史上初! チリがトップに躍進-ワインの輸入量

2015年の輸入酒銘柄別ランキングがまとまった。ここでは財務省関税局が発表した通関数量(左表)から昨年の輸入酒業界を振り返ってみる。2014年は数量がほぼ前年並、金額は10%増だったが、15年は数量が微減、金額は5%増となった。

輸入ビールは3%減。震災需要後も、業務用市場を中心に伸長を続けてきた海外ブランドビールだが、昨年はクラフトビールをはじめ、季節限定・地域限定ビールなど、国産も含めたビールカテゴリーで、消費者の選択の幅が大きく拡大。嗜好の多様化を受け、さらに市場が細分化された。高付加価値商品も市場に浸透したが、今後はなにかひとつのブランドが突出するということは難しいのかもしれない。麦芽発泡系新ジャンルも2年連続のマイナスとなった。

国別にみると、15%増と伸び率トップで、2位に大きな差をつけたのがメキシコ。前年、最需要期の欠品で機会喪失した反動も一因としてありそうだ。一方、前年は4割増と、上位国最大の伸び幅を記録したオランダは、33%減。2012年トップだった韓国も、最盛期の半分以下にまで数を落としている。

ワインでは、チリがフランスの輸入量を抜き、史上初のトップに躍り出た。関税低減による価格優位性だけでなく、品質・数量ともに安定したチリワインは、今や、スーパーの店頭に欠かせない存在だ。

日本瓶詰も増える中、バルクでも、チリは14%増でトップ。バルクのすべてがチリワインとして販売されるわけではないが、単純に、ボトル+大容量+バルクの総量で計算すると、日本市場に出回るワインのほぼ4本に1本がチリ産になる。

同じく、EPA締結により関税が即時撤廃となったオーストラリアのバルクワインは、4.7倍の大幅増。ボトルワインも2%増と、上位国の多くが減少となる中、数少ない「勝ち組」となった。チリ、オーストラリア以外の上位国でほかに前年を上回ったのは、イタリアとニュージーランドのみ。11位ポルトガル以下、ブルガリア、ハンガリー、オーストリアも数を落とした。

環太平洋連携協定(TPP)審議の進行次第では、年内にもアメリカやニュージーランドに追い風が吹く。今年2ケタ減となったアルゼンチン、南アフリカにとっては、さらに厳しい状況となりそうだ。

ここ数年好調だったスパークリングワインは2%増にとどまった。ボトルワインが低調だったフランスも、シャンパーニュの伸長を受けて前年を上回る5%増となり、CIF単価も上昇した。伸び率でみると、スティルワイン同様に価格優位性の高いチリが25%増でトップ。ほかに、スペイン、オーストラリア、メキシコが伸長した。

BIBを含む大容量ワインは2%増、輸入ワインの国内瓶詰が増える中、バルクワインは4年連続で2ケタ増となった。

国産から火がついたウイスキーブームも、昨年は輸入ウイスキーへ波及。ボトルウイスキーは24%の大幅増となったほか、国産ウイスキーに使用される「ウイスキー原酒」も2割増。バーボンは5%減だった。

ウイスキーの好調を受け、ハードリカーは全体に不調。前年2ケタ減となったラムは4%増に転じたが、ホワイトスピリッツのジン、ウォッカは前年割れ。また、韓国産RTsの急拡大で市場を大きく広げたリキュールも2ケタ減となった。