ネスレ日本が社長交代、次期社長の深谷常務はネスカフェ変革の立役者

ネスレ日本 新社長に就任する深谷龍彦常務
ネスレ日本の新社長に4月から就任することが決まった深谷龍彦常務は、同社の基幹ビジネスである「ネスカフェ」事業を2006年からけん引してきた。「ネスカフェ」は、「ネスカフェ エクセラ」を中心に、1杯あたり単価が10円以下だったが、持続的な成長を目指すにはプレミアム化が必要と考え、それまでやや高価格帯商品として位置づけていた「ネスカフェ ゴールドブレンド」を主力製品(メインストリーム)にするなどのプレミアム戦略を進めて、1杯単価を高める取り組みを進めてきた。

また、一杯抽出型コーヒーシステムの市場創造にも取り組み、「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」を、世界に先駆けて日本に導入した。さらに、昨年は、「スターバックス」製品の日本市場での拡大など、家庭内外における飲料事業のイノベーションを中心になって推進している。

今月行われた春夏の飲料製品に関する発表会では、深谷常務がコーヒー戦略について以下のようにコメントしている。

「当社はここ10年くらい、コーヒー市場の中で、売り上げの金額を上げることにチャレンジしてきている。弊社の高岡(社長)が指摘する通り、日本は人口が減っており、また、外へ働く人が増えたため家での滞在時間が減り、食品に限らず多くのカテゴリーで家庭内での消費が減っている」。

「その中でカテゴリーの成長を図るためには、量を追い求めても、市場を好転させるのはわれわれとしては難しい。そこで、プレミアムの商品に取り組んだり、もしくはこれまで飲んでこなかった方に飲んでいただくような、新規のユーザーを取り込むことに取り組んでいる。既存のお客様にもっと飲んで下さい、もっと食べて下さいと言っても、家の中で過ごす時間が物理的に減っていることもあり難しいだろう」。

「われわれは、成長するためには、プレミアム化と新規ユーザー獲得の2つしかないと考え、新しい方へのアプローチを強化するとともに、いまお飲みいただいているものの価値を上げて、その品質に見合ったバリューの高い商品を買っていただくことにチャレンジしていく」。

グローバルのネスレは、約150年前の創業時から、社会的な問題を解決することにより生活の質を高め、健康な未来づくりに貢献してきた。これがネスレのパーパス(存在意義)である。そして、ネスレ日本も高岡浩三社長が「社会の課題解決」を事業の中心テーマに置いてイノベーションに取り組み、製品やサービスを開発してきた。

「キットカット受験生応援キャンペーン」の成功や「ネスカフェ アンバサダー」など、商品だけでなくさまざまな部門にマーケティングの視点を取り入れて革新し、少子高齢社会の日本における事業成長に取り組み、成果を上げてきたことは記憶に新しい。深谷新社長も社会や生活者の課題解決を図ることをテーマに置き、サステナブルなブランド作りと持続的な成長を目指すとみられる。