乳初生牛価格、10カ月ぶりに9万円台をつけるも昨対では46%の高騰

ここ数年の枝肉・素牛相場の高騰に連動して高値推移となっている初生牛価格だが、この夏の取引価格は初生牛取引の最盛期が一巡し、出回り頭数も増えたことで反落するなど、例年通りのパターンをたどっている。とくに昨年10月以降、10万円の大台を超えて推移していた乳オスも10カ月ぶりに10万円台を割った。もっとも、乳オス・交雑種ともに前年に比べてそれぞれ5割高・3割高と高騰しており、先々の育成農家のコストにつながる懸念が強まっている状況は変わらない。また出回り頭数が減ってくる年末に向けては再び値上がりに転じる可能性もある。

農畜産業振興機構がまとめた全国25家畜市場の初生牛取引価格によると、8月の乳オス価格は前月から1.9万円値下がりして1頭当たり平均9.8万円となり、2カ月連続で値下がりした。全国平均で10万円台を割ったのは昨年10月以来となる。また交雑種も27.1万円でこちらも前月から1.5万円値を下げている。年末の素牛取引の最盛期に向けた売買が一巡したことと、出回り頭数の増加でいずれも例年通りの値下がりパターンとなっている。実際に8月の取引頭数は乳オスが1万1,045頭(前年同月比7.7%増)と3カ月連続で増加、交雑種も1万4,607頭(同12.3%増)に上っている。肥育素牛相場も5~7月に一服感がみられたことも影響したとみられる。初生牛の取引頭数が多い十勝中央家畜市場でも8月の乳オスは前月から4.2万円値下がりして7.9万円(前年同月比21.4%高)となった。

ただ、あくまでピークとなる5~6月相場との比較の話で、前年同月比では乳オスが45.6%高、交雑種が28.1%高といずれも異常高値といわれた前年実績をさらに上回る結果となった。過去5年平均比でも乳オスは2.4倍、交雑種も1.9倍となっており、この5年間での急激な高騰ぶりがうかがえる。とくに、乳オスは性判別精液の利用で分娩頭数も少ない傾向にあるため、需給はひっ迫している状況だ。このため、9月以降は大きく値を下げることはないとの見方が強く、年末にかけて再び上昇局面に入る可能性もある。上述の十勝中央市場でも9月2日の取引は6.0万円だったが、6日は6.8万円、9日には10.0万円と徐々に値を上げてきている。