レジなしコンビニ「ローソンGO」実証実験開始、富士通のマルチ生体認証を導入、手ぶらで買い物も

店内はワンウェイ、天井のカメラで客の動きを認識
コンビニエンスストア大手のローソンは、デジタル技術を駆使し、レジを通らずに商品を持ち出すだけで決済まで完了する実証実験店を、2月26日~5月25日の期間、神奈川県川崎市の富士通新川崎テクノロジーセンター内の従業員専用店舗で営業する。

スマートフォンにダウンロードした専用アプリ「ローソンGO」のQRコードをかざすと入店でき、天井に設置されたカメラと商品の棚に設置されたセンサーで、どの商品をいくつ取ったかを判別し、退店時に事前に登録したクレジットカードで決済される。

専用アプリ「ローソンGO」のQRコードで入店し、決済は事前登録したクレジットカードで

決済は事前登録したクレジットカードで

3月16日からは富士通が開発した「マルチ生体認証」を導入し、手のひらの静脈と顔情報で入店できるようにして、手ぶらでの買い物も実現させる。夏には他の店舗で一般客が利用できる実証実験も行う。

手のひらをかざすだけの非接触認証技術も導入する

手のひらをかざすだけの非接触認証技術も導入する

実験店は「ローソン富士通新川崎TSレジレス店」で、売場面積は23.2平方メートル、米飯、パン、カップ麺、菓子、飲料など250アイテムを扱う。富士通新川崎テクノロジーセンターには富士通がフランチャイズ契約して営業する通常店「ローソン富士通新川崎TS店」があり、同店の売れ筋から扱い品目を選んだ。酒、たばこ、店内調理品、冷凍食品などは扱わず、ATMやマルチ端末、収納代行などの各種サービスもなし。店内は無人だが、商品の補充やカメラの映像を監視する従業員が1人、バックルームに待機する。営業時間は9時~17時で、土日祝日は休み。
 
カメラは約3メートル上の天井に28台を設置。機能は11台が人の動き、11台が商品の動き、6台が手の動きを認識する。棚には商品の重量を計測するセンサーを設置。カメラとセンサーを組み合わせ、AI(人工知能)が、誰がどの商品を何個取ったかを判別する。
 
店内は入口から出口までワンウェイで、両壁面に商品棚という単純構造にした。天井も通常店より高くしたことで、最小限のカメラ台数で、店内すべてをカバーでき、死角が生まれないようにした。ただ、棚の前で人と人が重なると、誤認識が起こる可能性もあるという。
 
通常は退店してすぐスマートフォンに電子レシートが送られてくるが、同時に入店している客の数が多いと、AIによる処理に時間がかかるという。また、顧客が店内を行ったり来たりしたりすると、カメラで認識した動きの情報が膨大になり、処理時間も増え、電子レシートの送付に30分以上かかる可能性もあるという。そのため1度に入店できるのは、スタート時は5人までに抑え、技術的な課題を解決しながら、入店できる人数を増やしていく。
 
棚はセンサーの形状の都合で並べられる商品は一段につき4品目まで。事前に登録した重量で商品を判別するため、1度取った商品を戻す時は、必ず元の棚に戻すよう掲示して徹底していく。また1度取った商品を他人に渡すと、最初に取った人の決済に反映されてしまうため、それを注意する掲示も行っている。
 
富士通新川崎テクノロジーセンター内の通常店は、「朝や昼のピーク時には混雑してチャンスロスも多い。レジレス店でどれだけチャンスロスを減らせ、トップラインを上げていけるか。カメラを増やせば精度は上がるが、ビジネスとして成り立たせるには、コストの引き下げも課題になる。そのバランスは、どこなのかも検証していく」(牧野国嗣ローソン理事執行役員オペレーション・イノベーションセンター長)という。
 
富士通では「年齢確認技術」を特許出願中で、将来は同技術も組み合わせて、レジなし店舗で酒やたばこも販売できるようにしていきたい考えだ。
 
最大の課題が購入商品の判別だが、ローソンは様々な最新技術を結集した都内の「イノベーションセンター」で、商品1つ1つに「RFIDタグ」を付け、出口のゲート通過時に瞬時に判別するという方法をすでに実験している。ただ、RFIDタグは現段階では1個10円程度と高価で、「現実的ではない。しかし、カメラの方に可能性があるかといえば、そうとも言い切れない」(ローソン関係者)という。