今年のビール類 台風・業務用不振などで2 %減

◎クラフトビールなど新しい胎動も

今年のビール類総市場は前年比98%程度で着地しそうだ。各社、狭義のビールの中長期的な減税を睨んで、ビールに注力した年だったが、ビールは99%程度と微減に終わるとみられる。一方、発泡酒は94%程度だが、新ジャンルはほぼ前年並みを維持するとみられる。東日本の遅い梅雨明け・夏場の天候不順・9月の台風・長引く業務用の不振が、樽生と瓶ビールに影響した1年だった。加えて、下半期はデフレ傾向が顕著になったこともあり、新ジャンルが浮上することとなった。また、缶チューハイ(RTD)市場は2ケタ増になり、ビール類からの消費流出が加速した年でもあった。

上半期、大手4社の販売ベースの推移は、1月こそ、昨年末の政策在庫の反動で90.5%と低調なスタートだったものの、2月はうるう年で営業日が1日多いなどで100.1%、3月もビール大型商材「アサヒ ザ・ドリーム」の登場などで100.4%、4月もカレンダーの影響で黄金週間の分を先取りして103.5%と3カ月連続でプラスだった。しかし5月はその反動が出て93.6%、6月はギフトの伸び悩みなどで99.6%となり、1~6月累計では98.4%となっていた。

7月は、関東甲信越地区の梅雨明けが、昨年より14日遅い7月28日だったことが大きく響いて95.6%。8月は猛暑に期待をつないで、かつ営業日が前年比1日多いこともあり、101.4%とプラスには転じた。しかし、下旬に台風が相次いで上陸し、盛り上がりに欠けた。9月は昨年の大型新商品「サントリー ザ・モルツ」の裏になり、マイナスは織り込んでいたが、平年より気温が高く、またシルバーウイークが飛び石になったこともあり、業務用のマイナスが抑えられて、予想よりは上振れして98.3%。10月は、各社ハロウィンの〈コト消費〉への販促を強めたが、下旬に「天候以外にはないが原因不明の失速」(メーカー)で、94.2%。11月が営業日が1日多くて101.0%と3カ月ぶりに水面上に顔を出した。最盛期である6~8月の3カ月累計では、前年比98.8%とみられ、昨年の99.8%から1ポイント下回る結果となった。

全体の基調としては「業務用の不振」を挙げる声が多い。樽生ビールは1~9月までで98.1%だったが、1~10月で97.5%にまで落ち込んだ。特に業務用の樽・瓶で大きなシェアを持つアサヒ「スーパードライ」に影響が大きかった。そのうえ、下半期はデフレ傾向が顕著になり、消費者の価格志向が強まった。

各社の施策は、ビール減税も視野に入れつつ、ビールへの注力が顕著となった年だった。キリンは“地元の誇りを美味しさに変えて”を掲げて「47都道府県の一番搾り」に組織の力を集中した。結果、「一番搾り」計は、1~6月100.9%、1~9月102.5%と上昇基調に乗せている。サッポロは「ビール強化元年」を掲げ、主力の「ヱビス」「黒ラベル」に集中した。1~11月で「ヱビス」計が101.7%、「黒ラベル」計が102.7%と好調だ。加えて、アサヒグループホールディングスによるヨーロッパビール大手の買収、キリンによるニューヨークのブルックリン・ブルワリーへの出資に示されるように、国内の市場飽和を、海外やクラフトビール事業に突破する方向が鮮明になった年でもあった。