紅茶飲料市場が過去最高、2019年実績は前年比15%増、仕事中に飲む大人が増加

各社が多彩な商品を展開
紅茶飲料市場が拡大し、2019年1~12月の販売実績は前年比15%増となり、過去最高になったことがわかった(飲料各社からの聞き取りによる本紙推計)。生産量は、これまで最高実績は2010年の115万klだったが、それを上回る約120万klの着地となったもようだ。

好調要因は、各社から無糖や甘さ控えめタイプ、また果汁を贅沢に使ったフルーツティーの新商品が新型のPET容器で市場に投入されたことで、生活者の注目が集まったことが大きい。特に、健康意識の高まりから無糖や甘さ控えめでも嗜好性の高い紅茶飲料が増えたことにより、デスクワーク中の人々の選択肢に入り、一気に市場が拡大した。

紅茶飲料の国内生産量推移

〈「午後の紅茶」は微糖・無糖好調で過去最高実績〉
2019年の各社の取り組みを振り返ると、キリンビバレッジの「午後の紅茶」は、前年比9%増で過去最高となる5540万箱を達成。3月発売の「ザ・マイスターズ ミルクティー」のヒットで新規顧客を獲得し、「おいしい無糖」で無糖茶需要の取り込みに成功し、有糖の主力3品(ストレートティー、ミルクティー、レモンティー)も堅調に推移した。
 
キリンビバレッジは、「コーヒーとは違う“覚醒疲れからの適醒(適度なリフレッシュ)”というポジションを紅茶が確立し、他カテゴリーからの流入が進みました。また、ストレスを日常的に解消するための“小休止モーメント(短い休息)”のニーズが出現し、ひと口ひと口が常においしく小まめにリセットできる紅茶が好まれるようになりました」と市場拡大の背景を語る。
 
〈「クラフトボス」はオンタイム需要開拓の先がけに〉
サントリー食品インターナショナルは、「クラフトボスTEA ノンシュガー」(3月発売)と「クラフトボス ミルクティー」(7月発売)の2品が共に好調で、紅茶シリーズは「クラフトボス」計で3400万箱超へ成長したけん引役となっている。
 
これはオフタイムや休憩中が主な飲用シーンだった他の紅茶ブランドの定番品に対し、仕事中の飲用シーンをいち早く提案したことが大きい。「オンタイム・仕事中の飲料は、これまでお茶・水・コーヒーが中心でしたが、そこに“クラフトボス”の紅茶シリーズが加わることが出来たのが好調の要因です」(サントリー食品)としている。
 
〈「紅茶花伝 ロイヤルミルクティー」は仕事・授業の合間の飲用増加〉
コカ・コーラシステムの「紅茶花伝 ロイヤルミルクティー」は、2019年9月のリニューアル発売後、購入者数が1.5倍へ大幅に増加した。すべての年代で購入率が上昇し、メインターゲットである10~20代だけでなく、30代以上の購入率も上昇した。購入時間帯別にみると、以前と比べて朝から午前中にかけての時間帯の購入率が大きく向上したのが特徴という。
 
日本コカ・コーラの担当者は、「これまで“紅茶花伝 ロイヤルミルクティー”は、午後のおやつ時や仕事終わりに飲んでいただく割合が相対的に多かったのですが、午後だけでなく、朝~午前中に購入して、職場や学校で日中の仕事や授業の合間に飲んでいただくシーンが拡大したと思われます」と分析する。同製品は、後味をすっきりさせ、上品な甘さにしたことにより、いつでも気軽に手に取れる味わいが支持されているようだ。
 
〈「TEAs’ TEA」は“生”訴求の新感覚フルーツティーの展開スタート〉
また、“生”をテーマに新しいフルーツティーを提案して注目されたのが、伊藤園の「TEAs’ TEA(ティーズティー)」だ。2019年8月に新感覚フルーツティー「TEAs’ TEA NEW AUTHENTIC 生オレンジティー」を発売し、約1カ月で1200万本を販売。現在も女性を中心に支持されている。
 
同製品は、紅茶を抽出する際に生のオレンジを一緒に抽出することで、紅茶と相性の良いオレンジの味わいと心地よい香りを引き出し、紅茶に果汁をブレンドしただけの“素材そのままのおいしさ”の実現を目指したもの(香料無添加)。ティーポットでいれたような本格的なフルーツティーのような味わいが、これまでペットボトルで紅茶飲料を飲んでいなかった女性に、学校やオフィスで飲んでもらえるようになったという。
 
伊藤園の担当者は、「かつて紅茶飲料の飲用層は男性の方が多く、強い味わいが好まれていました。一方、近年カフェスタンドなどで販売されるフルーツティーは、圧倒的に若い女性に人気があります。伊藤園は紅茶飲料でこのようなティースタンドの味わいを目指し、“生オレンジティー”を発売しました」としている。
 
〈「ジャワティ」は“無糖紅茶”を表記、「知覧にっぽん紅茶」は“無糖なのにほのかに甘い”〉
無糖紅茶の先駆けであり、2019年に発売30周年を迎えた「シンビーノ ジャワティストレート」(大塚食品)は、昨年初めて「無糖紅茶」の表現をパッケージに入れた。食事に合う飲料として現在も熱烈なファンがいることで有名。茶葉本来の鮮やかな色、味と香りもよいジャワ島産茶葉100%を使用し、レッドとホワイトの2種を展開する。無添加に30年間こだわってきたことも特徴だ。
 
鹿児島県知覧紅茶を100%使用した「知覧にっぽん紅茶」(ポッカサッポロフード&ビバレッジ)は、“無糖なのにほのかに甘い”と定評があり、他の大手ブランドに比べて認知は高くないがユーザーは着実に増加している。日本品質の無糖紅茶として、今後さらなる成長も期待できそうだ。
 
〈2020年も市場は増加予測、微糖、フルーツティーの新顔や植物ミルクが登場〉
では、2020年の紅茶飲料市場はどうなるか。カテゴリートップのキリンビバレッジは、同市場について前年比4%増と想定。「紅茶飲料カテゴリーのトレンドは、2019年の春以降高止まって推移しています。当社では昨年から“紅茶派”というメッセージを発信し、紅茶の飲用習慣が根づき出した手応えを感じています。競合からの新商品発売も継続しており、小売店などでの紅茶売り場の拡大に伴い、お客様接点の拡大は進むでしょう」と話す。
 
キリンビバレッジは2020年の活動として、紅茶の魅力やおいしさを、さらに多くの消費者に届けるため、パーパス・ブランディングの実施により「午後の紅茶」の存在意義を明確にし、「幸せの紅茶。午後の紅茶」というキーメッセージでコミュニケーションを展開する。
 
具体的には、主力3品(ストレートティー、レモンティー、ミルクティー)の取り組みによる「午後の紅茶」“有糖”の拡大と、昨年ヒットした「ザ・マイスターズ」シリーズに、ダージリン茶葉を10%使用した低カロリーの甘くない味覚新製品「ザ・マイスターズ オレンジティー」(500mlPET)を追加し、“微糖”の確立を図る。そして、「おいしい無糖」でウィズフード訴求を推進し“無糖”の拡大に取り組む。有糖・微糖・無糖のサブカテゴリ―を創造し、紅茶市場の成長を牽引する考えだ。

「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズ オレンジティー」

「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズ オレンジティー」

一方、紅茶飲料で出遅れていたアサヒ飲料は、植物ミルク使用により差別化を図る。同社は植物ミルクでつくったラテ飲料の新ブランド「PLANT TIME(プラントタイム)」を立ち上げ、3月31日から「PLANT TIME ソイミルクティー」を全国発売する(各415mlPET)。
 
「PLANT TIME ソイミルクティー」は、豆乳と紅茶をバランスよく組み合わせた、さらりとしたやさしい口当たりが楽しめることが特徴。豆乳由来のイソフラボン入りで、同社は「リラックスできて、植物ミルクの豆乳がプラスオンした女性がうれしいミルクティー。30~40代女性を中心に訴求し、リラックスタイムをヘルシーにしたい」とする。ボトルデザインは、女子美術大学と協同制作し、商品コンセプトから想起された“植物素材がからだになじむ”“内側から輝かせてくれる”をテーマにした容器形状やラベルデザインを目指した。女性でも持ちやすくカバンに入れやすい形状で、手触りや色合いなどにもこだわったという。

アサヒ飲料「PLANT TIME ソイミルクティー」

アサヒ飲料「PLANT TIME ソイミルクティー」

伊藤園は、1月20日から新感覚フルーツティー第2弾として「TEAs’ TEA NEW AUTHENTIC 生アップルティー」(500mlPET)を発売したところ、特に女性の購入者が多いという。中味は、生のアップルを紅茶と一緒に抽出した新感覚の紅茶飲料で、紅茶に果汁をブレンドしただけの素材そのままのおいしさの実現を目指した。同社は「まるでティーポットでいれたようなフルーツティーをお楽しみいただけます」としている。

伊藤園「TEAs TEA NEW AUTHENTIC 生アップルティー」

伊藤園「TEAs’ TEA NEW AUTHENTIC 生アップルティー」

甘さのバリエーションの広がりと新型ボトルの登場で、リラックスタイム以外に仕事中や作業中の飲用シーンを獲得した紅茶飲料。働く女性の増加もあって各社の製品開発は進んでおり、拡大傾向は続きそうだ。