紅茶市場が復調 “抗インフルエンザ活性”報道で特需、“タピオカミルクティー”も追い風に

構成比約6割を占めるティーバッグは前年比5%増で推移(2019年1~9月実績、画像はイメージ)
〈ティーバッグがけん引、家庭用紅茶市場全体で前年比プラス〉
家庭用紅茶市場が復調している。長年にわたり、ゆるやかな減少が続いていたが、ようやく底打ち感が出てきた。

昨年の秋以降、紅茶の健康価値が注目され、市場のすそ野が拡大。特に、紅茶ポリフェノールの抗インフルエンザ活性が多くのメディアに取り上げられ、年末年始の流行シーズンにはティーバッグを中心に“特需”が起きた。この流れを春夏期につなげようと、紅茶メーカー各社では主力品の販促や水出しタイプの拡充により、さらなるユーザーの開拓と定着を図った。その結果、今年1月~9月の家庭用紅茶市場は前年を4%ほど上回って推移した。ティーバッグやリーフなどの家庭用だけでなく、外食におけるタピオカミルクティーブームや紅茶飲料のヒットが重なるなど、多方面で紅茶の注目度が上がっている。

財務省貿易統計によると、2018年紅茶輸入量(バルク)は前年から6.2%増の1万4753t、金額4.1%増の79億円と数量、金額共に増加した。今年1月~8月にかけては数量7%増の9630t、金額2.1%減の46億円と数量が伸びる一方、金額は減少。紅茶飲料やティーバッグのブレンド用途が多く、比較的安価なインドネシア産の輸入量が増えたことが主な要因。

今年1月~9月の家庭用紅茶市場をみると、インスタントやリーフが前年から微減で推移する一方、ティーバッグは前年を5%ほど上回った。ティーバッグが構成比約6割を占めるため、市場全体も前年越えで推移した格好。しかし、昨年はダージリン休売などの減少要因があるため、一昨年と比較した場合には微増にとどまる。「ようやく底を打ったものの、真価が問われるのは今季以降の売り上げ」(メーカー)。

紅茶の輸入量(バルク)

〈「健康」「フルーツ」「カフェインレス」への対応目立つ〉
約2割のロイヤルユーザーが市場の半分以上を消費する家庭用紅茶市場において、従来の販促策は既存品の香りやブレンド訴求が主流となっていた。だが近年、そのロイヤルユーザーも高齢化が進み、新規ユーザーの、とりわけ若年層の開拓が業界全体の課題となり、各社はさまざまな施策を展開している。そのなかで特に目立つのは、紅茶の健康価値訴求による飲用喚起や、フルーツフレーバーとカフェインレス対応品の強化だ。
 
紅茶の健康価値については日本紅茶協会が主体となり、積極的に情報を発信。ダイエット効果やガン細胞の増殖抑制作用、疲労回復作用など、さまざまな効用が報告されるなか、昨年、抗インフルエンザ活性が注目されて需要が急増。流行シーズンの昨年12月~今年2月にかけて、ティーバッグの売り上げは前年を2桁近く上回った。「この時期『日東紅茶 デイリークラブティーバッグ』の10袋入りがよく売れたので、新規需要を獲得したとみている。その後、主力の25袋入りの販促強化に努めて夏場の売り上げも好調を維持した」(三井農林)。
 
ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングでは近年、フルーツと紅茶の組み合わせの提案に力を注ぐ。今年4年目の期間限定店舗「リプトン」フルーツインティー専門店は、同社によると「紅茶をよりカジュアルに日常的に楽しんでもらい、夏場の需要喚起と家庭用市場の活性化につなげる」ことを目的としている。昨年この専門店で販売した人気メニューのグリーンティーを今春、家庭用コールドブリューシリーズの「グリーンティー ピーチ&オレンジ」として発売し、20~30代の若年新規層の獲得につなげた。秋冬向けにはホット専用のフルーツインティー(2種)を新たに投入し、ユーザーの定着を促す。
 
また近年、働く女性の増加や妊娠時の飲用意向の高まり等を背景にカフェインレス商品の売り上げが拡大している。日本緑茶センターの「ティーブティックやさしいデカフェ紅茶」や富永貿易の「アーマッドティー」(デカフェシリーズ)をはじめ、その市場性に着目した大手3社(三井農林、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング、トワイニング・ジャパン)が相次いでカフェインレス紅茶を投入し、市場が活性化。今後のさらなる拡大を見据え、各社では紅茶以外のカフェインレス商品も年々増やしている。例えば今季はノンカフェインのルイボスティーが充実しており、トワイニング・ジャパンは「リッチルイボス」、三井農林は「ルイボスデイズ」をそれぞれ発売。共に初動は好調という。

量販店の紅茶売場には「フルーツフレーバー」や「カフェインレス」の商品も

量販店の紅茶売場には「フルーツフレーバー」や「カフェインレス」、“紅茶ポリフェノール入り”を訴求する商品も

〈11月1日は「紅茶の日」〉
このように今季、各社は引き続き健康価値ニーズへの対応とカフェインレス商品のバラエティ化等により市場の底上げを図る。11月1日「紅茶の日」には、紅茶の日実行委員会(三井農林、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケテイング、カレルチャペック、キリンビバレッジ、伊藤園)と日本紅茶協会後援により、東京駅直結の商業施設KITTE内で大規模なサンプリングが実施される。