近年、豪雨や台風の襲来、大地震といった自然災害が相次いで起こり、防災に関する準備の必要性が高まっている。特に療養患者や高齢者が多い病院・施設では災害が起きても食事を継続する必要があり、緊急時にいかに対応し、日頃からどのような備えをしたらよいのか、平時より対策が練られている。

管理栄養士・栄養士サポートのEatreat(イートリート)はこのほど、「栄養士のための防災食講座」を本社ビル(東京都・日本橋)で開き、病院・施設給食サービスの大手、日清医療食品で防災担当を務める神戸修氏が、熊本地震や18年7月豪雨発生時に実際に取り組んだ災害対応を挙げながら、自然災害に備えた心構えと防災食の準備の重要性について解説。マルハニチロのメディケア営業部の儀間詩織管理栄養士は「介護食の循環備蓄」について紹介した。

日清医療食品の神戸氏は「災害時に支援物質として届けられる食料には、介護やアレルギーなどを考慮したものはない。日頃から、自助(備蓄食材などの対応)や共助(地元業者との協定締結)に取り組むことが重要である」と準備の必要性を説いた。18年7月豪雨で被災した広島県の受託施設の事例では、同施設が高台にあったためライフラインが寸断、停電・断水のなか備蓄食材で食事を提供した。施設利用者60人(うち55人は嚥下困難者)に対し、施設職員は3人、調理員は1人のみ。災害が発生して2日目には系列の施設からさらに35人(うち30人は嚥下困難者)を受け入れるも、職員は増えなかった。

「平時から多めに発注、備蓄していたから何とか食事を提供できた。日頃の取り組みがなかったら、危なかったかもしれない」と振り返り、2種類の備蓄方法を説明した。 1つ目はローリングストック法。備蓄食材を定期的に消費し、消費した分を補充して常に一定量がストックされるものである。同社では缶詰・野菜ジュース・粥・水をこの手法で備蓄し、消費期限3カ月前に通常献立に組み込んだ内容で提供している。2つ目はランニングストック法で、普段使用する食料品を多めに購入し、消費しながら備蓄を同時に行う方法。濃厚流動食・フリーズドライ商品などを備蓄し、定期的に入れ替えることで一定数の備蓄を行っている。

今後起こりうる首都直下型地震や荒川の氾濫時に想定される危険性を指摘し「対策を講じるためにも、東京を取り巻く災害環境を知ることが大事だ」と注意喚起した。

マルハニチロの儀間詩織氏は「介護食の循環備蓄」について紹介した。儀間氏は「介護食の備蓄に悩む病院・施設は多い。費用がかかる点やどういった形態に分けて備蓄すれば良いか分からない施設もある」と課題を示し「急性期病院・老人福祉施設・特別養護老人ホームとその施設の特徴により、食事内容が変わり内訳が変わると思うが、各施設に聞き取りしてみると、〈1〉常食〈2〉軟菜食〈3〉ソフト食/ペースト食/ゼリー食――の3つに分けて備蓄しているケースが多い。細かく分けて備蓄することはお勧めしない。費用も限られ消費期限の管理も難しいので3つくらいに分けてほしい」と提案した。
「常食・軟菜食・ソフト食/ペースト食/ゼリー食」の3つに分けた「介護食の循環備蓄」例

「常食・軟菜食・ソフト食/ペースト食/ゼリー食」の3つに分けた「介護食の循環備蓄」例

東日本大震災の際の支援実績も紹介した。日本介護食品協議会を通じて送られたレトルト食品は約15万食、トロミ調整食品は約500kgにのぼり、それ以外にも各メーカーからの直接支援もあった。震災では、サバ缶など缶詰製品が重宝されたと述べ、同社ホームページで公開している「缶たしレシピ」(缶詰を汁ごと、料理に足すだけの料理法)も紹介した。