【15年輸入牛肉需給総括】昨年チルドはコスト高、冷凍在庫消化に苦慮

昨年の輸入牛肉市場は、一昨年に引続き為替や現地相場高などコスト高に推移したため、輸入ならではの価格訴求力を出しく難く、とくにスーパーなどの小売りではより安価な豚肉・鶏肉に需要がシフトした。また外食業界では、焼肉店やステーキハウスなど一部業態が好調に推移したものの、ファストフードやファミリーレストランなどディスカウンターでは原料高でメニュー見直しを余儀なくされるなど、マーケット全体としては伸び悩んだ一年となった。

15年1~11月の牛肉輸入量は45万7千tと前年同期比で6.7%減少した。このうちテーブルミート主体のチルドが18万6千tで同7.5%減少、主に加工原料向けのフローズンが27万1千tで同4.4%減にとどまった。12月含めた年間では前年比5.0%減の49万3千t(うちチルド20万3千t・フローズン29万t)と5年ぶりに50万tを下回るとみられる。また、牛内臓も1~11月での累計では5.6万t(同1.6%減)とこちらもコスト高を受けて輸入量は伸び止んでいる。

11月までの牛肉輸入を国別でみると、豪州が26万7千t(同2.4%増加)、米国は15万2千t(14.4%減少)、ニュージーランド(以下NZ)1万6千t(30.7%減)、メキシコ1万1千t(21.2%増)、カナダ923t(31.1%減)と、主要国では豪州を除いて昨対割れとなった。とくに米国は干ばつで繁殖雌牛を中心にとう汰が進んだ影響で牛の飼養頭数が低水準となり、牛肉生産量そのものが少なく、一年通じて現地相場が高値に推移したことが影響したとみられる。さらにフローズンに関しては、チャックアイロールやチャックリブ、ボンレスショートリブといった主要部位が軒並み高値に推移するなか、一昨年秋にかけて現地高騰したショートプレートなどバラ関係の国内在庫が高水準にあったため、在庫消化のため各社が調達を抑えたことが輸入減少につながった要因だ。実際に11月までの米国産バラ肉の輸入量は10万9千tで前年同期比7.4%下回っている。豪州産も生体価格の高騰など厳しいコスト環境だったものの、北米産が高値相場で推移した結果、その代替として輸入量が増えた格好だ。昨年1月に発効した日豪EPAによる関税削減の影響も大きい。

国内卸売相場もコスト高の影響を受けて高値で推移した。チルドビーフでは、豪州産チルドの7割を占めるショートグレイン(フルセット)は1~11月の平均で1㎏当たり1,218円(税抜き、以下同)となり、前年同期比で15.5%高値となっている。同様にグラスフェッド(同)も1,134円で16.3%高となった。米国産チャックアイロールは1,451円で同25.3%高と2~3割高く、焼肉商材のチャックリブは1,949円で同4.4%高と、エンドユーザーも使い難い価格水準となった。

チルドと対照的にフローズンの国内相場も概ね高値で推移したが、ショートプレートは上述の影響から、1月こそ980円を付けたものの、8月には580円と大幅に値下がりするなど下げ一辺倒の傾向が続いている。秋から年末にかけてやや反発したものの、1~11月の累計平均では703円と前年同期比15.9%安値となっている。

ショートプレートは、一昨年、中国(香港経由)の需要増加で現地相場が高騰したうえに、現地の出荷飼養頭数も少なかったため、大口需要家など長期契約でコスト高の在庫を手当てせざるを得なかった。ところが、昨年は中国当局の規制監視が強化されたことで米国での余剰感が強まり、現地相場が値下がりした。一方、すでに日本では上述の影響で国内在庫が大幅に増加、農畜産業振興機構の牛肉需給表によると、6月末に最大の13.5万t(前年同月比36.6%増)に達し、流通各社は高値で調達した在庫の消化に非常に苦慮する一年となった。