【美味しい冷凍塾】霜=冷凍焼けは誤り? 冷凍焼けのメカニズムと対処法とは/デイブレイク ラボリーダー・富山知樹氏

左:アートロックフリーザーから取り出した直後の牛肉、中央・右:冷凍焼け状態の牛肉
左:アートロックフリーザーから取り出した直後の牛肉、中央・右:冷凍焼け状態の牛肉

(デイブレイク株式会社 ラボリーダー 富山知樹)「保管している間に冷凍焼けして品質が劣化した」。デイブレイクによく寄せられる相談の一つです。しかし中には、冷凍焼けが起きていないにも関わらず、冷凍焼けだと主張される事があります。急速冷凍機の普及が進み、長期間品質を維持することも、冷凍商品の開発において向き合うべき課題の一つ。今回は、食材の「冷凍焼け」について、正しいメカニズムと対処法を解説します。

「冷凍焼け」とは、食材の乾燥と酸化によって品質が劣化してしまう現象です。冷凍庫内の温度上昇で食材が溶け、その水分が気化すること(昇華)で起こります。細胞内の水分が抜けた隙間に空気が入り、乾燥・酸化することで品質が劣化。再び温度が下がる時に、昇華した水分が食材の表面に凍りつき、硬い霜のついた状態になります。

〈「霜」=冷凍焼け、ではない〉

この「霜」という部分だけを切り取って冷凍焼けだと捉える人がいますが、それは場合によって間違った解釈です。例えば、デイブレイクの特殊冷凍機「アートロックフリーザー」で凍結した食材を冷凍機から取り出す時にきめ細かい霜がつくことがありますが、これは冷凍焼けではありません。

この霜は、食材の表面の水分が凍ってできたもので、細胞内の水分が昇華したものではなく、むしろ、凍結速度の速さから、空気中に水分を逃さず食材の表面にとどめられているとも言えます(熱い食材を入れた時には、湯気が庫内を循環し、食材の表面に付着する場合もあります)。

これらの霜は雪の結晶のように細かくて軽く、払うとすぐに取れますが、冷凍焼けの霜は食材に硬く張り付いて取れません。同じ霜でも、温度上昇によるものなのか、凍結時に温度が下がることで出来る霜なのか、つくられる原理が全く異なるのです。

〈「冷凍焼け」防ぐには庫内環境の整備など〉

また、「特殊冷凍機で凍結すれば冷凍焼けしない」も誤りです。優れた技術で凍結しても、保管環境によって冷凍焼けは起こります。冷凍焼けを防ぐポイントは、

〈1〉保管用の冷凍庫内の環境を整えること
〈2〉十分に真空すること
――の2つです。

デフロスト(庫内の霜を取り除く)機能のある冷凍庫でも、できるだけ温度変化が起こらないように工夫すれば影響を抑えられますし、真空をしっかりかければ空気に触れさせず酸化を防いでくれます。

「霜=冷凍焼け」ではないこと。そして、保管環境を整えないと特殊冷凍でも冷凍焼けの恐れがあること。冷凍焼けを正しく理解して、食材本来の美味しさのまま長くとどめる方法を検討いただきたいと思います。

〈冷食日報2023年2月1日付〉

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昭和47年(1972年)5月
発行:
昭和47年(1972年)5月
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