キリンホールディングスとファンケルは8月6日、資本業務提携を締結したことを発表した。キリンは、ファンケルの株式をファンケル創業者である池森賢二会長などから譲り受け、議決権割合で33.0%を1293億円で取得する。株式取得予定日は9月6日。ファンケルはキリンの持分法適用会社となる予定。

今後、両社はそれぞれのブランド力や技術力を活かし、新発想の商品やブランドを開発するほか、生活習慣対策サプリメントやアンチエイジングなどのスキンケア商品の開発に取り組む。また、原料の共同調達などによる生産面での協業や、キリンの自販機チャネルやファンケルの直販チャネルなどを相互活用する考えだ。
キリンホールディングス×ファンケル「資本業務提携の理由」

 
今回の資本業務提携は、両社が目指す方向性として「健康」の部分で一致し、かつ事業領域や強みである素材や販売チャネルなどで異なる部分が多く、お互いを補完することでシナジー効果が大きいと判断したために実現したという。
 
キリンHDの磯崎功典社長は同日に行われた発表会で、「ファンケルは健康寿命の延伸に取り組んでおり、その理念や目指している方向性は、クオリティ・オブ・ライフの向上、疾病の予防といった健康に関わる社会課題の解決を通じて企業としての成長を目指すキリンのCSV(共通価値の創造)の考え方と完全に一致する。一方、両社は顧客や製品、(販売)チャネル、海外展開における重なりが少なく、むしろ補完関係にある。したがってお互いの強みを活かし、素材、研究開発、マーケティング、生産、販売ネットワークなど、すべてのバリューチェーンをより強固にすることで、事業の展開スピードをグローバルで加速できる。さらに、身体の内と外の両面から美しさを求めるお客様の健康ニーズに対してもシナジーが見込まれる。今後は、より幅広い分野で多くの社会課題を解決していきたい」と話した。
 
一方、ファンケルの島田和幸社長は、「ファンケルにとって今回の資本業務提携は、美と健康の両事業で高いシナジー効果が期待でき、協業を非常に楽しみにしている。ファンケルとキリンの素材、商品、チャネルには重複が少なく、相互補完関係にある。将来的に幅広い分野でシナジー創出が期待できる。今後、両社がそれぞれのブランド力や研究開発力、販売力を活かし、強力にタッグを組み、世の中にない画期的な商品・サービスを提供していく」と話した。その一例として、「素材を吸収を高めるための微細粒化技術、逆にゆっくりと吸収させるためのコーティング技術、味の改良のためのマスキング技術など、さまざまな加工技術があり、これらを発展させることで、キリンのおいしさや飲みやすさにこだわる技術と組み合わせて新しい形態のコラボ商品の提案などもこれから検討する」とした。
 
キリンは、独自のユニークな事業ポートフォリオのもと、約40年にわたり「健康」の課題解決に取り組んできた。1982年にビール醸造で培った発酵技術を応用し、先進バイオ技術による創薬をリードし、1990年には第一号医薬品「エスポー」を発売。2008年には協和発酵工業と統合し、協和発酵キリンを発足した。現在は、協和キリンとして、抗体技術・バイオテクノロジーといった強みを活かし、バイオ医薬品などを創出している。そして、今年2月には長期経営構想(KV2027)を発表し、「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」ことを掲げていた。
 
一方、ファンケルは、「美」と「健康」を事業ドメインに、肌トラブルに悩む女性の課題解決に向けた世界初の無添加化粧品発売(1982年)や、日本で初めて科学的な裏付けのあるサプリメントの開発など、世の中の「不」の解消に取り組むことで成長を遂げてきた。
 
ファンケルの池森賢二会長は、「ファンケルの将来は、私がしっかり判断できるうちに、社員と役員にとって最良と思える道筋をつけることが私の真の責任だと強く思うようになった。そして、ファンケルの将来を託すことのできる信頼できる会社に譲った方がよいと結論に至った。信頼できる託せる会社として、キリンホールディングスを選ばせていただいた」とし、その理由として、もともと好印象を持っており、互いにカニバリを起こす事業がなく、さらに独立性をしっかり維持してもらえることなどを挙げた。
 
創業者である池森会長の主なコメントは以下の通り。
 
「私は今年82歳になった。男性の平均寿命は81歳なので、いつ死んでもおかしくない年齢だ。私が突然死んだら、ファンケルはどうなるのだろうと真剣に考えてきた。私が最も気になるのは、私を支え続けてくれているかけがいのない社員と役員のことだ。もう一つ気になるのは、私が(一時期)引退していた10年の間、業績が大きく衰退してしまい、社員に大きな不安を与えてしまったことだ。立ち直った現在は、島田社長をはじめとした社員の頑張りとインバウンドの力も加わり、大きく業績を伸ばしているが、大変なスピードで大きな変化が起こっている現代社会では、変化を事前に予測し、その変化に合わせて会社経営を続けていかない限り、現状の延長線で実績を伸ばし続けるのは至難の業である。このように考えながら、ファンケルの将来は、私がしっかり判断できるうちに、社員と役員にとって最良と思える道筋をつけることが私の真の責任だと強く思うようになった。そして、ファンケルの将来を託すことのできる信頼できる会社に譲った方がよいと結論に至った」。
 
「信頼できる託せる会社として、キリンホールディングスを選ばせていただいた。ブランド価値を守るため、複数社に声をかけ、競わせるようなやり方はしたくなかったので、初めからあえて一社に絞り、話し合いを進めてきた。その理由は、キリンHDは、以前から品位のある行儀のよい企業だと好印象を持っていたためだ。さらに、互いにカニバリを起こす事業もない。あと、これは余談だが、“一番搾り”を私は長らく愛飲している。そういうことから、キリンには非常に好意を持っている。協和キリンとは、20年以上前から取引関係があり、その際に開発された商品は今でも販売している。互いに信頼関係があり、2代目の研究所長は協和発酵から来ていただいたという経緯もある」。
 
「キリンHDでは、協和キリンを子会社にして11年になるが、協和発酵の企業風土を尊重し、現在も丁寧に、良好な関係を築き続けているという安心できる前例もある。この企業ならファンケルのブランドを守り続けて、ファンケルの独立性をしっかり維持してもらいながら、社員・役員を大切にしてくれると思った。そして、キリンの真面目な企業風土、研究開発を重視している姿勢、美と健康事業への強化戦略、未病のための商品開発の取り組みなども、相乗効果が期待できる。互いの技術力と研究開発力を活かし、新製品をどんどん開発することも可能だと思った」。
 
「嬉しいことに、キリンHDもファンケルを高く評価してくださり、私の申し入れを喜んで受け入れてくれた。また、磯崎社長とは初めてお会いしたときから、経営者としての器の大きさを感じ、その考え方に共感・共鳴することができた。私がしっかり判断できる元気なうちに、ファンケルにとって最良と思える道筋をつけることが私に課せられた大きな役割だと思っていた。そのことが大切な社員・役員の幸せとファンケルの今後の発展につながっていくと確信している」。