緊急事態宣言でスーパーに大行列、一方でコンビニに行列ができない理由とは

野菜を販売する都内のセブン-イレブン店舗
政府の緊急事態宣言を受け、都心では百貨店や駅ビル、繁華街の飲食店などが相次いで休業し、町全体が閑散としている。一方、郊外の大型スーパーには、平日の昼間でも驚くほど人がいる。生活必需品を購入するための外出には制限がなく、いつ収束するかわからない先行きの不安感から、連日買い溜めに走る顧客が後を絶たないからだ。スーパーの店内では密集を避けるため、入場制限をしたり、レジ待ち時は一定の距離を開けて並んでもらうなど、様々な工夫を行って対処している。

ただ、スーパーの売場では従業員の精神的な負担も大きい。ライフラインを守るため、ギリギリの状況で営業を継続しており、イオンやライフコーポレーションなど大手スーパーでは、緊急事態の中で働いてくれている従業員に一時金を支給することも決めた。

スーパーに長蛇の列ができている他方、コンビニではそのような光景はあまり見られない。コンビニに長蛇の列ができるのは、オフィス街などのランチタイム。しかし、在宅勤務でオフィス街に人がいなくなると、オフィス街の店舗は「売り上げが半分になっている」(藤本明裕ミニストップ社長)ようなところも多い。ビルごと閉鎖され、休業せざるを得ない店舗も多い。

〈コンビニの滞在時間は3分〉
それでは住宅地のコンビニに長蛇の列ができているのかといえば、そんなことはない。ローソンによると、コンビニの平均滞在時間は約3分だという。コンビニは本来、近所で、必要なものを、必要な時に、短時間で購入する場所であり、列を作ってまとめ買いをするような場所ではないからだ。

コンビニはこの10年あまり、「近くて便利」を追求してきた。従来の弁当と飲料といった1人暮らしの男性をターゲットにした商売から、生活必需品を過不足なく網羅し、シニアや女性など新たな顧客層を開拓して成長してきた。

その間に大手3社では、「セブンプレミアム」「ローソンセレクト」「ファミリーマートコレクション」と、それぞれがPB(プライベートブランド)を立ち上げ、惣菜や冷凍食品、牛乳や豆腐などの日配品、調味料やカップ麺、飲料などの加工食品、消耗雑貨などの生活必需品を、スーパー並みの値頃感ある価格でラインアップしてきた。

ローソンの竹増貞信社長は、「豆腐や納豆、牛乳、食パン、ロールパンなど、ローソンにもあったんですねと言われる。おにぎりとスイーツのイメージが強かったので、知らなかったお客様も多い。PBで競争力ある価格です。野菜もある。毎日の食事のニーズに十分お応えできる。これからはこういった部分も訴求していく」と話す。

〈コンビニは野菜も安価〉
野菜はオフィス街のコンビニではあまり見かけないが、住宅地の店舗では積極的に扱っている店舗も多い。

セブン-イレブン・ジャパンでは、日替わり弁当を中心に、受注した翌日に宅配するサービス「セブンミール」のラインアップの中に、野菜も用意している。顧客も野菜を注文できるが、店側が「セブンミール」の中から野菜を発注し、店頭に並べて販売することも行っている。

セブン-イレブンは全国2万店で販売する弁当・惣菜を、各地の専用工場で毎日製造している。全国の専用工場では、肉や野菜などの食材を毎日大量に安定的に確保しており、「セブンミール」では、それら食材の一部を販売している。専用の契約先から大量に確保しているので、価格も相場に左右されることは少ない。スーパーで高騰している野菜が、セブンではスーパーより安く買えるということもある。

新型コロナ騒動でスーパーの加工食品の棚は空になることが多いが、コンビニでは欠品はあまり発生していない。理由は納品の頻度の差だ。コンビニは弁当・惣菜を含む日配品が1日2~3便、加工食品も基本的には1日1便の体制はあるので、商品は毎日補充される。

一方でスーパーは、生鮮食品は毎日納品されるが、加工食品は週1便程度というところが多く、乾麺や即席めん、コメなどが欠品すると、来週まで棚は空のままということが多い。それを見た顧客が焦り、納品されたらすぐに買い占めるという悪循環に陥っている。 スーパーで長蛇の列を作り、いくらソーシャルディスタンスを保っているといっても、レジ待ちだけで長時間店舗に留まらざるを得ないのは、新型コロナウイルス感染拡大の面からも危険だ。それならコンビニで3分で買い物を済ませて帰った方が安全ではないか。毎日商品が納品されるので、欠品が続くこともない。

セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長も、セブン-イレブンの現状について、「昼間の売り上げが伸びる傾向がある」と話す。その理由について、「1カ所で短時間に買い物をしたいというニーズに対応できている」と分析している。