〈新春インタビュー2018〉味の素AGF社代表取締役社長・品田英明氏 安心品質ナンバーワンを追求

〈社員もお客様も幸せになれる会社へ〉
味の素AGF社は、昨年7月から新社名と新組織体制となり、真の第二の創業をスタートした。「安心品質ナンバーワンの追求」をテーマに、「高品質で高収益なスペシャリティ企業」、そして「社員もお客様も幸せになれる会社の実現」を目指している。製品は40周年を迎えた「ブレンディ」などブランド横断で日本人の味覚に合った“ジャパニーズコーヒー(JapaNeeds Coffee)”を追求し、感動のおいしさの提供や生活者に愛されるブランドの育成に取り組み、成果が表れてきている。

――昨年は真の第二の創業として、新体制でスタートされました

昨年スタートした中期経営計画の最大テーマは、「安心品質ナンバーワンの追求」である。それに向けた新体制として事業はバリューチェーン全体で総合力を発揮することを目指した。バリューチェーンをつなぐため、これまで複数の本部で機能分担していたが事業本部に一本化している。

――高品質で高収益なスペシャリティ企業を目指されています。そのねらいは

順序があって、高収益になるためには、高品質でなければならない。さらに、他社と同じような技術やブランドイメージではなく、スペシャリティな独自価値が大変重要だ。おいしさもお客様からのご指摘も含めて、全てにおいて高品質を目指している。それを「安心品質ナンバーワン」と言っているが、着実に前進していると感じる。お客様からのご指摘については、2020年に半減させることを目標にしているが、現在のところ2ケタのペースで減少している。全社で優先事項にし、それに投資を行なっていることもあり商品の使い勝手などのお問い合わせは相当改善が進んだ。

もうひとつは、人材の育成だ。事業は人材が全てなので、役員も含めたラインマネージャーの教育プログラムに真っ先に取り組んだ。皆で学んで意識を高め合わなければ、中期経営計画の目標は実現できない。

〈確かな成長を実感できる年に〉
――「ブレンディ」ブランドが40周年となりました

おかげさまで、皆様に親しんでいただけるブランドになってきたと捉えている。中期経営計画では、心の健康を重視しており、嗜好飲料が提供する“3R”の実現を目指している。ひとつめはRest の休息。2つめはRelaxation のやすらぎ。そしてRefreshmentの気分一新である。それを象徴するブランドが「ブレンディ」であり、“3R”を通じて人生のパートナーになっていけたらと考えている。

40周年で取り組んだことは、対外的にはブレンディ商品での統合広告を実施し、社内では全社員にブランドの勉強会を実施した。どんな歴史の積み重ねでお客様に愛されてきたのかを学び直した。持続的成長には、バリューチェーン全体で各自の意識を高めて取り組む必要があるためだ。

そして、大事なのは次のチャレンジだ。世の中にイノベーションを提供し、生活者に新たな価値を提供できる提案を行いたい。

――「社員もお客様も幸せになれる会社の実現」を掲げられています

これは、私の経営方針の根本である。会社は何のためにあるのかという問いかけに、社員全員が答えられるように考えたものであり、社員が共通価値として持てるように着任以来、このフレーズを使っている。

会社は、まず社員が幸せでないといけない。そして、もちろん社員だけでなく、お客様が幸せにならないといけない。そのバランスが重要だ。「安心品質ナンバーワンの追求」においても、健康経営を大事な戦略のひとつに位置付けている。社員も心と身体が健康であってほしいので良い職場を作っていく。お互いが気持ちよく働ける、または相互に成長し合えるような仲間がいること、そして環境や労働条件も重要だろう。人間関係も含めた職場環境は、健康経営でも事業を進めるにおいても大切だ。

中期経営計画は財務の数値目標だけでなく、従業員の働きがい、働き方改革など非財務の目標も立てた。そして、業務面も成長しないと幸せになれない。現在トップシェアのスティック製品は5年後には倍にしたいと考えている。それも含めて会社作りの一環だ。

――工場のある2地域で行う森の整備活動の「ブレンディの森」が盛んです

工場は、水を使用させていただいている。そこで、生産活動でお世話になっている水源の森を守りたいというCSRの意味合いから4年前にスタートした。だが、現在はAGFSV(Shared Value)として、当社が事業を通じていかに社会の価値と融合させるかという事業価値と社会価値を一体化させる取り組みに進化している。

17年度は活動面積を2倍に拡大したが、10年後はわれわれの生産量をまかなうくらいの面積をやろうということで5倍の面積を目指している。

――昨夏は、徳之島(鹿児島県)で国産コーヒーの生産支援にも着手されました

徳之島コーヒーの支援は、国産豆の原料で国産コーヒーを作りたい、正真正銘の「ジャパニーズコーヒー」を作りたいという事業の夢として始めた。台風の被害を非常に受ける地域なので、大量には作れない。場所を選び、風に強い苗木を植えているが、それでも約3割はうまく育たない。

11月にはビニールハウスを作り、苗木を育てる活動を公募で集まった社員も行った。実際に参加すれば、その豆をいかに大切に作って売るかというバリューチェーン全体を意識し、「安心品質ナンバーワン」への思いが強くなり、海外の生産地への思いも強くなるだろう。

――今年はどんな年にされたいですか

昨年は新たなチャレンジをする組織や、成長領域にいっそう経営資源を投資できる体制作りをしてきた。スティックなど強みのあるカテゴリーをさらに伸ばすことも含め、確かな成長を実感できる年にしたい。

〈食品産業新聞 2018年1月1日付より〉