ワイン特集 数量より中身に軸足、上級クラス提案を強化

酒類市場が縮小する中、数少ない勝ち組として年々拡大を続けてきたワイン市場だが、昨年後半あたりから踊り場に入った感がある。

円高時代は廉価品が大量に輸入され、市場拡大に貢献したが、アベノミクスによる景気対策で、対ユーロだけでなく、対ドルでも円安が進行。円安基調に代わっても「価格」で線引きする流通、「価格を1割上げるとすぐに見放す」消費者。頻繁に主役が変わる量販店市場の熾烈な棚割り競争に勝っても利益は出ず、ブランドの固定ファンがつくわけでもない。

そんな中、「数量はもう追いかけない。中身に軸足を置く」「価格だけのマーケティングはもうしない」「ちょっと上のクラスの提案を強化する」インポーターが増えている。

エントリーユーザーはわかりやすく低価格の商品を好む。いわゆる「国産」ワインを飲んでいた層は、同価格帯の輸入ワインにもシフトし、PBだろうが、産国がどこだろうが気にしない。ブランドより、味と価格で選択するこの流動層が、ワイン消費量を押し上げてきた。しかし、「そろそろ安いワインには飲み疲れしてきたのでは」と考える節もある。

今回、各社で共通して聞かれたのが「1,000円以上のワインの動きが良い」ことだ。実際、ここ数年のPOSデータを見ても、1,000~1,500円カテゴリーが伸びている。

スマイルでも「バラエタルの伸びより、オーガニックなどの上級ラインが2ケタの伸び」となった。「ワインのおいしさがわかるラインであり、定着してくれる」(同社)。同社は、新世界から旧世界まで幅広くそろえた「身体にも財布にも優しいオーガニックワイン」で「No.1エージェント」を目指す。

同価格帯のストライクゾーンとなるペルノ・リカール・ジャパンの「ジェイコブス・クリーク」も今年に入り成長が加速。EPA締結を受け、オーストラリアへの注目が集まっていることも一因だ。「和食がもっと美味しくなるワイン」をコンセプトとする「わ」シリーズも寄与している。7月には、瓶内二次発酵で同ブランド初となる日本国内限定スパークリングワイン「ジェイコブス・クリーク かぎや」を数量限定で発売。日本の食や文化とコラボレートした魅力的な商品提案を進めている。

長く続く円安を受け、今年も各社で価格改定が予定されている。これからは「価格競争」より「価値提案」がキーとなりそうだ。

円安が進む中で注目されるのが、バルク輸入ワインの国内瓶詰だ。メルシャンが昨年発売したチリワイン「ラデラ・ヴェルデ」もそのひとつ。好調を受け、今年3月に1.5Lペットボトルを追加した。発売一カ月で年間目標の半分を上回る1万6,000c/sを達成し、通常品と合わせて年間で30万c/sを見込む。

日酒販も、BIB(バッグ・イン・ボックス)充填の新会社NEWSを千葉県に設立。1時間に900個のBIBを製造できるフランス製の機械を導入した。チリワインから開始し、今後は業務用専用のBIBなど幅広く展開を進める。

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