯、麺類の「横浜あんかけラーメン」「五目あんかけ焼そば」、弁当品の「白身魚&タルタルソース」「牛カルビマヨネーズ」といった商品が2ケタ増となり、総じて定番品の動きが良かった。

――上期の重点施策と成果について

以前から取り組む重点施策として、弁当品からの脱却があり、中でも惣菜の拡大に取り組み、重点商品の「五目シュウマイ~香りと旨み~」は順調に推移し、から揚げでは8月に「極旨!ももから揚げ」を投入し、好調に配荷が進んだ。

最近、冷食市場で大手メーカー以外のメーカーがシェアを伸ばしている中では、市場以上に伸ばせたと言えるのではないか。

――足元の市場について

緊急事態宣言が解除された10月も、予想に反して家庭用冷食市場は3%増ほどで推移し、堅調が続いている。確実に外で食べる機会も増えたはずだが、予想以上に冷食の使用が広がりベースアップしているように感じる。当社に関しても、横浜流星さんを起用したTVCM効果もあって堅調だ。

前年2020年度の伸長が大きかったため、2021年度トータルで前年を上回るのは難しいとも思っていたが、10月の伸長は予想外で、前年並程度にはなるかもしれない。

買い物回数減の流れでSM(スーパーマーケット)では大袋商品が増えている一方、CVS(コンビニエンスストア)は苦戦気味が続いている。ただ、そういう中でもCVS 各社が冷食強化を打ち出しており、今後ますます切磋琢磨が続くだろう。また、SMの冷食売場はどんどん大きくなっているが、弁当品売場は段々小さくなっており、前述の通り、我々も変化に対応せねばならないと考えている。

――市場の課題は

現段階では生産がマーケットに追いついていないとみられる。向こう10年ほど、冷食市場は徐々に伸びてくと考えられるが、人口減少も確実で、闇雲に投資をするのも難しい。供給過剰になれば価格競争になるのは必然で、なおさら価値のある商品を提供しないと厳しくなる。

――値上げについて

原材料価格等各種コストの上昇を企業努力で吸収するのが難しく、11月29日に値上げを発表した。今後、2月1日納品分から家庭用冷凍調理品・農産品の一部で値上げを実施する。それでも農産品の一部では相場が非常に上昇しているものがあり、海上運賃の上昇もあり厳しい状況だ。

――下期の重点施策について

引き続き重点カテゴリーである昼食・個食需要に向けた米飯・麺類や、シュウマイ・から揚げといった惣菜類の強化を行う。プロモーション面では、TVCMを放映するともに、それとも連動し、SNS を活用したキャンペーンも継続して行い、露出を高めるようにしたい。

また、若年層をターゲットにした「WILDish」シリーズでは、新たな取り組みとして、若い人たちに人気のプロe スポーツチームへのスポンサー協賛を開始した。

――生産面での施策について

生産面では、伸長カテゴリーでもある米飯・麺類で生産能力が逼迫しつつあることが課題となっている。麺類ではラーメンは設備を更新し、生産能力を高めた。さらに、群馬工場で新たに焼そばラインの導入を進めており、来年8月の稼働を目指している。米飯では、より生産性の高いラインへの切り替えなどを検討しているところだ。

――中長期的な方向性

生産再編を進めながら、時代の変化に合わせた商品を投入していきたい。おいしさを追求しながらも、簡便性や健康価値―減塩・野菜・魚食など―といった付加価値を備えた商品を目指していく。  

〈冷食日報2021年12月21日付〉