今秋のビール類 デフレ傾向で新ジャンル再浮上

本紙が推計したビール4社の6~8月累計のビール類出荷は、前年比1.2%減となり、最盛期の数字としては物足りないものに終わった。7月は参議院選挙があり中元ギフトが低迷し、8月は台風上陸が相次いだ。初めての「山の日」、またリオデジャネイロ・オリンピックも料飲店にはマイナスに働いたとの声が多い。加えて、デフレ傾向が顕著になり、節約志向が広がっている。缶チューハイやハイボールへの流出も止まらない。ビール各社は、12月の最需要期に向けて熾烈な戦いを強いられそうだ。

8月の小売物価統計では、ビール350ml6缶パックは、東京都区部で1,124円、前年比10円の下落だが、例えば高松は1,093円、前年比82円下落している。

デフレ傾向が進むなか、9月のビール4社のビール類出荷は、狭義のビールが4.8%減、発泡酒が0.7%増、新ジャンルが1.4%増の合計1.7%減だったとみられる。ビールは、昨年9月発売した大型新商品、サントリー「ザ・モルツ」の裏にあたりマイナスという面はあるが、発泡酒は「糖質ゼロ・プリン体ゼロ」商品が一巡して以降、実に15カ月ぶりのプラスとなった。新ジャンルも2カ月連続のプラスだ。

中長期的な酒税改定(ビール減税・新ジャンル増税)を睨んで、今年は「まずはビール、今こそビール、とにかくビール」(ビール首脳)となるはずだった。もちろん、1~9月でビールは0.9%減と、近年の落ち込み幅を縮小してきてはいる。各社からプレミアムビールの提案も相次いだ。

しかし、ここにきて高価格帯のビールが不調で、逆に発泡酒と新ジャンルがプラスに転じたことは、今秋の販売戦略に影響しそうだ。大型新商品を投入する環境ではなく、各社とも基軸ブランドへの一層のテコ入れと、ブランド派生型商品の逐次投入が続く。

また、新たな需要を喚起するハロウィンなど〈コト消費〉への取組みも一層強まるとみられる。