〈ファンケル・ルピシア・P&Gなども巻き込み2025年末で利用者100万人目指す〉
ネスレ日本は10月1日から、食品メーカーながら新・宅配サービス「MACHI ECO便」を佐川急便と共同で開始する。スタートアップに向け、現在、新会社の設立を検討している。ネスレの90万人に及ぶ定期便サービス利用者や、定期的に商品を自宅に届ける事業を行うファンケルやルピシア、P&Gなども巻き込むことで、2025年末までにサービス利用者100万人を目指す。
「ECO HUB」の管理用画面

宅配ロッカーの管理用画面

〈EC事業拡大の鍵“ラスト1マイル競争”に本気〉
「MACHI ECO便」では、各地域の協力者(店舗や個人)に「ECO HUB(エコハブ)」と呼ばれるストックポイントの役割を担ってもらい、サービス利用者は「近所のECO HUBに商品を取りに行く」、もしくは「近所のECO HUBから商品を配達してもらう」のいずれかを選択する仕組み。「商品を取りに行く」場合は、商品代金から5%の割引を受けることができる。一方、ECO HUBの協力者には手数料を還元する仕組み。物流業界で大きな課題となっているラスト1マイルの問題を解決する提案だ。実証実験を通して、ECO HUBを拠点とすることで同じ地域の人と人がつながり、世代の枠をこえた地域のコミュニティ作りにもつながる手応えもあったという。
 
ネスレ日本は、「ネスカフェ アンバサダー」をプラットフォームに、Eコマース事業の拡大で“ジャパンミラクル”と呼ばれるほどの成長を遂げたが、昨年は宅配便業者のドライバー不足により配送に課題が生まれ、年率40~50%成長を続けていたEC事業の売上成長が鈍り、今年は25%程度に下方修正するなどトーンダウン。その状況の中で、自ら宅配サービスに踏み込むことで、高い成長軌道に乗せる考えだ。

「MACHI ECO便」の仕組み

「MACHI ECO便」の仕組み

26日に事業戦略説明会を開いた同社の高岡浩三社長は、「配送の問題を解決しない限り、いくら新しいサービスや新しい製品の戦略に取り組んでも売り上げや利益の成長は見込めない。Eコマースに注力している企業は、現在の配送コストに頭を抱えていると思う。CSV(共通価値の創造)の考えの下に、われわれのビジネスの戦略のひとつとして、このサプライチェーンの社会的問題の解決に取り組みたい」とした。新しい社会課題をイノベーションで解決してきたネスレ日本らしいやり方といえる。

ネスレ日本・高岡浩三社長

ネスレ日本・高岡浩三社長

同社は、成長の柱であるEコマースの売り上げが、今年中に全売上の17%となる見通しで、20年目標に定めていた20%を1年前倒しで達成する見込みだ。ただ、同社のEC事業の配送をほぼ全て担っていたヤマト運輸が、急増する再配達問題などもあっていわゆる“宅配クライシス”に直面したことで、「(ヤマト運輸が)アマゾン社に集中しなくてはならない状況ということで、当社との配送の契約が打ち切りになった。以来、急きょ佐川急便と日本郵政の協力を得て何とかやろうということで取り組んだが、当初はやはり需要に追いつかず、配送が遅れる状況でコストも急騰した」(高岡社長)という。
 
その結果、昨年の売り上げは8年続けていた前年比3%以上の成長を達成出来ず、今期の上半期実績も1.8%減で着地している。家庭内消費の減少と、それをカバーするはずのEC事業の成長が物流費高騰や物理的なキャパシティの不足により鈍化したことがマイナス成長の要因となった。高岡社長は、「7月以降は順調に推移しており、年間の売上目標1%増は絶対に達成する。それをやる前提条件は、実は商品だとか、売り方の問題ではなく、配送の問題、要するにサプライチェーンの問題が最も大きい。(新サービスの導入は)ものすごいコストダウンになる」と語る。
 
〈グローバル企業がローカルでの取り組みを強化、地域のコミュニティ作りにも〉
ただ、人手不足の日本において、中継拠点のECO HUBのなり手がいるかどうかが最大の課題になるだろう。その点について高岡社長は、「労働力人口が減る中で、若い人の労働力を見つけることは難しい。逆に健康でまだまだ働けるというシニアの方々はたくさんいらっしゃる。当社においてもアクティブシニアの採用枠を拡大しているところだ。新サービスは、歩きでも、自転車でも、将来的なビジョンではマイカーも含めて、いわゆる“ウーバー方式”でその人たちに配送していただき、それに対してちゃんとした報酬をお支払いしていくものだ。やはり高齢化社会で長寿になればなるほど経済的な不安が高まる。仕事をせずに年金などの収入で生活されている方にも賛同していただける取り組みだと思う」と話した。

「ネスレ日本が直面している『新しい現実』と『新しい問題』」

「ネスレ日本が直面している『新しい現実』と『新しい問題』」

同社の定期便サービス利用者の90万人へのアプローチも含め、ECO HUBの拠点作りは問題なさそうだ。人々が集う場になることが予想されることから、地域コミュニティとしての拠点にもなりそうだ。
 
環境問題にも対応しており、ラスト1マイルの配送荷物をできるだけひとつにまとめて佐川急便がECO HUBへ配送することで、トラックからのCO2排出量の削減につながるという。さらに、荷物を取りに来てもらうサービス利用者にはオリジナルのエコバッグを提供する。段ボール資材の使用を大幅に削減する考えだ。
 
「MACHI ECO便」のサービスは、10月1日から東京6区(港区、品川区、千代田区、中央区、新宿区、渋谷区)、大阪4区(北区、中央区、福島区、此花区)でのサービスを開始する。サービス地域は順次拡大し、また、東京都内には専用の宅配ロッカーも設置(14台)する。
 
宅配における人手不足、環境問題の解決に向けて、メーカーでありながら自らイノベーションに挑戦するネスレ日本。スピード感をもって新しい現実に対して答えを出す考えだ。