【中間流通特集②】日本加工食品卸協会・奥山則康専務理事インタビュー

–昨年は消費増税があった

増税に際しては仮需もあったが、前回(平成元年)に比べ消費行動は比較的冷静だった一方、節約意識が今も底流に残っているようだ。増税に際しては、転嫁対策特別措置法に基づき、食品卸業界が足並みを揃えようと、当協会が主体となって地域卸6団体とも連携し、消費税転嫁・表示カルテル推進協議会を組織するとともに、酒類卸、菓子卸、日雑卸と、異業種の卸団体が揃ってカルテルを結成し、転嫁対策を行った。これは画期的なことで、公正取引委員会(公取委)等行政、特措法により外税化などもあり、転嫁対策は円滑に進んだと考える。26年度は、同協議会での検討・審議を要する事案は皆無だった。

今後、2017年4月に再度、消費税10%への増税が予定され、軽減税率制度の導入も検討されている。昨年8月、与党の税制協議会で関係62団体のヒアリングが行われ、当協会として、ひとまず消費税率10%までは、軽減税率導入反対の旨をお伝えした。ただ、将来消費税率が10%よりさらに上がるようであればその限りではない。

反対の理由は、複数の税率が混在することで、事業者はもちろん、国民生活にも混乱を きたすと考えられることや、線引が難しいことだ。特に我々中間流通においては、債権債務処理など事務処理が多大となることがある。もちろん、食品について軽減税率が導入される可能性もあり、税制協議会は秋までには結論を出すとしている。上期の課題として、協会としての見解・対応をまとめなければならないと考える。

–今年4月から新食品表示法が施行されるとともに、機能性表示食品制度が創設され、表示等ルールが変わる

食品表示法については、パブリックコメント(パブコメ)の際に製造所固有記号について経過措置期間について要望していた。実際に施行され、円滑な運用が図られるよう、引き続き働きかけを行いたい。また、機能性表示食品については、販売の60日前までに消費者庁に届け出る必要があり、この6月から実際に市場に出てくることになる。流通の役割として、小売業・消費者に的確な情報が届くよう、必要があれば協会としても取り組みを進めたい。

–独禁法関連について

公取委が昨年12月「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」の一部改正(案)を出した。これは、現行の指針が91年に定められてから25年が経過する中▽ネット販売や通信販売の台頭など、一部現状と合わなくなっている点があること▽デフレ脱却が国策である中“高くても売れる”ことを後押ししたい行政の意図があること▽欧米型の「垂直制限行為(選択的流通)」を認めようとしていること–という背景がある。このうち改正案では垂直制限行為を、市場における競争を促進する効果がある場合は適法としている。「垂直制限行為」とは、新規参入者がブランド力を獲得する過程で小売店の売り方を指定したり、高額商品を扱うメーカーが高品質に見合うだけの接客対応をしている小売業者に売るよう卸売業者に指示したりする行為(選択的流通)を指す。

これに対し、協会ではパブコメにおいて意見を提出した。メーカーが卸と特約店・代理店契約を結んでいるときに、それを超えてメーカーが独自に垂直制限行為を行うと、卸として大きな制限を受けてしまう。そのため、ガイドラインはメーカーと流通業者との間の取引条件を定めるものではなく、取引条件はあくまでも当事者間の充分な協議に基づいて決定されるものであることを、ガイドラインに明示すべきだとした。

公取委は3月末、パブコメへの返答として要旨、メーカーが流通業者に対して一方的に取引条件を決定し不利益を与えることは「優越的地位の濫用」の問題となること、選択的流通が認められるには、消費者の利益の観点から“合理的な理由”に基づいている必要があり、単なる安売り業者の排除、値上げ交渉の材料とすることは、“合理的な理由”に該当しないとした。

同指針は今後、パブコメを受けて成文化されることとなるだろう。