〈100%リサイクルペットボトルをナショナルブランドで初めて導入〉
2020年3月、食品・飲料業界に驚きを与えたブランドがある。日本の天然水を使用したコカ・コーラシステムの「い・ろ・は・す」だ。なぜ、ミネラルウォーターのブランドがそれほど注目されたのか。それは、100%リサイクルペット素材を用いた「い・ろ・は・す 天然水 100%リサイクルペットボトル」(555mlPET)を全国展開したためである。リサイクルペットボトルを素材の一部に導入するブランドは増えてきたが、販売数量の多いナショナルブランドで100%リサイクルペット素材を活用するのは日本で初めての試みだ。

「い・ろ・は・す」の100%リサイクルペットボトルが誕生した背景には、使用済みペットボトルも適切に回収すれば再利用に適した“資源"になるという考えが根底にある。使用済みペットボトルを回収し、また新たなペットボトルへ生まれ変わらせる“ボトルtoボトル(BtoB)"の技術が加速すれば何度もボトルとして再利用できる。つまり、容器の利便性を享受しながら新たに天然資源を採掘する必要がなくなり、環境負荷を大幅に減らすことが可能になる。
使用済みペットボトルを回収し、またペットボトルにする(ボトルtoボトル技術)

使用済みペットボトルを回収し、またペットボトルにする(ボトルtoボトル技術)

 
この新しい「い・ろ・は・す」の100%リサイクルペットボトルの取り組みは、石油から新規に製造されるプラスチックと比較し、年間で小型自動車約4,000台分の重さ相当(自動車1台を1トンで換算)のプラスチックの使用を削減できる。また、ペットボトル1本あたりのCO2排出量は、一般的なペットボトルと比較して49%削減できるという。

「い・ろ・は・す 100%リサイクルペットボトル」が実現する環境への配慮

「い・ろ・は・す 100%リサイクルペットボトル」が実現する環境への配慮

 
なぜ、日本のコカ・コーラシステムは、新たな投資や仕組みが必要になるにも関わらず、100%リサイクルペットボトルの導入を始めたのか。それは、2018年1月に米国のザ コカ・コーラカンパニーが発表した「廃棄物ゼロ社会」の実現を目指すプラン達成のためだ。日本では、「容器の2030年ビジョン」を策定。このビジョンは、2030年までに販売した商品と同等量の容器を回収・リサイクルすることを目指しており、業界内外から意欲的なチャレンジと認識されている。
 
また、2020年4月からは、ラベルを貼らない「い・ろ・は・す 天然水ラベルレス」(560mlPET)をケース販売のみで展開した。100%リサイクルペットボトルでラベルをはがす手間がなく、ゴミの分別を楽にすることができる。容器をスタイリッシュなデザインにして持ち運びたくなる工夫も行った。原材料名などの法定表示は外装に記載している。

「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」

「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」

 
〈ニューノーマルの時代のサスティナビリティー活動〉
これらの環境負荷を少なくする容器開発の取り組みは、海洋プラスチックごみなどに寄与するものであるが、単に地球環境への貢献という理由だけではない。企業として持続的な成長を遂げるためには、活気ある地域社会と、豊かな地球環境が欠かせないという認識が背景にある。
 
その内容は、2020年7月1日に発刊された日本コカ・コーラの「サスティナビリティーレポート2020」に掲載されている。ポイントは、グローバル目標の達成に加えて、日本独自の課題を特定してサスティナビリティーの枠組みを再構築している点だ。この大規模調査は、日本コカ・コーラと日本最大のボトラー会社であるコカ・コーラボトラーズジャパンが共同で実施しているという点で、日本のコカ・コーラシステム史上初の試みだ。再構築された枠組みは、「多様性の尊重」、「地域社会」、「資源」という3つのプラットフォーム(土台)から成る。

これから日本のコカ・コーラシステムが取り組むサスティナビリティーの取り組み

これから日本のコカ・コーラシステムが取り組むサスティナビリティーの取り組み

 
2020年は新型コロナウイルスの影響を受けているが、日本コカ・コーラのホルヘ・ガルドゥニョ社長は、「世界で134年、日本で64年にわたり事業を展開してきたコカ・コーラシステムは、過去にもあらゆる災害を克服してきた実績があり、この(新型コロナの)困難からも必ず立ち直ることができる」と、「サスティナビリティーレポート」の中でコメントしている。

日本コカ・コーラ社 ホルヘ・ガルドゥニョ代表取締役社長

日本コカ・コーラ社 ホルヘ・ガルドゥニョ代表取締役社長

 
〈「資源」に関する取り組みが「容器の2030年ビジョン」に沿って加速する〉
その中でも、数年前から積極的な取り組みを進めているのが、環境問題とも縁の深い「資源」に関する取り組みだ。
 
日本のコカ・コーラシステムは、「容器の2030年ビジョン」における、「設計」「回収」「パートナー」の3つの活動を柱として、容器の循環利用を推進している。そこでは、海洋プラスチックごみへの問題意識が高まる中、前出の「ボトルtoボトル」を推進することで2022年までにリサイクルPET樹脂の使用率50%以上を達成し、2030年には90%まで高める目標を掲げている。
 
また、2025年までに日本国内で販売する全ての製品にリサイクル可能な容器を採用するとともに、全てのPETボトルに環境にやさしい素材(リサイクルPET樹脂、または植物由来PET樹脂)を使用することも発表している。
 
〈「設計」「回収」「パートナー」が3つの柱〉
「設計」は、100%リサイクルペットボトルの開発・導入や、容器の軽量化などの取り組みを目指す。技術革新が進んでいる分野である。
 
「回収」は、プラスチック資源のさらなる有効利用を目指すもの。ペットボトルについては、日本のプラスチック資源循環のシステムにより98%以上が回収され、84.8%がリサイクルされている。リサイクル率は、米国(41.8%)、欧州(20.9%)に比べて非常に高いが、より推進する考えだ。2019年は、11月にコカ・コーラシステムの約750名の社員が、海岸・河川の清掃活動として、千葉県長生郡一宮町釣ヶ崎海岸など全国9か所で実施した。

社員による河川や海岸の清掃活動の様子

社員による河川や海岸の清掃活動の様子

 
「パートナー」は、政府や自治体、飲料業界、地域社会と協働し、すでに極めて高い水準にある国内のPETボトルと缶の回収・リサイクル率のさらなる向上に貢献するべく、より着実な容器回収・リサイクルスキームの構築とその維持に取り組むもの。
 
海洋プラスチック問題が注目される中、日本財団と日本コカ・コーラは2019年春から日本国内における「陸域から河川への廃棄物流メカニズムの共同調査」をスタートしている。プラスチック資源の適切な回収と循環利用への貢献を目的とした国内初の大規模調査であり、全国8カ所で、陸域から河川へ流出した廃棄物を約240キロメールにわたり調査するもの。どのようなプラスチック資源が、どういった経緯で資源回収スキーム(枠組み)から外れ、河川や海にたどりつきやすいのかといった、プラスチック資源の流出メカニズムを明らかにすることを目指す。なお、2019年には、セブン&アイグループと完全循環型ペットボトルリサイクル「一(はじめ)緑茶 一日一本」の展開も開始している。
 
〈水資源の保護活動にも注力〉
資源では、容器面以外での取り組みも行っている。コカ・コーラシステムは、製造過程における水使用量削減、製造過程で使用する水の排水管理、地域の水源保護の3つの側面で水資源保護の活動を推進している。日本のコカ・コーラシステムの工場では、世界共通の品質とオペレーション管理を行うシステム、通称「KORE」の品質基準を遵守しながら、製造時に使用する水の効率化を進めている。2019年の実績では、製造における水使用量は1627万平方メートルとなり、前年より65万トンを削減した。

自然環境に負荷をかけない節水・排水で、製品に使用する量と同等量の水を自然に還元

自然環境に負荷をかけない節水・排水で、製品に使用する量と同等量の水を自然に還元

 
水源を保護する活動では、工場水源域における水源保護活動を全国23カ所で行った。ボトラー各社の工場水源域内として特定された地域において、その地域特性に応じた水源保護活動を推進している。2013年には、日本コカ・コーラと日本製紙グループが森林資源および水資源の保全・保護に関する中長期の協働活動提携を締結し、水資源につながる植樹活動、体験型の環境教育プログラムを実施している。
 
〈持続可能なビジネスの実現に向け、世の中に前向きな変化をもたらす〉
ホルヘ・ガルドゥニョ社長は、地球規模の課題に対しては、政府・自治体、NPO、業界団体との連携が欠かせないとする。そして、「私たちは引き続き技術革新を通じて主導的な役割を担いながら、“廃棄物ゼロ社会"を目指します」と語る。
 
コカ・コーラの事業目的は、「Refresh the world. Make a difference.(世界中をうるおし、さわやかさを提供すること。前向きな変化をもたらすこと。)」である。世界最大の清涼飲料メーカーが持続可能なビジネスの実現を通じ、心身ともに人々をうるおし、ひとりひとりの生活、地域社会、地球にとって前向きな変化をもたらすことができるか注目だ。