[新春インタビュー]農水省畜産部長・原田英男氏-畜産クラスターで自立型経営

「畜産業を中心に地域経済の再生を図る」–。畜産経営を支援するための「畜産クラスター構築事業」。地域の潜在能力を畜産経営の維持・発展に生かせないか、その可能性を探る試みが各地で展開されている。今後は補助対象の間口を広げるなど事業の使い勝手をよくすることで、「畜産経営の継続化」を促していきたい考えだ。一方、牛肉輸出については「新規市場の開拓から、安定したマーケットづくりへと、次の段階に向け戦略を立て直す必要性に迫られている」。原田英男畜産部長に畜産政策の狙いについて聞いた。

さまざまな分野で国際競争が激しさを増している中で、畜産・酪農の世界も例外ではない。こうしたなか、畜産・酪農の競争力の強化策として、14年度(平成26年度)からスタートした畜産クラスターは、高収益型畜産体制の確立を目指す。稲作農家や飼料メーカー、獣医師など、多くの関係者が参画し、地域ぐるみで畜産経営を支援するのが同事業の基本的な考え方だ。

具体的な活動としては、ブランドづくりや生産性向上など、経営学的視点から見れば、ごく当然といえるような内容が目につく。だが、畜産経営者のすべてが、必要とされるノウハウを日頃の経営に万遍なく取り入れているかといえば、そうとは限らない。

「日本の農村社会の形態を考えたとき、規模として個人が回せるものではなくなっている。経営的に新たな取り組みをしようとしても1戸の農家だけでは、難しい経営環境となっている。いち農家だけでは、能力にしても、資源にしても限られているからだ。新たな展開を望んでいる農家を孤立させないために、畜産クラスターは必要だ。畜産経営を盛り上げるためには農家とともに、周りもいっしょに考えていく必要がある。そうした試みは、畜産事業を中心に地域経済を回していく可能性にもつながる。こうした外部支援により、1つの農家であっても組織的に動けるようになる」

「たい肥の活用やエサ米利用など耕畜連携がうまくいけば、水田地帯が『畜産適地』と変貌することもありうることだ。実際に今年度行ったクラスター事業22件の中にも、耕地との連携でうまくいった山形県のケースが好例といえる」

供給過多で米価が下がる中、需要拡大策として飼料用米への転用で活路を見出そうとする動きが出始めている。「その意味では、本来であれば水田地帯といえる『非畜産地帯』の方が、生産活動に対する危機感が強く、クラスター事業を積極的に取り入れる傾向にある」。