中小蔵元の設備投資助ける中小企業庁の補助金「もの補助」で採択多数

独自酵母、生酒、低アル、輸出対応など独自酒質目的と観光蔵など 

現在、日本酒は全国から中小規模の蔵元が力の入った個性的な商品群を打ち出し、地酒ブームといわれる熱気の原動力となっている。品質を追求していくと、当然、相応の最新設備が必要になる。そこで問題となるのが、資金面だが、規模の大きくない蔵元にとっては頭の痛い課題となっている。そこで、近年活用されているのが、中小企業庁の補助金「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」(通称・もの補助)だ。これは設備投資や試作品の開発などに最大3,000万円(補助率3分の2)の補助を受けられるもので、直近の平成27年度補正予算分では、食品以外のすべての産業を含めた採択として、7,729件が認定され、補助が決定している。

このうち、本紙の調べでは、酒類関係では43都道府県で157件の採択があり、日本酒の蔵元も120件以上の採択があるとみられ、活用している事例が多いことがわかった(一覧を資料面に掲載)。

採択事例からみる「これからの酒質」

独自酵母、生酒、発泡性、低アルがテーマ

観光蔵、輸出向け製品、バイヤー教育施設も

今回、採択された蔵元の「事業計画名」を眺めているだけで、いま日本酒の造りに必要なもの、そして今後、新たに打ち出そうとしている日本酒像がおぼろげに見えてきて面白い。単純に品質向上等に向けた設備の導入がメインだが、その視線の先には海外があるのも特徴的だ。

▽輸出に向けた吟醸用甑及びサーマルタンク導入、▽品質向上のための自動分析システムの導入、▽低温制御による貯蔵管理技術の開発、▽作業効率の向上、▽最新型充填機の導入、▽全自動測定システムによる製造管理、▽出荷ラインの整備、▽新型ボイラの導入、▽米の割れを防ぐ高性能洗米機導入による上級酒、▽最新モデルの冷却設備、充填ラインの導入、▽海外向け3Lバックインボックス用の日本酒試作、▽輸出用ラベラー機の導入、▽革新的商品「五割麹」の販路拡大、▽地下水を利用した酒母による開発、▽外国人向け小型清酒の小口対応可能なオリジナル生産工程の確立、▽冷凍機付タンク導入による輸出向け生酒の確立、▽低アルコール清酒に向けた原料冷却器の導入、▽新型放冷機の導入–などは、ハード面での改良が前面に出ているか。

今後狙う酒質が表れている計画として、いくつか重複したワードに「酵母」がある。▽独自酵母による新商品開発、▽花酵母を使ったスパークリング清酒の開発、▽ワイン酵母仕込み清酒におけるパストライザー導入–。

(続きは本紙で)