上質を届け続けるロングセラーブランド―ネスレ日本「ネスカフェ ゴールドブレンド」50周年

“製品”から“サービス”へ、“家庭内”から“家庭外”へ
ネスレ日本の「ネスカフェ ゴールドブレンド」が発売50周年を迎えた。

同ブランドのCMから“上質”という言葉が生まれたことからもわかるように、この50年はコーヒーの質を高めてきた歴史でもある。また、この約10年間、「ネスカフェ」はコーヒーマシンを活用して顕在化していない社会の問題解決にも取り組み、生活者のクオリティオブライフを向上することにも注力してきた。

最近では、多様な場所で「ネスカフェ」が飲める取り組みを行っており、駅のホームなどで提供する「ネスカフェ スタンド」や、幼稚園・保育園の先生と保護者のコミュニケーションを活性化する集いの場として「ネスカフェ パパママカフェ」を展開している。また、IoT対応コーヒーマシンの活用により、離れた場所で暮らす家族をそっと見守れるサービスも提供し、好評を得ている。もはやコーヒービジネスにとどまらない「ネスカフェ」の取り組みと、「同 ゴールドブレンド」の歴史について、ネスレ日本常務執行役員の深谷龍彦飲料事業本部長に聞いた。

ネスレ日本 常務執行役員飲料事業本部長 深谷龍彦氏

ネスレ日本 常務執行役員飲料事業本部長 深谷龍彦氏

――「ネスカフェ ゴールドブレンド」が50周年を迎えました。日本の生活者にさまざまな価値を提供されてきた同ブランドの50年について教えて下さい

「ネスカフェ」ブランドはおいしいコーヒーをお客様へご提供するという活動にずっと取り組んできた。その中で、「ネスカフェ ゴールドブレンド」は、日本で初めてフリーズドライ(凍結乾燥)製法を67年に導入した商品であり、品質向上に向けた改良を続けている。当社は「ネスカフェ エクセラ」において、家族の朝食シーンをCMで描き、外国の街並みを映し出して海外やコーヒーへの憧れを醸成していった。一方、「同 ゴールドブレンド」は、どちらかというと食後や昼下がりなどのシーンで、一人の時間を描き出した。いわば、日本発のジャパンクオリティのイメージを、70年から開始した「違いがわかる男」シリーズのCMにより、著名な文化人を起用しながら作り上げ、品質の高さやおいしさだけではなく、コーヒーの情緒的な価値を根付かせた。最近では、コーヒーマシンの「ネスカフェ バリスタ」を09年に投入し(10年から全国展開)、家庭内消費にとどまらず、オフィス需要を開拓する「ネスカフェ アンバサダー」の募集を12年に開始している。さらに、13年に商品の品質を高め、レギュラーソリュブルコーヒーに進化させた。おいしいコーヒーをお届けするという根幹は守りつつ、お客様にモノだけでなくコトを提供することを意識して取り組んできた。それは、家庭向けの商品提供だけでは満足していただけるような時代ではなく、品質のベンチマークが家庭外に移ってきたと考えたためだ。カフェなど家庭外での体験をいかに家庭内に持ち込めるかが大切になっている。

――生活者を取り巻く環境は変化し、1~2人世帯も増加していますが

影響は共働き世帯数の急増もあってお客様が家庭で過ごす時間が減っており、家庭内で飲まれていたインスタントコーヒー、レギュラーコーヒー、ペットボトルコーヒーの大サイズなどは影響を受けている。

1~2人世帯数も増えているので、容量の見直しを行い大容量の瓶商品をダウンサイズしたほか、スティック商品の品揃えを増やした。

ただ、コーヒーを1杯分ずつ作るためにお湯を沸かすのは面倒でもある。そこで我々は「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」や「ネスカフェ ドルチェ グスト」のようなコーヒーマシンを提案することで、お湯を沸かさずに1杯ずつ淹れたてのコーヒーを作れる簡便性を訴求している。

これらのマシンがあるからこそ、他の食品メーカーとは異なる価値を提供することができ、我々はIoTを語ることができる企業になっている。最終的にEコマースと関連づけるという意味でも、我々にとって根幹の取り組みとつながる製品だ。

――家庭外での活動やマシンの伸長は順調ですか

「ネスカフェ アンバサダー」は予定通りに拡大し、すでに約40万カ所で展開しているが、日本には600万以上のオフィスがあるのでまだ伸ばす余地があると考えている。コーヒーマシンも650万台超で順調に出荷台数を伸ばしている。今秋からは「同 バリスタ」の50周年モデルや「同 ドルチェ グスト」の新モデルを投入し、取り組みを強化しているところだ。

また、外食店・喫茶店などで展開する「ネスカフェ サテライト」や飲食店以外で展開する「カフェ・イン・ショップ」も順調に店舗が増えている(計4200カ所超)。さらに、阪急・阪神沿線の22駅で展開中の「ネスカフェ スタンド」は、いよいよ関東にも進出し東急沿線2駅でもオープンした。これらはマシンがあるからこその戦略といえるだろう。

――これらの取り組みがここまで成功したポイントは何だと思われますか。どんな工夫をされましたか

我々は結局、マシンというモノを投入するだけではなく、いろいろなものとつなげていくことが一番の勝機だと考えていた。マシンにとどまらず、その周辺への投資を積極的に行うことで、お客様の問題を解決するサービスを作ることができたというのが一番の価値だと考えている。

――マシンシステムの広がりは驚異的ですね

今の若い人たちは、瓶からスプーンですくってお湯を入れてコーヒーを作るという体験や、それを目にすることは少なくなってきたのではないかと感じている。コーヒーは、ボタンを押したらマシンから出てくるものと思ってもらえれば、我々にとってこんなに心強いことはない。

そして、「ネスカフェ アンバサダー」で顧客接点を広げた効果も期待している。たとえば初めてのコーヒー体験が「同 アンバサダー」導入のオフィスなら、結婚などを機に自宅でコーヒーを飲もうと思った際に、「ネスカフェ」のマシンを選んでいただけるのではないか。

「ネスカフェ ゴールドブレンド」50年の変遷

「ネスカフェ ゴールドブレンド」50年の変遷

〈コーヒーマシン導入でモノからコトへ 人と人がつながる楽しさ提供〉

――今年も新たなサービスに取り組まれています

今秋から開始した「ネスカフェ コネクト」は、IoTとAI技術を活用したサービスで、コーヒーマシンと専用タブレットのレンタルを月額500円とコーヒー代のみで提供している。タブレット画面に話しかけるだけでコーヒーを抽出でき、LINEでメッセージが送ることができる。また、コーヒーを飲むと登録者にスタンプが送信されるので見守りサービスにも役立てられる。長野県の小谷村と協業した実証実験では利用者から非常に評判が良かった。導入が進めば、自治体などと一人ひとりの生活者をつなぐことが可能になり、地域の問題解決に貢献できると考えている。

将来的には、マシンに直接話しかけて利用できるようにしていきたい。

――また、「同 ゴールドブレンド」は9月から中味を改良するとともに、キャンペーンも展開されました

10~20年のスパンで考えるとお客様の求める嗜好は変わってきているので、常においしいコーヒーを提供するため品質は随時改良していく。「同 バリスタ」が浸透してきたので、スプーンで作る時のおいしさと、マシンで淹れる時のおいしさの両方を追い求めている。インスタントコーヒー市場全体が苦戦している中、「同ゴールドブレンド」は金額ベースでプラス成長となっている。そういう意味では、お客様の中で一目置いてもらえているブランドであり続けていると考えている。

なお、発売50周年を機に、“ありがとう”をテーマにした「THANKS COFFEE」プロジェクトを展開したところ、Twitter を活用したキャンペーンの参加総数は100万回以上となった。我々からお客様に感謝の気持ちをお伝えしたいという思いに加え、お客様の間でも“ありがとう”という気持ちが広がっていけば嬉しいと考えて取り組んだ。

――「キットカット」や「ウェルネスアンバサダー」など、貴社は「ネスカフェ」以外でも新しい価値をどんどん提供されていますね

そういう意味では、すごくいい会社だと思う。それぞれのチームが切磋琢磨して取り組んでおり、「キットカット」や「ウェルネス アンバサダー」が新しいことに挑戦すると「ネスカフェ」チームも負けていられないと思うので、新しい問題解決に向けて挑戦できている。

――今後の取り組みは

2010年から現在まで100万人以上の人口が減っている。今後さらに人口が減っていく状況で、現在成功しているビジネスモデルも、立ち止まっていては、次の2020年や2030年には通用しないだろう。だからこそ新しい価値をさらに作っていく必要がある。

そのひとつがアウトオブホーム、つまり家庭外でのサービスを提供していくことであり、気持ちとしては今までの3~5倍のスピードで取り組まないと継続成長は見込めないと感じている。ようやくいろいろな種が見えてきたので育成している段階だ。最も成長の早そうなものや大きな花になりそうなものを見つけ出し、そこに集中的に投資をすることを考えないとおそらく成長は難しい。コアのビジネスを守りながら、もっと家庭外の活動を強化したい。

――将来に向けた意気込みをお願いします

私が「同 バリスタ」の開発に携わっていた約10年前に、“インスタントコーヒーって瓶からスプーンですくって作っていたの?”と言われる時代が来るといいなと思っていた。将来、日本の方々がコーヒーをマシンで作るのが当たり前だという時代を、「ネスカフェ ゴールドブレンド」と「同 バリスタ」で作り上げたいというのが私の夢である。お客様の問題解決を図りながら取り組みを推進していきたい。

〈食品産業新聞2017年12月11日付より〉