「今後の牛肉輸出拡大のための活動報告会2016」-日本畜産物輸出促進協議会①

日本畜産物輸出促進協議会(事務局、中央畜産会)は18日午後、東京・千代田区のTKPガーデンシティPREMIUM秋葉原で15年度輸出に取り組む事業者向け対策事業「今後の牛肉輸出拡大のための活動報告会2016」を開いた(同日午前の「日本畜産物の輸出戦略と今後の展開」は既報)。同報告会では、15年に大きく伸びた牛肉輸出の現状について、EU、米国、アジア、ムスリムの各市場へのプロモーション活動などが報告された。

冒頭、同協議会の南波利昭事務局長が「15年の牛肉輸出額は110億円となり、中間目標水準を1年前倒しで達成したといえるが、まだ半分弱であり、道半ばの通過点といえる。今年以降も加速度的に取組みを進めていかなければならない」とあいさつ。「1月のシンガポールでのトップセールスなど、牛肉輸出はオールジャパンでの取組みのシンボルになったと感じている。ただし、我々はフェアを開いて満足するわけにはいかない。輸出金額の増加、大きな目標の実現をしていかなければならない」と語った。

報告会では、同事務局と伊藤ハム食肉事業本部国内食肉本部輸出推進部の山川貴之部長が「EUにおけるオール・ジャパンプロモーションの歩みと今後の市場の可能性」、同事務局とTrex Corporationのマーク・メルニック代表取締役が「アメリカにおける和牛市場の拡大状況と今後の課題」について講演した。そのほか、日本ハム食肉事業本部国内食肉事業部国内ビーフ部の遠藤芳徳次長が「海外の有力事業者招へいを通じた活動の広がり」、全国農業協同組合連合会畜産総合対策部の小島勝次長が「海外レストランを拠点としたプロモーション活動」、ミートコンパニオン植村光一郎常務が「アジアへの展開と課題」、スターゼンインターナショナル海外食品開発部の井野岳司部長が「ムスリム市場への拡大に向けて~GULFOOD2016にみる和牛需要」の講演を行った。

EUでは、和牛の良さを損なわないカッティング、各部位や端材の利用を提案

EUと米国については、プロモーション活動の概要を事務局が紹介し、その後具体的な取組みが紹介された。伊藤ハムの山川部長(=写真)は、「サンキョーミートで、ハラール、ロシア以外はほぼ輸出に取組んでいる。02年に対米輸出認可、06年に対カナダ輸出認定、14年に対EU輸出認定、15年に対フィリピン・ミャンマー輸出認定を取得し、“ITO WAGYU”(伊藤和牛)として販売している」と取組みを紹介。また、「昨年、アンズコフーズを傘下とした。同社は英国ロンドンとベルギー・ブリュッセルの拠点から、台北やシンガポールに輸出を行っており、NZの生産拠点では、ハラールの牛やラムも販売している。同社のネットワークに和牛をのせていく活動を行っており、北欧、東欧、イタリア、スペインでも販売している」という。

アンズコフーズでの和牛の販売活動として、「ブロックで使う際にロスが多いなどの課題がある。ポーションコントロールカットでそのまま食材として購入できる、そのまま店頭に並べられる加工ができる工場がフランスにあり、提携して小分けした状態で届けている。また、和牛の良さを損なわないカッティングに注力してセミナーを行っている」ことを紹介した。「鼻輪を付けてはいけないなどの欧州からの要請に従って、生産者にも相応の負担をしてもらい、対価を払って欧州に輸出をしている現状がある。欧州に限らず、輸出部位がロースに偏るという課題があるが、このような事情もあって、他の部位も輸出したいと考えている。セミナーでも、どの部位をどのように使い、端材はどう活用するか細かく提案して、多様な部位の輸出促進を目的に実施している。今後は欧州のみならず、すそ野を広げて、これまでハイエンドが対象だったが、中間層も手に入る価格で、多くの人に和牛を味わってもらいたいと考えている」と語った。