[新春インタビュー]食品安全委員会・事務局長 姫田尚氏-非定型の行方に注目

「添加物や香料など非常に微量な物質をどう評価するかが課題だ」–。過酢酸のように、諸外国では食肉処理過程で殺菌材として使用するものの、最終製品にほとんど残らない物質やごく微量の香料などを添加物として扱っていない場合がある。日本では、こうした加工助剤と香料も食品衛生法上、添加物として位置付けられ、リスク評価と基準値の設定が求められる。こうした加工助剤などをめぐる見解の違いが今後、貿易相手国との摩擦の原因となることも予想される。「香料、器具や容器から溶出するもの、ひ素などの汚染物質など極めて微量に食品中に含まれる物質についての評価方法を確立することが喫緊の課題といえる。専門の『室』を立ち上げて検討を推進する」。多大なコストや時間がかかる動物実験から、試験管やコンピュータを使った実験・解析の可能性を探る方針だ。BsE対策見直しに関するリスク評価(食品健康影響評価)に一定のめどがつくなか、非定型BsE問題を含め、食品安全委員会が今後取り組むべき課題について姫田尚事務局長に聞いた。

この3年余り、食品安全委員会は、厚労省が進めるBsE対策見直しについて、リスク評価に取り組んできた。3月までには一連の作業も一通り終わり、非定型BsE問題という最後の大きな課題が残されるだけとなる。

飼料規制の有効性が確認されたなか、日本においても「BsEは終わった問題」となりつつある。BsE関連の評価はこれまで長い時間がかかるのが常識となっていた。だが、牛由来肉骨粉の肥料と魚飼料への転用については短時間で評価が終わるなど、周囲の関係者らを驚かせた。

「(BsEの)有病率自体が高かった時といまとではリスクの程度が違う。世界的に見てもBsE感染リスクが大幅に下がっているのに高リスクを前提としたリスク評価でいいのか、という疑問が当然に生じる。リスクの程度に応じた評価が必要となってくる。この場合、食品としての科学的評価だけでなく、牛から牛への感染リスクが上がっていない、ということが担保されているかどうかがが重要となる。家畜疾病の専門家集団である(食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会)プリオン病小委員会で、牛由来肉骨粉の肥料・飼料への転用が、牛から牛への感染リスクに影響を与えない、と評価した結果については積極的に活用すべき、と考えた。 ましてや、肥料や飼料のように、作物や魚を介した場合の食品リスクとなると、種の壁によりさらに低くなり今回短期での評価が可能となった」