【日本ハム】ウシ由来靭帯デバイス開発のCTBE社に出資、膝前十字靭帯断裂などのスポーツ医療の課題解決を支援
日本ハムはこのほど、ウシの腱を原料にした膝前十字靭帯再建用「組織再生型靭帯デバイス」の開発を進めるスタートアップCoreTissue BioEngineering(株)(横浜市鶴見区、以下、CTBE社)と出資契約を締結した、と発表した。
畜産資源の高度活用によるスポーツ医療領域の課題解決を支援するとともに、ヘルスケア・医療領域の発展に貢献していく。
膝前十字靭帯断裂は、スポーツ中に膝が強くねじれることで生じる靭帯の損傷。受傷時には激しい痛みや腫れを伴う。
断裂した靭帯は自然治癒しないため、多くの場合は外科的再建手術が必要となる。手術では、患者自身の別部位の腱を採取して損傷部を再建する方法が一般的だが、健常な腱を取り出すことによる弊害や、採取可能な腱に限りがあるため、人工靭帯再建用デバイスの開発が国内外で求められている。
CTBE社は2016年に早稲田大学から生まれた医療機器スタートアップで、同大学理工学術院の岩﨑清隆氏が開発した「組織再生型靭帯デバイス」の製品化に取り組んでいる。
このデバイスは、厚みのある組織にも適用できる脱細胞化技術と、強度が保持される凍結乾燥・滅菌技術を応用した脱細胞化組織。手術後、埋め込まれたデバイスを足場として患者自身の細胞が入り込み、徐々に自己組織が形成され、最終的に靭帯の再生が期待される。開発中のデバイスは、企業治験として昨年12月に初めて患者治療に使用され、現在は安全性を評価するパイロット試験を継続している。
今回CTBE社は、日本ハムを含む複数の機関から新たに6億円の資金調達を実施した。米国でのビジネス展開を見据え、同国での治験準備を進めるとともに、商用生産に向けた大量生産技術の導入を図り、事業を加速させていく計画だ。
日本ハムは、「食とスポーツ」を通じて“おいしさの感動”と“健康の喜び”を提供することを目指し、プロスポーツチームの経営やボールパークの運営などを展開してきた。25年度に新たなR&D戦略「Proteinnovation(プロテイノベーション)」を策定し、ヘルスケア・医療領域およびアップサイクル領域を新規事業として重点的に推進する方針を掲げている。CTBE社の取組みは、ウシ由来資源を医療機器に活用するという新たな価値と役割をもたらし、アスリートやスポーツ愛好家のパフォーマンス向上や健康維持に寄与するものと考えている。
〈畜産日報 2025年11月17日付〉







