「『ブレンディ』抹茶一服」発売へ、味の素AGFがスティックでお抹茶に挑戦する理由とは

「『ブレンディ』抹茶一服」(ミルクなし、ミルク少々)
〈新製品「抹茶一服」の浸透はスティック市場の未来を占う試金石〉
味の素AGF社は、スティックシリーズの新製品として「『ブレンディ』抹茶一服 ミルクなし」「『ブレンディ』抹茶一服 ミルク少々」(各4本入り/想定定番売価280円)を2月21日から全国発売し、スティックの日本茶飲料の市場創造にチャレンジする。お湯にとくだけで、簡単に本格抹茶が楽しめることがコンセプト。スティック市場は一昨年から300億円超の規模となっており、昨年も前年実績を上回った。カテゴリートップのAGFは、本格抹茶など従来とは異なる視点の製品投入により、スティック市場に新しいユーザーを呼び込む考えだ。

家庭におけるお茶の市場は、若年層の急須保有率の低下もあり減少傾向だが、抹茶市場は2019年4月~9月の実績が2017年の同期比で119%と伸長している(AGF調べ)。近年では、国内・海外ともに、抹茶そのものが注目されており、今後の食トレンドのひとつとみられ、お茶のトップメーカーの伊藤園も国内外で最注力している分野である。

だが、実際に抹茶を飲もうと思っても、通常は茶せんで泡立てるなど、作る手間がかかることや敷居が高く感じることから、家庭での飲用をあきらめる人は多く、現在の抹茶飲用者にとっても“ダマになりやすくおいしく作れない”や“使いきれず劣化してしまう”などの課題があるとAGFは分析している。

このような背景を捉えて開発されたのが、いつでも開けたてが楽しめ、上質な抹茶ならではの旨みと泡立ちを手軽に味わえる本格抹茶スティックの「『ブレンディ』抹茶一服」シリーズだ。「抹茶一服 ミルクなし」は、本格的な抹茶を求める人も満足できるように、茶産地として日本第3位の三重県鈴鹿市の鈴鹿抹茶をブレンドすることで、上質な抹茶ならではの旨み・甘さ・緑鮮やかな色味を実現した。同社によれば、鈴鹿抹茶は渋み成分のカテキンが少なく、うまみ成分であるアミノ酸のテアニンが豊富なため、飲みやすい抹茶として評価が高いという。

また、「抹茶一服 ミルク少々」は、家庭で抹茶を飲用する人の4割がミルクを入れて飲んだ経験があるという調査結果(AGF調べ)を踏まえ、甘さは加えずミルクだけを少々加えたコク深い商品設計にした。なお、エシカル消費に対応し、スティックの包材の一部には紙素材を使用し、同サイズの同社製スティックに対し、プラスチック使用量を12.3%削減した環境配慮設計としたことも特徴だ。

エシカル消費への取り組み【プラ減量】/味の素AGF社資料

エシカル消費への取り組み【プラ減量】/味の素AGF資料

なぜ、コーヒーや紅茶を中心に展開する「ブレンディ」が日本茶飲料、しかも抹茶にチャレンジするのか。それは、お茶製品への長い挑戦の歴史から得た知見があったことと健康志向への対応が背景にある。そして、スティック製品の価格競争が激しいことから、市場の健全成長に向けてプレミアム製品で新たなユーザーの獲得が必要だったためである。
 
AGFは、四半世紀以上前から業務用のお茶パウダー製品に取り組んできた。1988年には家庭向けに「新茶人」というブランドを誕生させるなど、過去からお茶カテゴリーには何度もチャレンジしてきたが、需要を大きく掘り起こすまでにはいたらなかった。そこで、今回は「鈴鹿抹茶」を活用してプレミアム化を図るとともに、生活者の抹茶を作る際の不満や求める味わいのニーズを徹底研究することで、スティック市場の持続的成長を目指す考えだ。
 
同社リテールビジネス部の古賀大三郎部長は、「鈴鹿抹茶を活用することにより、今までにない需要を掘り起こせたり、すでにお抹茶を家庭で飲まれている方の不満点を解消することで、もっと飲んでいただけるチャンスがあるのではないかと考えた。開発にあたっては、生活者の方々の声を丁寧に聞きながら調査をしっかり行った。そして、われわれの製造技術を活用して最適な価値のある日本茶飲料ができたので、“ブレンディ 抹茶一服”を発売する。新しい価値を提供することにより、スティックのカテゴリーをより魅力的なものにしていきたい」と話した。
 
コーヒーと同様に、日本茶飲料も国内消費量やユーザーが多いため、スティックでも飲用の習慣化が期待できる。スティックで、これまで生活者に敷居が高いと見られていた抹茶に挑戦することは、スティックカテゴリーそのものの価値を高めようとする熱意の表れだろう。単純な“簡便(簡単便利)”を超えて、幅広い製品ラインアップや、専門店の味を家で楽しめるなどの価値を伝えられるか。「ブレンディ」の得意としていたコーヒーではなく、本格抹茶がターニングポイントになりそうだ。