スマートミール認証で3ツ星獲得、シダックスグループ運営・ヤマハ発動機9号館食堂の足跡を追う

ヤマハ発動機9号館食堂の「健康サポートランチ」サンプルとスマートミール認証書
〈「健康だから」ではなく、自然に選択したくなるヘルシーメニューを目指して〉
健康経営の推進を背景に、社員食堂に「健康な食事・食環境」認証(通称=スマートミール認証)を導入する企業が増えている。食堂を運営する給食会社からの提案ニーズも強まる中、シダックスグループは多くの受託事業所で認証取得を支援し、顧客の健康経営を強力にサポートしている。

2019年9月に発表された第3回認証店舗で、最高ランクの3ツ星を取得したシダックスコントラクトフードサービス(株)が受託運営する、ヤマハ発動機(株)9号館食堂を訪問、認証取得までの足跡を追った。

※スマートミールとは、厚生労働省の「生活習慣病予防その他の健康増進を目的 として提供する食事の目安」 (2015年9月 )や、日本人の食事摂取基準 (2015年版)等を基本として設定された、栄養素や野菜量などの基準を満たす食事の名称。

ヤマハ発動機(株)9号館食堂(静岡県磐田市)の昼食提供数は約1,700食。利用者の男女比は8対2で生産部門と事務技部門が混在、11時40分に食堂がオープンすると徐々に利用者が増え、12時には満席に。閉店の13時まで、約20分間隔で4回転する大賑わいの大型食堂である。

メニューは3定食と丼ぶり、カレー、麺と副菜数種類。そのうち、定食の1つに「健康サポートランチ」の名称でヘルシーメニューを2009年から採用しており、今回の認証取得を機に、メニューの栄養価等をスマートミール基準に変更した。

「健康サポートランチ提供開始当初は喫食数が少なく、そのほとんどが女性だった。徐々に食数が増え、年配の方や健康意識の高い若い男性の利用が増えた。メニュー表を見ず、まっしぐらに並ばれる方もいるほどリピート率は高い」。そう反響の高まりを語ってくれたのが、ヤマハ発動機ビズパートナー(株)の前田直美さんと名倉麻美さんだ。「09年の健康サポートランチ提供開始時は、さすがに60食は出るかと思いきや30食程度。ひどい時は10食の時もあった」と振り返る。

食堂のメニュー掲示と、ヤマハ発動機ビズパートナー 名倉麻美さん(左)・前田直美さん(右)

食堂のメニュー掲示と、ヤマハ発動機ビズパートナー 名倉麻美さん(左)・前田直美さん(右)

「健康メニューだから食べて!ではなく、自然に健康サポートランチを選択してもらえるようなメニューになるようシダックスさんに協力を求め、喫食数はコンスタントに増加した」と効果を強調する。シダックスコントラクトフードサービス(株)では食堂利用者の嗜好を考えながら献立の構成を検討し、時間をかけてメニュー改善に努めた。その結果、現在の販売数は120~180食(食堂利用者の約10%)にまで拡大した。

利用者でいっぱいのヤマハ発動機9号館食堂

利用者でいっぱいのヤマハ発動機9号館食堂

その後、ヤマハ発動機(株)は2018年に経済産業省と日本健康会議が共同で進める「健康経営優良法人認定制度」において、特に優良な健康経営を実践している企業として「健康経営優良法人2018 ~ホワイト500~」に認定され、健康経営の観点からスマートミール認証導入を検討。シダックスコントラクトフードサービス(株)に取得協力を依頼した。
 
取得に向けて苦労した点を尋ねると、スマートミール基準へのエネルギー量の調整が挙がった。「スマートミール基準では『ちゃんと』が450~650kcal、『しっかり』は650~850kcal。食堂には生産部門の方だけでなく、事務系の方や女性もいる。1つの食堂でいろいろなニーズに対応できるよう、健康サポートランチは『しっかり』で設定し、PFCバランス(P=たんぱく質、F=脂肪、C=炭水化物)を調整した」という。
 
しかし、栄養価の調整等でガラリとメニューが変わってしまうと、10年かけて定着した健康サポートランチの固定客が離れてしまう恐れもある。そこで、スマートミール基準に収めながらも、従来と変わらない魅力あるヘルシーメニューをシダックスに依頼したという。「メニューが魅力的だから選ぶ人は多い。シダックスさんの良いところは家庭的でほっとする味。とても美味しい。毎日食べて飽きのこないことが強みだ」と高く評価し「それを前面に出すアピールとクオリティの維持をお願いしたい」と求めた。
 
取得後の課題を尋ねると、スマートミールの認知度向上が挙がった。「今後、どうやって健康な食事への関心を集めるか。それが大事」。
 
現在、食堂では、健康サポートランチのメニューのみ実際のサンプルを設置し、関心を引く仕掛けを行っている。今後はヤマハ発動機(株)でスマートミール認証を取得した3つの食堂の給食事業者を一堂に集め、給食事業者間の情報共有を推進し、メニューのレベルアップとスマートミールの認知度向上を目指すという。
 
シダックスの前田弓子さんと江島亜友美さんにこの課題への対応策を尋ねると、「健康サポートランチのイベントを企画して、より注目を集めるとともに、お客様とのコミュニケーションを大事にしたい。継続して健康サポートランチを食べられる方が多いから、食事の提供時に話しかけて、お客様のニーズを知るよう、これからも努力していく」と意気込んだ。
 
食堂には、仲間と楽しそうに談話しながら食事をする方が大勢いた。健康サポートランチを食べている方々に話を聞くと、「栄養バランスがとれていて美味しい」「野菜が多くデザートもついていて嬉しい」「塩分が控えめなのに味がしっかりしていてボリュームがある」とコメント。中には「毎日、繰り返し食べることで、健康状態が良くなる。これからも食べ続けたい」とスマートミールの効果を語る方もいた。
 
今後も、シダックスグループはスマートミール認証取得に積極的に取り組み、顧客の健康経営を強くサポートしていく考えだ。