令和2年7月豪雨被害、酪農・大豆・畜産など広範囲に影響/食品関連の状況まとめ・7月10日時点

記録的な7月の豪雨となった九州、岐阜県、長野県における食品関連の被害は、酪農やみそ、大豆など広範囲に影響している。食品産業新聞社の調査による7月10日までの状況は以下の通り。

【酪農関連】
九州地方を中心とする大雨により、牛舎が浸水するなど酪農現場が被害を受け、集送乳に遅れが発生、乳を受け入れる乳業工場にも少なからず影響が及んでいる。九州の酪農現場では牛舎に土砂が流れ込み、道路が寸断、通行止めで重機が入れず、搾乳しても浸水したバルククーラーが使用できず、廃棄乳が発生する可能性が浮上。岐阜では、土砂崩れの恐れから道路が通行止め、集送乳できない状況が出ており、長野は酪農家や集乳作業に大きな影響は出ていないものの、各地とも予断を許さない状況だ。

【大豆・みそ】
◆JA全農

九州における大雨、氾濫による大豆への影響については、調査段階にあり現時点で被害状況は見えていないとした上で、「九州地方はちょうど今頃が播種の適期にあたり、大雨が発生した時点で播種はそこまで進んでいない状況だった。今回の断続的な大雨により、播種作業の遅れが懸念される」と、今後の動向を注視する。

全国味噌工業協同組合連合会
長野県における被害状況は、9日時点で、組合員の被害は今のところ出ていないとのことだった。それ以前の九州地方を襲った豪雨では、みそ蔵と自宅が完全浸水してしまったのは2件で復旧の目処は立っておらず、加えて、床上浸水が1件、床下浸水が1件となっており、こちらも復旧の目処が立っていない。

◆全国納豆協同組合連合会
8日時点で、熊本、鹿児島、大分の会員企業から、工場・社屋の被害報告は入っていない。だが、道路の冠水により物流面で影響が出ているもよう。

◆全国豆腐連合会
熊本での被害が深刻とのこと。まだ被害の詳細はつかめていないとする。

◆日本豆腐協会
8日午前10時時点で、九州、東海地方の会員の状況をヒアリングしたところ、丸美屋(熊本県玉名市)の従業員1人が被災したとの報告が入っているが、そのほかの会員では設備、人的な被害はなかったとする。一部で物流に影響があったが徐々に復旧しているとの報告もある。

【油糧】
◆製油メーカー

理研農産化工(福岡市東区)は9日時点で本社や工場、従業員への被害は出ていない。

【畜産】
熊本県では9日午後3時現在、畜舎等への冠水・損壊の被害は、42カ所にのぼるとした。市町村別では、錦町が11カ所と最多で、あさぎり町9カ所、人吉市が6カ所となっている。家畜死亡数の更新はなく、牛が6頭、鶏は3万羽死亡している。

鹿児島県では10日午前10時現在、北薩と大隅で豚が136頭、鶏が6万7,000羽死亡しており、被害額は約5,445万円。畜産関係施設に関しても、北薩と大隅で6件の被害があり、約1,126万円の被害だとしている。

【米・麦】
◆熊本県庁

県全体での水稲被害は今のところ451ヘクタールにのぼる。麦は収穫が終わっているので被害無し。現状は全体の被害状況を把握している段階で、地域ごとの把握には時間がかかる。

◆福岡県庁・大分県庁
田畑への被害は現在調査中。

◆全国米穀販売事業共済協同組合
熊本の人吉食糧(人吉市下青井町、球磨川付近)に被害が出ている。事務所・工場が2~3m浸水し、営業・操業を停止している。人的被害は無い。10日時点では、他の全米販組合員からの被害報告は上がってきていない。

◆日本米穀商連合会・全国米穀工業協同組合
両団体に関連している、熊本のふじき本店(人吉市上薩摩瀬町、球磨川付近)に甚大な被害が出ている。人的被害は無いが、本社工場は腰上まで浸水し、固定電話のほか、工場の全ての機械、商品・在庫の8割が被害を受け、操業は当面の間停止している。系列小売店のうち、紺屋町店(人吉市)も天井を越える浸水に見舞われ、甚大な被害を受けた。そのため、熊本支店(熊本市中央区新町)のみ営業を続けている状況。

◆日本パン工業会
被害の連絡はないが、一部で配送に影響があるという話が出ている。

◆全国乾麺協同組合連合会
10日時点で被害報告は無い。

【冷食】
味の素冷凍食品の九州工場(佐賀市)は現時点で大きな影響は受けていないという。筑後川では上中流部で河川氾濫が起きたが、同工場は下流部に位置する。ヤヨイサンフーズの九州工場(福岡県大牟田市)は、工場建物が高台にあり浸水等の被害はなかった。従業員の安全確保もあり7日は休業したが、8日には生産を再開したという。

なお、日本即席食品工業協会など食品の各団体による災害地への食料支援の取り組みでは、7日までに乳児用ミルク(粉・液体)600点、パックご飯、レトルト・缶詰、カップ麺など食料5万3000点、清涼飲料4万点が熊本県へ発送され、順次避難所へ届けられている。