伊藤園は、“茶畑から茶殻まで”の一貫した環境経営を行うことで本業を通じた社会貢献活動の輪を広げている。

「茶殻リサイクルシステム」は、お茶を生活者の身近な製品へ活用するという考えのもと、身近な茶配合製品の研究開発に積極的に取り組むもの。これまでに約100種類の茶殻リサイクル製品を開発しており、新型コロナが猛威をふるった2020年は自販機の抗菌・抗ウイルス対策にも使用されるようになった。

「茶産地育成事業」では、茶農家の高齢化などによる離農により、日本の茶園面積が減少傾向となり、茶農家の安定経営と高品質な茶葉を安定調達するために取り組んでいる。今年8月に静岡県でも展開し、全国で6県8地区まで拡大した。今期末に2000haを突破する見込みだ。

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伊藤園の「茶殻リサイクルシステム」は、多量の水を含む茶殻を輸送・工業製品に配合できる技術のこと。茶殻は多量の水を含んでいるため腐敗しやすく、代替原料化するには乾燥工程が必要となる。しかし、乾燥することで燃料消費や二酸化炭素の発生が課題となり、これまで茶殻を保存・輸送する技術を確立できていなかった。伊藤園は、含水のまま常温保存して輸送・工業製品に配合できる技術「茶殻リサイクルシステム」を2001年に確立した。 

茶殻(緑茶)の抗菌効果や消臭効果などの特性を生かした付加価値製品を創出しており、これまで畳や建材、樹脂製品、茶殻配合紙ノートやカテキン染めタオル、表面温度上昇抑制効果がある人工芝、「お〜いお茶」のペットボトル用段ボールなど、約100種類の茶殻リサイクル製品を関係会社と共同開発している。

2020年はワンウィル社、サンロック工業社と共同開発した製品「茶殻配合シート」を活用した「茶殻抗菌シール」を、自販機での購入時に手が触れる部分に貼付した抗菌・抗ウイルス対策自販機を6月から展開。病院や介護施設など全国6万台の展開を予定している。

伊藤園によれば、茶殻配合シートは、大腸菌、MRSA、サルモネラ菌、白癬菌を用いて抗菌力評価試験を行ったところ、抗菌効果が認められたという。また、インフルエンザウイルスを用いて抗ウイルス試験を行ったところ、抗ウイルス効果も確認できた。今回、自販機の購入ボタンや取り出し口に、抗菌・抗ウイルス効果のある茶殻抗菌シールを貼付して、消費者の「安心」「安全」の思いに寄り添い、より衛生的で身近な自販機として展開している。

〈茶産地育成事業、静岡でもスタート〉
「茶産地育成事業」は、地元の事業者などが主体となって、自治体などと協力しながら耕作放棄地などを大規模な茶園へ造成することをサポートするとともに、伊藤園から茶葉の生産に関する技術やノウハウを全面的に提供し、生産された茶葉を全量買い取りする“新産地育成事業”と、既存の茶農家を対象に伊藤園専用の茶葉を生産してもらう“契約栽培”がある。

日本では近年、茶農家の高齢化などによる離農により、茶園面積が減少傾向となっている。国産緑茶(荒茶)生産量の約4分の1を扱う伊藤園にとっては、「茶産地育成事業」に取り組むことで、茶農家の安定経営と、高品質な茶葉の安定調達が期待できる点が特長だ。

そのうち2001年に宮崎県都城地区から展開を開始した“新産地育成事業”は、その後、九州の各地で「お〜いお茶」専用茶葉などを生産している。今年8月には静岡県袋井地区でも展開し、全国で6県8地区まで拡大した。これにより茶産地育成事業の茶園面積は、1836ha(2020年4月末)で、2021年4月末には2000haを突破する見込みとなった。
茶産地育成事業(新産地事業)

茶産地育成事業(新産地事業)

 
袋井市は、耕作放棄地が増加している。伊藤園は、行政の支援のもと農地中間管理機構などを活用し、有限会社秋田製茶と協働して、2040年までに展開面積100haを目指す。
 
「茶産地育成事業」は、生産者の雇用維持と茶業界の発展を目指し、さらに拡大する計画という。日本を代表するお茶のリーディングカンパニーとして、積極的に推進していく考えだ。
 
〈食品産業新聞 2020年11月5日付より〉