春目前となり清涼飲料の各社の新商品や大型リニューアル品が出揃ってきた。マーケティング活動も今月から活発化しており、売り場は賑やかになってきた。清涼飲料は昔から〝千三つ〟と呼ばれるほど大ヒット商品を生み出すのは難しい市場だが、生活者のニーズの変化が激しく、多様化している現代ではなおさらだ。その中で飲料メーカーは業績を伸ばし、昨年の飲料市場は2年連続で過去最高の販売を記録している。これはヒット商品を生み出すことを目的に、やみくもに商品を投入せず、基盤ブランドの信頼感を背景に、生活者のインサイト(深層心理)を捉えた商品やサービスで顧客の問題解決を進めたため。健康軸の商品を中心に今年はさらに加速しそうだ。

今年の発表会で印象深かったのは、サントリー食品インターナショナルの小郷三朗社長が2月に行った決算説明会で、自社の存在意義に触れ、「お客様が求める新たな価値を提供し続けることで世界第3極の地位の確立を目指す」と発表したことだ。同社は従来の清涼飲料に求められていた砂糖、炭酸、爽快感の価値ではなく、ナチュラル&ヘルシー、避糖化、豊かな味わいを手軽に-といった顧客ニーズに向き合い、同社が培ってきた技術力やノウハウを活かして活動するとした。

持続的な成長を実現するための商品開発のキーワードは、ここにあるのだろう。「お客様が求める新たな価値」を見出すことは、変化の激しい顧客のインサイトを捉え、本人も気づいていないような課題を自社の技術力やマーケティング力で解決することにある。

現在の国内飲料市場では、「健康」がキーワードとなっており、各社とも健康軸の新製品を、自社の基盤ブランドの傘の下で投入している。トクホや機能性表示食品はもちろん、水やお茶、野菜飲料など、自然で健康的な製品のラインアップが充実してきた。顧客のニーズに応えた活動だ。

しかし、数ある商品の中から選ばれ、飲用を習慣化してもらえる商品は、目に見えない顧客の問題を解決できたものだけだ。最近の例を挙げると、330mlのキャップ付き紙パック製品がある。同市場でシェアトップのキリン・トロピカーナの「トロピカーナ エッセンシャルズ」は昨年、前年比70%増の550万箱を販売した。不足栄養素をおいしく補える果汁飲料として人気を集めている。また、同容器を使用したカゴメの「野菜生活100」のスムージー(330ml紙)も同280%増だった。

両製品とも中身の品質の高さともに、キャップ付きの容器がヒットの要因となっている。「果汁飲料でおいしく栄養素を摂りたい」、「野菜飲料を常温でもおいしく飲みたい」というニーズとともに、「一度に飲みきれない」という隠れた課題を同時に解決している。果汁飲料や野菜飲料の小容量サイズを1日に何度かに分けて飲むということは、ユーザーへのアンケート調査ではなかなか出てこない。

大手メーカーの商品開発者に話を聞くと、「お客様の課題はアンケートではわからないことが多い。ツイッターに本音が見える」や、「この頃はn‐1(統計学上での1人)の声を、会議で話し合っている」、「書店には、女性が雑誌のどのページを開いているかを見に行く」など、アンケートの調査結果を待つのではなく、自ら顧客の関心や課題を探すケースが多いという。

自社の存在意義を見つめ直して強みを活かしながら、顧客の問題を解決して持続的な成長を目指す。現在ヒットしている商品は、存在意義を実現し、社会的な問題を解決する事業活動のCsV(Creating Shared Value=共通価値の創造)の考え方に近いものだ。収益構造改革が進み、商品数は減少する傾向にあるが、顧客の課題を解決するようなヒット商品は、健康領域を中心に今後も数多く誕生するだろう。