なぜ今、AGFはスティック製品に注力するのか ~コーヒー消費のスタイル変化~

「ブレンディ」スティック シリーズなど、味の素AGF社のスティック製品
味の素AGF社は、スティック製品の強化に最も力を入れている。家で簡単に作れるコーヒーといえばインスタントコーヒーが代表格だが、なぜAGFはスティックのカテゴリーに注力するのか。それは、コーヒーの飲用スタイルの変化と、現代人のライフスタイルと嗜好の変化に対応するための決断だった。

インスタントコーヒー総市場の17年度実績は、4年前と比べて杯数ベースで約2割減少するなど縮小している。これは、少子高齢化や1世帯あたりの人数が減ったこと、そして生活者の嗜好の変化が背景にあり、特に大容量のビン入り製品は、数年前までスーパーの売れ筋商品だったが、現在は売り上げが大きく落ちている状況だ。

一方、世帯人員の減少(1~2人世帯の増加)や嗜好の多様化などにより、伸長しているのが1杯分ずつ作ることのできるスティック製品である。

スティック市場で約6割のシェア(17年度)を持つ味の素AGFは、もともと1980年代に、インスタントコーヒーに砂糖とクリーミングパウダーをあらかじめ加え、それまでコーヒーに牛乳や砂糖を加えて作っていたカフェオレを1ビンで楽しめるミックスコーヒー「カフェスタ」を発売。

その後、生活者のライフスタイルの変化に合わせ、1杯分をはからなくても簡単にミックスコーヒーが楽しめるスティック状の商品を開発し、2002年2月に「『ブレンディ』スティック カフェオレ」(2003年発売)の前身である「『ブレンディ』ミックスコーヒー カフェオレ」を発売。簡便さやいつも同じ味わいであることから好評を得た。

同社は、15年にわたりスティック製品の品質向上を図ってきた。そのひとつが溶けやすいパウダーの追求で、冷たい水でもダマにならずによく溶ける。また、ココアや紅茶などコーヒー以外のフレーバーもラインアップに加えてバラエティを広げ、現在では、「『ブレンディ』スティック」を11種類、「カフェラトリー」で15種類の計26種類の味わいを提供し、スティック市場の拡大に貢献している。そして、2007年に初めて放映したテレビCMで、女優の原田知世さんが「スティック」と「ブレンディ」を連呼することで、スティックカテゴリーの認知を高めたことも大きい。

味の素AGF社は15年にわたりスティック製品の品質向上を図ってきた

味の素AGF社は15年にわたりスティック製品の品質向上を図ってきた(写真は製造ライン)

同社担当者によれば、スティック製品は女性層を中心に支持されて成長してきたという。それは、コーヒーとクリーマー、砂糖を別々に揃える必要がないことによる「省スペース」、そして、それぞれを入れる手間がない「省手間」、時間を短縮できる「省時間」という価値。ベストバランスで完成された味が一袋につまっていることにより、いつでも、開けたてのおいしさが味わえるという価値。さらに、家族それぞれが自分好みの味を選べるバラエティの価値、という3つの価値が背景にありそうだ。
 
2018年秋に行った「ブレンディ」スティックのリニューアルでは、味の素グループの独自技術を活用し、ミルクのコクが際立つ新しいクリーミングパウダーを採用。コーヒー豆は、より深煎りの焙煎豆に変更し、これまで以上にコーヒーとミルクのバランスが取れた味わいに仕上げ、品質をさらに高めた。
 
近年の有職女性の増加や、ライフスタイルの変化といった生活者の変化に合わせ、同社はスティックカテゴリーの活性化をさらに進める考えだ。