配食サービスの市場規模は矢野経済調べで2009年度から2014年度の6年間で1.8倍強拡大しており、今後の高齢者世帯数の増加や、医療・介護の在宅化等の流れを受けて、栄養管理面を訴求した配食サービス事業の更なる普及が見込まれている。

そのような中、日清医療食品(株)は2012年から「食宅便」を開始し、豊富なバリエーションで売上げを年々拡大している。新商品動向と生活習慣病やフレイル(虚弱)など社会課題への対応について、食宅便事業推進部部長の中野茂季氏と主任・管理栄養士の矢口孝枝氏に話を聞いた。
中野部長、矢口主任

中野部長、矢口主任

 
食宅便は、日清医療食品(株)が手がける食事を冷凍で宅配するサービス。食べたい時に電子レンジで温めて簡単に作ることができて便利でありながら、おいしさにこだわり栄養バランスに配慮した体に嬉しいメニューを多数取り揃えている。「塩分ケアコース」や「カロリーケアコース」、「たんぱくケアコース」など特定の栄養摂取量を調整したシリーズも人気だ。2020年新たに立ち上げた「やわらかい食事コース」と「まんぷく亭」とはどのような食事なのか。
 
矢口氏は「『やわらかい食事コース』は、通常の食事を食べることが困難な方に向けたかたさを調整したお弁当。高齢社会のため、もっと食べ物をやわらかくして欲しいというお問い合わせをいただいたことから開発した」と説明する。2020年3月に発売後、好評で「種類を増やしてほしい」という要望が多く、セット数も3種類に増やした。
 
商品を定期的にお届けする「らくらく定期便」の希望者も順調に増えており、求められている食事であると確かな手応えを感じているそうだ。
 
商品特徴を尋ねると、中野氏はこだわりを3点挙げた。1つ目は、見た目が普通の食事のままであること。「見た目が通常食と一緒。これが大事だ。周りの方が普通のメニューを食べていたとしても疎外感なく、食事を楽しむことができる」。2つ目は、歯ぐきでつぶせる硬さ。「やわらかい食材を選び、長い時間ボイルをするなど調理を工夫することで、極力小さく刻むことをしていない。簡単にスプーンや箸でつぶす、切るができる」。3つ目は、弁当タイプであること。「介護食品にはおかず商品が多いが、弁当タイプは少なく重宝されている」。
 
家庭で食事をやわらかく加工するのは手間がかかり注意も必要だ。調理する手間を省けて、必要な栄養素をしっかり摂ることができる「やわらかい食事コース」は今後も引き合いが高そうだ。
 
一方、「まんぷく亭」はガッツリお腹いっぱい食べたい時におすすめの食事セット。カレー、ナポリタン、焼肉など人気メニューが目白押しで自宅に居ながら外食気分が味わえる。例えば麻婆豆腐丼は花椒(ホアジャオ)を利かせており、ナポリタンは喫茶店のように味がしっかりついている。
 

「まんぷく亭」麻婆豆腐丼

「食宅便 まんぷく亭」麻婆豆腐丼

 
矢口氏は「もっとボリューム感のある食事が食べたいというお客様のニーズにお応えした。当初は、都度買いを想定していたが、『らくらく定期便』として定期的に購入される方が想定していた以上に多い。味も、ボリュームも満足しているというお声をいただきこのような商品の需要が高いことを実感する」と反響の高さを語る。
 
コロナ禍により自宅で食事をされる方が増えたことも相まって販売は好調だ。食事のコントロールは継続が大事だが、食事のコントロールをしていると、たまにガッツリした食事をとりたくなる。そんな時に食べていただき、また、食事のコントロールをした日常に戻ってもらうことも想定しているという。
 
中野氏は「当社の商品はヘルシー志向のものが多いため、食事制限を続けるとストレスがたまると思う。そのような方のちょっとした一休みに食べてもらいたい」としている。
 
〈食宅便のこだわり〉
年々拡大する配食サービス事業だが課題も多い。新規参入企業との競争の激化や潜在顧客へ向けたPRの強化もある。その中でなぜ食宅便が選ばれているのか。食宅便のこだわりを尋ねると、矢口氏は「第一に、医療・介護福祉施設に特化した給食で培ってきたノウハウがある。1つのお弁当で15種類を目安に食材を使用しており、メニュー数は430種類以上と業界トップクラス。(一部離島を除くが)全国展開も喜ばれている」と語り、中野氏は「食事はまずは見た目が大事。食べたい!と思われなくては意味がない。『食事は脳で食べる』という言葉があるように、当社ではおいしさだけでなく、彩りにも配慮している」と述べ、メニューの彩りだけでなく、容器の柄にもこだわり、見た目を大事にして食べる楽しみを創出していることを強調した。
 
〈生活習慣病の予防やフレイル対策への思い〉
日本人は健康寿命と平均寿命の乖離が大きく、働き世代の生活習慣病予防・健康づくりの取り組みや高齢者のフレイル(虚弱)対策が必ずしも十分とは言えない。そのような課題解消に向けて、国は適切な栄養管理を行った健康な食事をしっかりとれる配食サービスの普及に努めている。
 
矢口氏は「現代社会はニーズが多様化している他、エビデンスの変化もある。情報をしっかりキャッチして的確に対応していくことで健康寿命の延伸や医療費の削減のお手伝いをしたい」と意気込む。例えば、老齢者のフレイルの問題がささやかれたのもここ10年の間であり、それ以来、たんぱく質の摂取量の基準が高めに改定された。「そういう変化を的確にキャッチして、商品化につなげられるようなスピード感も大事にしたい」と思いを語った。
 
中野氏は「日清医療食品が食宅便を開始して9年が経つ」ことが「まさに国民の疾病予防をお手伝いしたい気持ちの表れである」と語り、利用者からの意見をいくつか紹介した。例えば、「心臓のバイパス手術後、食宅便を5年続けている。とても丈夫になった」、「血糖値が下がり担当医からほめられた」、「塩分と低糖質の定期利用でコレステロールがずいぶん下がった。味も良い。気に入っている」など喜びの声が多数寄せられている。
 
また、食宅便をとることで「この量が適正な量であることを知る人が本当に多い」と話し、「適量を知ることで、食べ方の自己研鑽や教育につながる。食宅便を通じて、生活習慣病の予防の手助けやフレイルの対策につながれば嬉しい」と健康支援への思いを語った。