【美味しい冷凍塾】「温度が低ければ良い」は間違い? 正しい知識で適切な冷凍機選定を/デイブレイク広報・松本知世氏

2種類の空気凍結の急速冷凍機(左:ブラストチラー、右:アートロックフリーザー)で凍結・解凍したフルーツ
2種類の空気凍結の急速冷凍機(左:ブラストチラー、右:アートロックフリーザー)で凍結・解凍したフルーツ

(デイブレイク株式会社 広報 松本知世)ぐるなび総研が発表したその年を象徴する食「今年の一皿」に、2022年は冷凍グルメが選出されました。

コロナ以降飲食店の急速冷凍機の導入が進み、お店の味を家庭で味わえる冷凍商品が多数誕生したことが理由だといいます。しかし、世間を賑わす冷凍グルメが生まれた一方、冷凍機を導入したものの上手くいかない企業からの相談が増加しています。正しい知識で機械を選ばなければ、美味しい冷凍は実現しません。

〈機器によって効果はさまざま 食材を劣化させてしまう冷凍方式も〉

急速冷凍機には空気と液体凍結があり、冷やしたアルコールに浸し熱を奪う液体凍結は、熱伝導率の高い液体の特性を活かした冷凍技術です。ブロック肉やマグロなどと相性が良いですが、拭き取りや洗い流しが発生すること、アルコールを多量に工場に置くリスクなどから、量産を計画する企業は空気凍結を選ぶ傾向があります。

また、液体凍結はメーカー間の性能差が少ないのに対し、空気凍結は様々な設計の製品があり注意が必要です。例えば、ブラストチラーの多くは冷却を目的とした設計なので冷凍にはパワーが足りません。その他にも、食材にダメージを与える冷凍方式であるがゆえに品質を劣化させる冷凍機は意外と多いです。2種類の空気凍結の急速冷凍機(ブラストチラー、アートロックフリーザー)で凍結・解凍したフルーツは、変色やドリップの量に大きな差が見られます。

〈温度の低さによる凍結時間の際はわずか 食材によっては更なる品質劣化も〉

さらに、「温度が低ければ低いほど良いわけではない」というのが冷凍機の原理原則ですが、この基本知識が十分に浸透していません。デイブレイク株式会社で実施した研究の結果として、とある仕様の冷凍機では、-30℃設定の冷凍機の処理量は100kg/時間、-60℃設定の冷凍機の処理量は40kg/時間で、温度を下げる代償として凍結可能量が60%減少してしまいました。

凍結時間は、氷結晶が大きくなりやすい-1~-5℃の通過時間は-30℃と-60℃の差が数分程度の食材も多くあり、この時間差が品質に与える影響はほとんどありません。むしろ超低温の風を当てることで身割れなど食材へのダメージが現れる可能性もあり、研究を続けています。超低温を打ち出した急速冷凍機もありますが、対象の食材にそのスペックが本当に必要なのかを見極める必要があります。

冷凍ブームによりメーカーや機械が増え、買う側にも正しい知識が必要な時代になってきています。本格的な冷凍商品が増え消費者の冷凍へのイメージが変化した2022年。今年は最適な機械の導入が進み、冷凍グルメが一層世の中に定着していくことを期待しています。

〈冷食日報2023年1月16日付〉

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近年の冷凍食品をめぐる情勢は、共働き世帯の増加や家族構成の変化、また飲食店や量販店の惣菜売場の多様化によって需要が増加しています。一方で、家庭用冷凍食品の大幅値引セールの常態化はもとより、原料の安定的調達や商品の安全管理、環境問題への対応など課題は少なくありません。冷食日報ではこうした業界をめぐるメーカー、卸、そして量販店、外食・中食といった冷凍食品ユーザーの毎日の動きを分かりやすくお伝えします。

創刊:
昭和47年(1972年)5月
発行:
昭和47年(1972年)5月
体裁:
A4判 7~11ページ
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