焼酎市場の現状 宮崎の2社好調 全体けん引

焼酎市場の現状だが、日本酒造組合中央会がまとめた単式蒸留焼酎の出荷数量は1~9月で0・1%増と微増ながらプラスで推移している。特定名称酒を中心にブームともいえる状況の清酒が同じ1~9月で1・8%減とマイナス基調であるのと比べると、悪くないとも捉えられる。ただ、県別でみると宮崎(3・9%増)と大分(0・2%増)のみプラス。特に2014年と2015年の酒造年度(7~6月)と、2年連続で本格焼酎の出荷数量で日本一となった宮崎がけん引している格好だ。それまでトップに君臨していた鹿児島だが、2018年には明治維新150年を迎え、またとないチャンスが到来する。さらに、2018年のNHK大河ドラマには「西郷どん」が決定しており、鹿児島の焼酎が全国で注目されるのは必至だ。

トップメーカー霧島酒造と雲海酒造の宮崎に本社を構える2社の業績が好調だ。霧島酒造は総工費157億円を投資し、来年2月に志比田第二工場の着工をスタートし、2018年7月の完成、同年8月からの稼働を予定している。既存4工場は現状、交代制で土日もフル稼働しているため、稼働率を低くすることが目的としている。

雲海酒造は、芋、そば、麦がほぼ同じ構成比だが、3つの原料はいずれも上昇傾向だという。トップシェアのそば焼酎は、消費者へのサンプリングおよび飲食店でのメニューアップも奏功している。芋焼酎では昨年から宮崎限定で新発売し、九州全域へとエリアを拡大した「木挽BLUE」が好調で、大手スーパーをはじめ、九州基盤で全国展開するドラッグストアやDsチェーンは宮崎での店舗の実績を受け、東京や大阪でも販売したいという声が寄せられるという。

一方で、他県のメーカーも、パックは価格競争の影響で不調という声が目立ったが、付加価値商品は着実に育っている。小正醸造の「赤猿」、「黄猿」は複数のCVsで採用され、新商品として「白猿」も発売。シリーズのラインアップを強化した。いまや自社で2番目の売上構成比までになった「赤猿」は、パックでは出さないし、条件も付けないとしている。

本坊酒造の「貴匠蔵」も瓶のみで展開しており、「一時期苦戦していたが、昨年はプラスで今期も4~5%プラスを維持」(同社)し、固定客も付いてきている様子だ。

また、三和酒類は引き続き「いいちこ」の200mlカップが好調で、20度、25度、12度の3アイテムで1万石を突破した。先行発売した20度をはじめ、後発の12度と25度も順調に伸びている。想定していたカニバリもゼロではないが、3アイテムとも前年を超える推移だという。

冒頭述べたように、2018年には明治維新150年を迎える。行政も力を入れており、鹿児島、山口、高知、佐賀の各県は、幕末維新期の歴史をテーマとした広域観光プロジェクト「平成の薩長土肥連合」を立ち上げた。また、NHKの大河ドラマでは、維新三傑の西郷隆盛を主人公にした「西郷どん」の放映が決定。過去の大河ドラマの効果から、鹿児島が全国で注目されるのは間違いない。

薩摩酒造は、明治維新150周年に合わせて新商品を構想している。従来の商品も米麹の部分は国内産米だったが、鹿児島産の米を用いて2017年の製造し、2018年のはじめに発売する計画だ。

小正醸造は、鹿児島限定の「薩摩維新」が好調で、県外から買って帰る人も多いという。「再来年の明治維新150周年に絡めた提案も行っていく」(同社)としている。