伊藤園と筑波大学発ベンチャーのMCBI社(本社:茨城県つくば市)の2社は8月2日、サンディエゴ(アメリカ合衆国カリフォルニア州)で開催されているアルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer's Association International Conference:AAIC)2022で、「抹茶を継続摂取することで睡眠の質向上と一部の認知機能の維持・改善に及ぼす効果を確認した」と発表した。

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伊藤園とMCBI社の共同研究チームで、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)と主観的認知機能低下(SCD)の高齢者を対象にした臨床試験「抹茶の認知機能低下抑制効果を評価する試験」を実施し、研究成果として発表したもの。

伊藤園とMCBI社によれば、抹茶は古くから日本国内において親しまれてきた飲み物だが、その成分である「テアニン」には、ストレス緩和、睡眠改善、さらにはワーキングメモリーの改善などの効果があると報告されている。「カテキン」には、血中コレステロールの低下、体脂肪の低下、さらにはワーキングメモリーの改善などの効果があると報告されている。また、抹茶の短期間の摂取効果として、中高齢者の「注意力」および「判断力の精度」を高めることが報告されている。

今回の臨床試験について、両社は抹茶の長期摂取の介入前後に、試験参加者への認知機能検査、血中バイオマーカー測定、血中動態分析、脳イメージング(fNIRS、アミロイドPET)、睡眠調査などを実施し、抹茶の効果とバイオマーカーの変化を総合的に解析することを目的とし、研究を実施したという。

両社の発表によると、臨床試験の方法は次の通り。

60歳から85歳の高齢者を中心とした939名を募集し、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI=アルツハイマー病など認知症の前駆状態)、およびプレクリニカル期にあたる主観的認知機能低下(SCD=軽度認知障害の前段階)と診断された99名の試験参加者を対象に、抹茶の長期摂取による認知機能等への影響を、二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験により検証。抹茶群では抹茶カプセル(1日あたり抹茶2g摂取)を12か月間摂取し、プラセボ群では着色コーンスターチを充填したカプセルを用いた。試験開始時から12か月までの各評価項目の変化を混合効果モデルにより統計的に検証した。
臨床試験の方法

臨床試験の方法

 
また、睡眠の質をピッツバーグ睡眠質問票(PSQI=最も多くのエビデンスが集積されているとされる睡眠評価尺度)を用いて評価した結果、抹茶群でPSQIスコアが低下し、睡眠の質が向上する傾向が示されたとする。そして、認知機能に関しては、認知症やMCIのスクリーニング等に用いられる神経心理学的検査(MMSE-J、MoCA-J等)での得点で抹茶群とプラセボ群の間に差はみられなかったが、コグニトラックス検査(全10項目のテストで構成されるパソコンを用いた認知機能検査)による認知機能の領域別の評価では、抹茶群はプラセボ群に比較して、表情認知テストで表される社会的認知、具体的には顔表情からの感情知覚の精度が有意に改善することが確認されたという。

PSQIスコア(ピッツバーグ睡眠質問票)、社会的認知

PSQIスコア(ピッツバーグ睡眠質問票)、社会的認知

 
伊藤園は、「今後、本研究で確認した抹茶の継続摂取による“睡眠の質の向上効果”“社会的認知機能の改善効果”の関連性やメカニズムの解明、またその他の検査内容の解析などを進めていく。この取り組みを通じ、超高齢社会に生きる高齢者の方々の豊かな生活への貢献によって、健康で豊かな生活と持続可能な社会の実現に寄与する」としている。