睡眠負債問題に食品企業がアプローチ、「睡眠カフェ」やセミナー、商品展開で

東京・大井町「ネスカフェ 睡眠カフェ」
日本人の睡眠時間は7.4時間(16年度)で、国際比較では非常に短いとされ、また年々減少傾向にある。最近では、睡眠負債という言葉もあるなど社会問題になっている。

3月は睡眠に関する知識普及や啓発活動が活発化し、今年は「世界睡眠デー」が3月15日に、「睡眠の日」が3月18日に設けられ、日本睡眠学会と精神・神経科学振興財団が「春の睡眠健康週間」を3月11日~25日まで実施している。また、今年は10連休となるゴールデンウィークだが、大型連休は休日の朝寝坊など生活リズムが乱れやすく、連休明けの睡眠や目覚めに悩む人が増えることも危惧される。そのような中、健康的な毎日を送る上で欠かせない睡眠の問題と向き合う食品メーカーの取り組みが活発化してきた。

睡眠や体内リズムの専門家が集まり立ち上げた「目覚め方改革プロジェクト」に協力しているのは、機能性表示食品の「賢者の快眠 睡眠リズムサポート」を展開する大塚製薬だ。

同プロジェクトリーダーの久留米大学医学部神経精神医学講座の内村直尚教授は2月に行われた第2回目のセミナーで、「日本人の5人に1人は睡眠の問題を抱えていますが、睡眠はパフォーマンスに大きく影響します」と警鐘を鳴らした。

内村教授によれば、17時間覚醒している場合、血中アルコール濃度0.05%、呼気中0.25mg/Lと同程度のパフォーマンス低下となるという。これは、血中アルコール濃度0.05%~0.10%はビール(1~2本)、日本酒(1~2合)に相当し、呼気中0.25mg/L以上は、酒気帯び運転レベルだという。「多様で柔軟な働き方のカギとなるのは睡眠です。また、大切なのは体内リズムを乱さないこと。金曜の夜と土曜の夜に寝ていられるだけ寝る“休日朝寝坊”をしてしまうと、次の週の前半までパフォーマンスが低下してしまい、時差ボケ状態が続いてしまいます。今年は4月末から大型連休が控えており、体内リズムを整えることを意識された方がいいでしょう」(内村教授)とする。

同プロジェクトはスッキリとした目覚めをサポートするため、睡眠や体内リズムの大切さを、セミナーやWEBサイトを通じて広く発信することに取り組んでいる。

アンケート調査「朝のすっきり目覚めについて」(大塚製薬)

アンケート調査「朝のすっきり目覚めについて」(大塚製薬)

〈コーヒー×昼の睡眠=目覚めすっきり〉
リアルで健康的な睡眠を体験できる施設も出てきた。ネスレ日本は、「ネスカフェ 睡眠カフェ」を常設店舗として3月6日から東京・大井町にオープンした。コーヒーを飲んで仮眠をとったり、質の良い睡眠を試すことのできる体験型カフェだ。30分の仮眠体験+コーヒー1杯(750円)から試すことができる。

コースは、「ナップコース」と「睡眠コース」の2つ。「ナップコース」では、仮眠前にカフェインを含む「ネスカフェ ゴールドブレンド コク深め」のボトルコーヒーが1杯提供され、レザーリクライニングチェアで仮眠ができる。これは、カフェインが身体に吸収されるまで約20~30分かかる特性を活かし、仮眠から目覚めた後のパフォーマンス維持のために、あえて入眠前にコーヒーを飲んでから寝る手法の「コーヒーナップ」を体験できるもの。

「睡眠コース」は、カフェインをカットした「ネスカフェ ゴールドブレンド」のボトルコーヒーを1杯提供し、ベッドかリクライニングチェアを選んで利用し、起床後にカフェインを含む同ボトルコーヒーを1杯提供することで、快適な寝起きを体験してもらうもの。

「ネスカフェ 睡眠カフェ」ではベッドで快適な寝起き体験も

「ネスカフェ 睡眠カフェ」ではベッドで快適な寝起き体験も

同店は、単純な“寝られるカフェ”ではなく、同地域のまちづくりにも深くかかわっている。店舗のある品川区大井町の「NPOまちづくり大井」は、ネスレ日本と共同で、健康なまちづくりを目指し、「コーヒーウエルネスプロジェクト」を立ち上げたという。
 
同NPOの神戸三元理事長は、同店のオープンにあたり、「睡眠カフェは、品川区大井町の健康なまちづくりと、集客力のある都市型観光に合致していると考え、ネスレ社に声をかけさせていただき実現した」と話した。今後大井町エリアの貸会議室やスポーツ施設などに、健康的な仮眠をとれる場所として“睡眠カフェ”のサテライトを広げていくという。
 
ネスレ日本の石橋昌文専務執行役員は、「当社はお客様の問題解決を通して付加価値を作っていくことがマーケティングのあり方だと考えている。今回、“睡眠カフェ”の常設店をオープンすることで、より良い睡眠が取れ、生産性が向上できる場をご提供していきたい。また、通常のコーヒーとカフェインレスコーヒーの飲み分けをお伝えし、飲用シーンの拡大にもつなげていければ」と話した。
 
食品メーカーでは、睡眠関連の取り組みを強化する動きが活発化している。大塚製薬は体内リズムに注目し、アスパラガス由来の成分の働きで“就寝・起床リズムを整える”機能性表示食品 「賢者の快眠 睡眠リズムサポート」(3g×7袋入り、他)を、味の素は、睡眠アミノ酸“グリシン”が含まれ、“すみやかに深睡眠をもたらし、睡眠の質の向上などに役立つ機能のある”機能性表示食品「グリナ」(スティック30本入り、他)を展開している。また、ハウスウェルネスフーズは、飲料で睡眠の質の向上に役立つGABAを100mg含む機能性表示食品「ネルノダ」をドリンク(100mlリキャップ缶)と粒タイプ(1.2g×1袋、10袋入り)で発売している。

各社が展開する睡眠関連の商品

各社が展開する睡眠関連の商品

コーヒーでも、カフェインの入っていないカフェインレスコーヒー(デカフェ)の品揃えが年々増えており、睡眠に注目した食品・飲料は今後さらに拡大しそうだ。