フジ産業、セントラルキッチンシステム導入による厨房業務効率化を強力推進〈完全調理済み食材「クックパック」導入実例〉

真空パックされた「クックパック」と盛り付け例(朝・昼・夕)
〈「クックパック」導入施設に聞くその魅力 ~安全性・味・栄養価・簡便性~〉
給食事業者のフジ産業(株)は、高齢者施設向け完全調理済み食材「クックパック」の販売を強化している。新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響で安全・安心に配慮された食品の需要が高まっており、そのニーズに対応する構えだ。セントラルキッチンで調理された冷凍の調理済み食材は、調理時に菌を死滅させ、調理後は人を介さないため安全性が高い。

「月刊 メニューアイディア」編集部が6月に実施したアンケートでも「コロナ禍以降、給食業界はどのように変化するか」の設問で「院外調理の活用拡大」がトップだった。厳しい人手不足とコロナ禍により、福祉施設や医療施設におけるセントラルキッチンシステムの導入に拍車がかかるだろうか。「クックパック」導入施設と工場を訪問して、その魅力に迫る。

左から、調理員の小林さん、管理栄養士の安藤さん、フジ産業東京支店営業部の朱膳寺さん

調理員の小林さん、管理栄養士の安藤さん、フジ産業東京支店営業部の朱膳寺さん

〈操業1年で日産4,500食まで拡大〉
フジ産業(株)は東京都港区に本社を構える給食会社で1968年に設立された。受託先は社員食堂、学校・保育園、福祉施設・医療施設、寮・保育所と多岐にわたり、事業所毎にお客様の嗜好性に応じたオーダーメイドの食事を提供している。2014年3月には豊田通商グループに加わり、そのグローバルネットワークを活かした付加価値サービスの提案にまい進している。
 
2018年6月、代表取締役社長に久田和紀氏が就任すると、2019年3月には(株)フーヅリンクと業務提携を行い、高齢者施設向け完全調理済み食材「クックパック」の展開を開始した。製造拠点である三島R&Dセンターは2019年9月にリニューアルオープン後、わずか1年で製造食数が日産4,500食まで拡大している。
 
導入施設は、特別養護老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者施設・介護付き老人ホーム・介護老人保健施設・グループホーム・デイサービス・病院など40件以上。安全・安心で、給食現場の人手不足等の課題解決を実現する食材として、提案を加速させている。
 
〈なぜ「クックパック」を採用したか?〉

「クックパック」を採用した近藤病院(神奈川県)

「クックパック」を採用した近藤病院(神奈川県)

神奈川県の医療法人仁愛会 近藤病院(病床数111床)は、2020年3月に手作りから「クックパック」を活用したセントラルキッチンシステムに切り替えた施設である。
 
副院長の鎌田浩子さんに導入経緯を尋ねると、「3月に管理栄養士・調理師2名の退職が決まっていたが、人を集めるのが間に合わなかった。献立作成も調理もできない状況になりそうだったため、取り急ぎ“ セントラルキッチン” や“ フリーズ食品” でインターネット検索をかけた。3、4社が候補に挙がり、すぐに営業の方に会って値段、食数、締切日等を検討した結果、フジ産業さんに決めた」と振り返った。
 
「クックパック」は調理員がいなくても、温めて盛り付けるだけで食事提供ができる。献立もクックパック専任の管理栄養士が作成しているので不要だ。
 
「クックパック」を採用した理由を聞くと、鎌田さんはまず、味を評価した。「全体的においしい。常食のサンプルをもらい院内の職員に配ったところ、皆おいしいと話した」。
 
また、「ミキサー食の『天ぷらそば』は言われなくても、それと分かる味でおいしかった。ミキサー食は手作りをすると手間がかかる。形がないので味の想像がつきにくいと思うが、クオリティが高く、食べる方もそれが何か分かり、良い商品だと思った」と絶賛した。さらに「営業担当の朱膳寺さんの丁寧な対応も決め手だった。訪問後、気遣いのメールをくれて、それが営業トークと分かっていても嬉しかった。」と話した。
 
近藤病院では、3月中旬に「クックパック」を導入し朝・昼・夕の各25食を湯煎で提供開始した。最初は流れを理解している方がほとんどいないため少し混乱したという。しかし、そこでも朱膳寺さんの対応が光った。「平日・休日問わず、病院に来ていただきお手伝いしてもらった。勤務シフトと作業工程表も作成いただき、どのように人員体制を組み、作業すればよいか助言をしてくれた」。
 
その後、湯煎による食事提供が徐々に落ち着き、7月には業務効率を高めるため、再加熱調理機リヒートクッカーを導入した。リヒートクッカーは、翌日の朝食を前日にセットすれば、翌朝まで保冷し、朝食時間に合わせて自動再加熱するAIHO 社製の厨房機器である。早出して調理する必要がなく、作業負担を軽減しながら安全で温かい食事を出来立てのおいしさで提供できる。

リヒートクッカー

リヒートクッカー

「時短になることが想像できても、リヒートクッカーをどう上手に使いこなすかが課題だった。厨房には無限に保存できる冷蔵庫なんてない。保存スペースは限られている。そのような中、朱膳寺さんは現場に何度も来て、当院のやり方で、そこにある器具を使って、限られた人数と時間でどうすれば効率よく食事提供ができるか、親切に教えてくれた」。
 
近藤病院では、リヒートクッカーにより出勤時間を1時間遅らせることに成功した。食材をただ納入するだけで良い食事が提供できるわけではない。導入時のフォローは食事サービスの質を大いに左右する。鎌田さんは、給食の受託実績が豊富な同社の、細やかで確かなアフターフォローを高く評価している。
 
〈一番は安全性、作業の平準化も〉
管理栄養士の安藤葉子さんにも話を聞いた。クックパックにして良かった点を尋ねると、「一番は安全性。調理員がいなくても安全が確保される点だ。調理は本来、加熱してから加工するが、それだと加熱後に人の手が触れるのでどうしても二次汚染につながる。一方、クックパックだと加熱前にその工程が終わっているので、人の手が一切触れず衛生的である」とメリットを語った。
 
また、「一人ひとりの作業量が均一化できた点も大きい。人が少ない時間帯は作業を少なめに、人が多い時間帯は作業を多めにして仕事が分散できる」と作業効率の高さを強調した。調理員の小林惠介さんも「作業がとても簡単で楽になった」と話した。
 
〈病院経営に貢献する〉
最後に、鎌田さんは「食材コストはもちろん、調理師の負担も軽減できて、相当、病院経営に貢献してもらっている。以前の提供方法だと、調理師は朝5時30分に出社していたが、今は1時間遅い。募集をかけると、この1時間が違う。働き方改革で朝早い調理は大変なので、その面でも助かっている」と経営に及ぼす効果を語った。
 
朱膳寺慶史さんは「クックパックのメインコンセプトは、経営者の方にはコスト面、厨房現場では簡便性、食事利用者には安全・安心でおいしいこと。三者三様の良さがある。クックパックを介して、少しでも多くの方に喜んでもらえたら嬉しい」と語り、更なる導入拡大に意欲を示した。