【冷凍食品・流通特集】値上げ・物流費増も収益確保

本紙「冷食日報」編集部はこのほど、冷凍食品を取り扱う食品卸を対象に2015年度の業績概況と次年度の見通しについてアンケート調査を行った。集計結果を見ると、回答のあった企業のうち6割以上が冷凍食品の売上高(見込みを含む)が前年実績を上回る結果となった。前年に好転した増収傾向が更に強まった。増収率4割以上が回答の43%に及ぶなど好調ぶりが際立っている。13年度来、強まっている円安と原料相場の上昇を受けてメーカー各社が値上げを実施した中で15年度は始まったが、価格志向が根強いと言われる一方で、集計結果からは中間流通業でも収益改善傾向が見られる。また今年の調査では物流費負担の状況についても聞いている。

冷食取り扱い卸売事業者の動向アンケートは今年1月下旬~2月上旬にかけて実施した(紙面にアンケートをもとにした各社概況一覧を掲載)。

15年度の各社の総売上高は、有効回答59社のうち、増収(見込みを含む。以下同様)としたのは64%の38社。前年(47%)を大幅に上回る結果となった。横ばいは20%(前年25%)だったので、前年実績をクリアしたのは85%(同71%)に及んだ。一方で前年割れは15%と前年(29%)を大幅に下回った。メーカーの製品値上げを受けて、金額ベースの数字が積み上がった。

冷食の売上高に焦点を絞ると、増収とした企業は61%で前年(53%)より約8ポイント増加した。前年並みを加えると、80%で前年を10ポイント上回る結果となった。前年割れは20%で、やはり前年調査より大きく改善している。

右の総売上高の結果と比べると、増収・前年クリア・減収のいずれも、冷食の結果は下回っているが、伸び率(グラフⅠ※右の増減のみとは集計母数が異なるため、数値は合致しない)まで見ると、冷食の伸び幅には特徴が見られる。

冷食売上げを「7%以上」の大幅増収とした企業は27%と前年(10%)を大幅に上回り、総売上高の7%以上増収の割合(14%)よりもはるかに多かった。一方で冷食増収幅「4%以上」では44%で総売上高とほぼ同じになる。

伸長率が最も高かったのは山口油屋福太郎(福岡)で26%増。「原料高騰による販売価格への転嫁、商品集約等」に取り組み、外食チェーン店への販売が好調だった。広栄(大阪)も20%増と伸長。「春先の加工品全般の価格改定でユーザーに理解を求めた」。ともに値上げ対応が一定の成果を見せたようだ。

関東食糧(埼玉)も前年度(9%増)を上回る15%増。居酒屋は苦戦したものの、老健介護ルートが引き続き好調に推移した。マルイチ産商(長野)も14%増と伸長。惣菜ルートの好調が要因だ。病院老健ルートを伸ばした協食(山口)と、冷食大手のナックスナカムラも2ケタ増とした。

冷食の販売利益を見ると「増益」と回答したのは33社で有効回答61社の54%だった。前年(29%)よりも飛躍的に増加し、増収比率(61%)との齟齬は大幅に修正された。「減益」は12%で、やはり前年(29%)から大きく改善している。

利益率で見ると26%が「低下」と答えた。前年(47%)は改善が見え始めたが、更に大幅改善となった。利益利が「上昇」したとの回答は33%を占め前年(11%)より飛躍的に増加した。値上げをはじめ、収益改善が進んだ。

ただし「横ばい」もほぼ前年並みの41%となっている。物流コスト上昇も引き続き大きな課題となる中、次年度においても収益改善を重点施策に挙げる回答は散見された。

15年度の重点施策について回答を見ると、圧倒的に多かったのが「値上げ対応」だった。関連して「収益改善」「類似アイテムの集約」、また「定期見積りの励行」なども挙がった。

販売営業面では「提案営業の推進」が決まり文句となるが、関連して「取引先との取り組み強化」、シニア市場も想定される「新市場への拡大」等が見られた。

物流に関して「在庫管理・圧縮」「配送ルート見直し」など前年調査で多かった回答が急減した。物流に関しては別立てで質問項目を設けたため、回答に影響が出た可能性がある。

次期の施策としては、引き続き「値上げ対応」とする回答もあったが、「商品」の開発・発掘に注目する回答が比較的多かった。

各社の次年度の業績予想としては、総売上高で「1~3%」増収が最多。有効回答49社の41%を占めた。次いで「4~6%」増収が37%、「7%以上」と強気な予想も14%と比較的多かった。

冷食売上高に絞ると「1~3%」増収見込みが最多の33%(有効回答45社)。前年調査では「4~6%」が最多(40%)だったのでやや保守的な予想といる。

前年調査で過半数を占めた「4%以上」の予想は、今回調査では44%にとどまった。

アンケートでは冷食業界の成長予想と課題についても聞いた。

業界成長予想では「1~3%」成長との回答が最も多く有効回答55社の75%を占めた。前回調査よりも13ポイント拡大した。「4~6%」の予想は2ポイント減少して13%。両者を合わせて87%が冷食市場の成長を予想。前年よりも10ポイント増加している。

一方、マイナス予想は前回5社あったが、今回は調査開始以来初めて0社となった。

業界の課題について自由回答を見ると、メーカーに対して「新商品の7割近くが量販店惣菜を意識したもの。外食向けに特化した開発に力を入れてもらいたい」「最近メーカー商品開発で学給商品が少ない」などの意見、「水産原体の一括表示を日本語表記に使用できるよう輸入元に義務付けを要望」などの意見があった。

家庭用に関してはEDLP化の浸透を反映してか、「割引セールの見直し」の指摘は見られなかった。一方で「GMs、sMのPB品に起因する市場価格低下」「弁当商材の落ち込みの原因分析が急務」などの指摘があった。

得意先に対しては「業務効率改善のキーとなる受注オンライン化が進まない。発注はかなり効率化しているが、末端ユーザーが未だにアナログ」「物価上昇に伴う原価の変化に対応し、大手外食ユーザーもしっかり価格反映してほしい」などの意見があった。

アンケートでは15年度に伸びた業態(商品)と苦戦した業態(商品)についても聞いた(グラフⅡ)。

「病院・介護施設」が伸長したとの答えが引き続き最も多く、19件となった。「骨なし魚」や「やわらか食」が伸長したとの回答もこの5年間散見される。

主戦場のひとつである「中食・惣菜」は好調が10件、苦戦が4件となり、前年とほぼ同様。他方の「外食」は前年に引き続き「好調」「苦戦」とも12件と拮抗している。好調にはホテルが挙がり、インバウンド、旅行需要の高まりが垣間見える。一方で苦戦には居酒屋が突出して多く挙がった。

「給食」は好調が9、苦戦が12と前年(好調5、不調11)より改善に向かっているようだ。学校給食に関しては中学校給食を新規で始める自治体もあらわれ、大きな商機ととらえる事業者の意見が見られた。

相変わらず厳しいのが仕出し弁当など「弁当」業態だ。好調も1件あったが、苦戦が6件となった。

前年は「市販用冷食」を苦戦に挙げる企業が目立ったが、今回は同じ市販用でも商品カテゴリーによって好不調の差が見られる。好調には特に米飯が、苦戦には弁当が複数挙がった。

「凍菜」は前年に引き続き好調が多数挙がった。凍菜に加えて、畜肉や水産など素材品も好調分野として挙がっている。

今回のアンケートでは深刻さが増している、物流コストの上昇、人手不足に起因する人件費の高騰について聞いた。

物流費負担については「増えた」との回答が71%を占めた。増加率は1%~20%と事業者によってさまざま。「変わらない」は21%、「減った」も7%あったが、前年度から対策を行った事業者がこれに当たると見られる。

人件費については61%が「増えた」と回答した。増加率は2~5%程度。「変わらない」は32%、「減った」は7%だった。

物流費・人件費上昇に「対策を実施した」との回答は46%だった。具体的に、物流関連では「委託配送業者の見直し」「配送エリアや配送コース、ユーザーの見直し」、さらに「自社配送への切り替え」が挙がった。人事面の回答も多く「営業時短のため内勤者の増員」「配置の最適化」「新卒だけでなく中途採用も併用」などが挙がった。