阪急うめだ本店(大阪市北区)は、有名食品メーカーとコラボして、誰もが知る商品をプレミアム化・話題化・ギフト化させる「オンリーワン戦略」を柱に、高い専門性と、希少性・限定性から、数々のヒット商品を生み出してきた。

百貨店の中でも先進的な取り組みが目立ち、2019年秋には、業界初の生ホールケーキの通年宅配サービス「阪急のケーキ宅配」を大阪市、吹田市、豊中市の3エリアから開始した。翌年開始した冷凍ケーキの全国宅配「CAKE LINK」(ケーキリンク)と合わせて、ヒットコンテンツに成長した。

〈CAKE LINK〉阪急阪神百貨店が冷凍ケーキの全国宅配スタート、人気ブランド“アンリ・シャルパンティエ”の「フォレ・フレーズ」「ザッハ・トルテ」など

4月19日からは東京でもケーキ宅配サービスを開始。4月1日付でフード商品統括部ゼネラルマーチャンダイザーに就任した星野大輔氏に、同社が目指す「楽しさNo.1百貨店」を実現する上での食品売り場の戦略を聞いた。
「阪急のケーキ宅配」トップページ(スマホ版)

「阪急のケーキ宅配」トップページ(スマホ版)

 
〈記者の解説〉
阪急うめだ本店の食品の強さは、催事という強いチャネルでのトレンドを含む情報発信力と、プロパー売り場の出店ラインアップにある。名物催事の代表格は「バレンタインチョコレート博覧会」で、世界中から有名ショコラティエが一堂に会する。今年は密を避け、例年より出店数を減らし、通路を広く取って開催するとともに、EC(インターネット通販)での販売を強化した。
 
店頭、ECともに販売は好調で、特にECは前年の4倍に拡大した。店選びについて、「本格派や専門性に惹きつけられる。信念、理念が通ったブランドだから。阪急が持つエレガント性にマッチする」と星野氏。方向性や思いを同じくする出店企業と、バイヤーとがタッグを組んで売り場や催事を作り上げることが、強さの源泉だ。

阪急阪神百貨店第1店舗グループ フード商品統括部ゼネラルマーチャンダイザー 星野大輔氏

阪急阪神百貨店第1店舗グループ フード商品統括部ゼネラルマーチャンダイザー 星野大輔氏

 
〈「強いコンテンツづくりは必須」/阪急阪神百貨店・星野氏〉
――コロナ前と後で変化はあったか。

 
コロナ前までは、「ここでしか買えない」商品で話題を作りギフト化につなげるオンリーワン戦略を進めてきた。手土産にしやすいお菓子の他に、惣菜も手掛けて話題となった。この戦略では、阪急沿線や京阪神に住んでいるお客だけでなく、全国に向けて、商圏拡大を図るための商品やブランドを作ってきた。
 
しかし、コロナ禍では外出が制限されてしまう。人の動きが鈍ると、当店の得意分野であるお持たせや、手土産の需要が減少する。別の話題を作ることが必要となっている。
 
行列のできる缶クッキーや、かわいらしいパッケージのギフト菓子は、ゆくゆくは苦戦すると思っていた。しかしコロナ禍でも、人気は衰えなかった。手土産需要だけでなく、自分で食べておいしいものは売れ続けることがわかった。
 
全国的にも言えることだが、コロナ禍でラグジュアリー商品が好調となった。ワインや高価格帯の生鮮食品など、外出や旅行がしにくくなった今、「日常の贅沢」に置き換わるものが売れている。特に、洋生菓子の売り上げは堅調に推移している。「せっかく阪急に来たのだから、何か買って帰ろう」と、ケーキを選ぶお客が増加した。
 
阪急では、5年ほど前からアニバーサリーケーキに力を入れている。ホールケーキで他にないものを作ろうとした。「ケーキを買うなら阪急」が浸透してきていると強く感じる。スイーツブームのサイクルで、ケーキが巡ってきていることも好調につながっている。SNS映えする断面や、見た目の美しさから、祝い事にはケーキが欠かせない。
 
――2019年秋から開始した生ケーキ宅配のねらいは。

 
オンリーワン戦略の中でお客の困りごとのソリューションとして考えたのが「ケーキ宅配」だった。例えば、子育て世代は外出しにくく、持ち帰りもしにくいという困りごとを解決したいと考えた。宅配エリアは現在も拡大している。受注も順調に増え、冷凍ケーキの全国宅配「CAKE LINK」と合わせて、2021年3月には累計2万件を超えた。4月19日からはさらにエリアを拡大し、「TOKYO CAKE DIARY」(東京ケーキダイアリー)として、東京都内8区で12ブランドのケーキ宅配を開始する。
 
ケーキ宅配で想定と違ったことがある。他所届けでの申し込みが多いことだ。宅配エリアは限定的だが、サイトで全国どこからでも申込みはできる。たとえば北海道に住む祖父母が、東京に住む孫へ誕生日プレゼントとして生ケーキを送るといった使い方もできる。
 
――コロナを受けてテコ入れすべき点は。
 
ECの強化は必須だ。SNSなど、オンライン上でのお客とのつながりを強化している。来店客が、家に帰って阪急のことをツイートしてくれるなど、常にお客とつながっている状態を作っていきたい。お客とのつながりがあれば、新商品が出た際に、店舗に来られなくても阪急のECから買ってもらえる。
 
オムニチャネル(全てのチャネル)とOMO(リアルとオンラインの融合)を合わせたものをイメージしている。ECで強いコンテンツを作り上げて、お客との接点を持ち続けるよう取り組んでいく。例えば、当社はBYO(ワインの持ち込み)ができる飲食店を紹介する会員制グルメサイト「Winomy」(ワイノミ)を展開している。
 
〈ワイノミ〉阪急阪神百貨店、ワイン持ち込み可能な飲食店のグルメサイト開設
 
これを発展させ、飲食店のサイトで紹介されているワインをクリックすると、阪急のECサイトにつながるようなものをイメージしている。このシステムを構築するのが当面の目標だ。ECを強化するため人員も増やす。生鮮、和菓子、洋菓子、グロサリーなどの各カテゴリーで専任担当者を配置する。2021年は顧客とつながり続けるための強いコンテンツの構築が必須だ。
 
――これからのリアル店舗の役割は。

 
2~3月の阪急うめだ本店の客数は、例年並みにまで戻っていている。特に食品フロアは、実際に来店し、その場の空気を肌で感じて買い物をしたいというお客が多いことを実感した。
 
地下2階には、コミューナルフードマーケットが3月に誕生した。モニターを使ったセミナーなどもあり、来店することで持続可能な食の未来について学べる場になっている。これに限らず、今後もサステナブルな考え方を通じたワールド化を検討したい。
 
◆阪急百貨店公式通販「HANKYU E-STORES」冷凍ケーキ「CAKE LINK」